秋祭り 鎮守の神様 其の六
「田川さん、よく目玉掬いましたよね……ゲロゲロだったのに……」
「はっ?ゲロってないだろ?嗚咽だ嗚咽……。目玉はかなりグロいが、俺たちには目玉○父という、それはちゃめ系なおトーさんが存在する。おい!キタ○ー!」
余りにも衝撃が強すぎるのか、かなり壊れ気味の圭吾がやけにハイな感じで、金魚が泳いでいるのじゃ無いかと、見間違えてしまいそうなビニール袋に目玉を泳がせて言っている。
「田川さんって、俺同様に視力いいすよね?」
「ああ、自慢じゃないが余り勉強しなかったからな、お陰で視力は2、0以上はある」
「あれって勉強っすかね?」
「病気、遺伝的なものがなきゃな……」
「まぁ……確かに俺も勉強はしなかったすが……」
「おかんが最近、白内障だとか乱視だとか老眼だとか、まぁ煩い煩い……土産に……」
「なるほど……じゃ、彼女さんの声もどうにかなんナイすか?」
「はっ?」
圭吾はハタと立ち止まって松田を見つめる。
「めちゃ可愛い……」
「お前なぁ……」
「隠さずとも、お友達の話しとか聞いてれば解りますって……」
圭吾は真顔を作って松田を見つめる。
兄の影響で合コン大好きとなった、大学でいつも連んでいる工藤が、高校の同級生で男バス女子バスという関係上、ちょっと知り合いだった相沢杏子とお付き合いして、それ又連んでいる彼女持ちの大石を巻き込んで、実はいえもりさまが福の神様が護っている三上真鈴という、一つ年下の女子大生と圭吾をくっ付け様と画策した事があり、その所為では決して無いと圭吾は信じているが、つまりその彼女……三上真鈴と圭吾はお互いいい関係を作りつつあって、工藤・相沢カップルと大石・羽柴カップルとグループ交際をしているのだ。最近はちょっと、その域を超えつつある……。
それを最近仲がいいから、松田は工藤達から情報を仕入れているのだろう。
まっ、とにかく人付き合いのいい奴らだから、松田も勝手に仲間内となっている様な気もしたいでもない。
そんな事を理解できない、圭吾ではさすがに無い。よかった。
「彼女は福の神様がついているからね……」
「えっ?其処にも神様すか?」
「そう……だから俺がどうこうする事じゃない。それに俺は彼女が喋れなくても不便じゃねぇし」
「えっ?だって……」
「病気だったり、生きて行くのに支障があるものなら別だけどさ、そうじゃなきゃ頂いて行く訳にはいかない。目は……」
圭吾は普段に無く、真顔で死神様に向けて言った。
「おかんに頂いて行った方が、いいんですよね?」
すると蒼光の死神様は、一層と神々しく輝いた。
「さすが、金神様が目にお掛けの人間だ。その目で20年は元気に過ごせますよ」
「20年か……人生80年には足りないか……」
「……寿命は充分有りますからご安心なさい」
「……ありがとう。初めてあんたを怖いと思わずに喋れた」
「……そう言ってもらえると嬉しいですね」
今回も死神様は圭吾のイメージとは大違いに、優しくて温かなイメージを与える。
イケメンなのかは解らないが……。