秋祭り 鎮守の神様 其の七
「……じゃ、俺も何か?」
松田がソワソワと死神様に聞いた。
「君は大丈夫。何せ小神様が側においでだからね。何かあったら此処に連れて来て下さる……。君も家護りと金神様のお力でご招待頂けた」
「……じゃ、金神様だな」
「ふふ……君はかなり家護りを下に見ている様だが、あれらは〝かなりのもの達〟だよ」
「知ってます。自分が干からびても主人を護ってくれる」
「なんだ?知ってるならいいけど……」
なんだか親しくなった感が否めない二人……否一人と一神……一柱……に、神様ラブの松田が羨ましげに見つめる。
「君の時には、私自身が招待するよ……君の大事な人は絶対助かる」
本当は物凄く優しい死神様は、ちょっと淋しげな松田に言ったので、松田は大喜びだ。
「そろそろ神輿が担ぎ出される」
死神様の言葉に松田が反応する。
「鎮守の神様っすか?」
「君達の中の神の形は、信仰から生じた物となってるだろう?だが真の神とはそれとは別物だ。太古の昔から存在する日本の神々は、八百万と存在するからね……」
「?????」
「ちょっと違うって事。原来神は人間だけ優しくしないからね……当然試練なんて物も与えない……それを勘違いして信仰する場合がある。要は人間にとっての〝神〟であれば、それは〝神〟になるんだろ?人間にとって〝神〟でなければ、天が定めた〝神〟であっても物の怪って事かな……」
「かなり奥深いっすね」
松田が神妙な顔を作る。
「今や天、自然の法則と人間の法則は一致しない場合がある……つまり我々原来の〝神〟では無いが、君達が望む〝神〟ではある。その〝神〟を手助けしているのが、原来……私が云う処の〝神〟だったりするんだよ」
「旧神様が新神様を補佐っすか?」
「ちょっと違うが……そんな感じかな?」
「あー?俺達が想像する、ドクロ的死神様も存在すれば、天が決めて存在する……死神様も存在するって事っすか?」
松田は死神様を指して言った。
「まぁ……」
ちょっとズレている様だが、人間に理解させるのは此処までが妥当と思った様だ。
蒼光しながら少し苦笑している様な……?
「つまり鎮守の神様もそんな感じで?」
「君達が想像するものとは、異なる神は存在するな……」
松田はいろいろと思考を巡らせて、想像する神を思い浮かべている様だが、死神様を見て考えるのをやめてしまった。
ドクロに黒いカマを持った黒服の死神様。
いろいろと有名な神様であるけれど、人間の忌み嫌う〝死〟をもたらす神として、残酷だったりグロかったり残忍だったりのイメージが強い。
だけど目の前の死神様は、意外と優しいし超イケメンで爽やかで……。
そんなだから天が定めた神様の姿って、漫画やアニメで描いてしまっている昨今の若者に、想像できるわけがない。
第一今の我々のイメージ自体が、日本古来のものではなくて、外国から入って来ているイメージだ。
考えたところで解るわけがない。
松田も圭吾同様で、余り無駄な事はしたがらないタイプだから、その点はさっさとやめてしまう。
神輿が大勢の男達によって担ぎ出された。
死神様は面前を仰々しく通り過ぎる神輿に視線を向けて、静かに頭を垂れて何かを唱えた。




