秋祭り 鎮守の神様 其の四
「……そういやぁ、この辺ってかなり田舎って感じっすよね?」
「俺らどうやって此処に来たんだ?」
「どう……って、田川さんと落ち合いやすい場所を決めて、そこで合流して……それから……」
「それから?」
「田川さんが、樹海では輝いて見えた小神様が最近は見えない、とかいう話しをしながら歩いてたら……此処に着いてました」
「……俺だけじゃなくてマジ良かった」
珍しく圭吾が胸を押さえて言った。
「……〝俺だけ〟的な事あるかんな……マジビビる……」
「……まっ、鎮守の神様のご招待っすからね、ちょっと不思議でもおかしくないっす」
松田は意に返さぬ様子で言った。
「……マジか?マジでそれで済まされんの?松田……お前スゴ過ぎ……」
もはや松田は見慣れて来ているが、圭吾の挙動がおかしくなっている。
すると案の定というか、〝やっぱ?〟みたいに
「ぎゃ!」
と大男の圭吾が、似つかわしくない悲鳴を上げた。
「全く田川さんは……」
呆れ顔の松田が、圭吾が固まる視線の先を見つめて、それは嬉しそうな笑顔を向けた
「えっ?えええ?マジっすか?」
蒼く神々しく輝く姿を見つめて、見惚れる様な表情を作って言った。
「死神様じゃないっすか?」
「あれ君達?」
蒼光のお姿を惜しげも無くお見せして……。
何故だか圭吾にもその蒼光が見えるのだ……その蒼光が微かに揺れて、笑っているのが解るような?
「死神様も鎮守の神様にご招待っすか?」
「ああ、祭りは意外と、生と死が関わっている事があるからね。夏祭りの方が盂蘭盆会とかあるから思われがちだけど……まっ、生と死は裏表……生あってこその死、死あってこその生……」
「……なるほど……」
大きく頷いたのは松田のみ。圭吾に解るはずもない。
それを理解してか否か、死神様は一瞬圭吾に顔を向けて……だと思う……直ぐに松田に向け直して言った。
「……つまり祭りにはお呼びがかかる……普段は下っ端の役なんだが、此処の神様はかなり大物だからね、当然私が来ない訳には行かなくてさ……祭りを堪能する訳だが、結局チラハラと彷徨う魂を、冥府に送る事になるんだ」
「マジっすか?お役目ご苦労様っす」
この間の出会いから、すっかり崇高してしまった死神様に、深々と頭を下げて言う。
松田の神様ラブは理解しているが、といったっていくらイケメンとはいえど、死神様を崇拝するって……圭吾には理解できないのは、単に圭吾がチキンで無知だからだろうか?
とにかく圭吾の観念では、死神様は人間を殺す訳で……それが寿命とか天寿とか言われても、無知な圭吾には理解ができない。
死神様はダークなイメージだから、自他共に認めるチキンの圭吾には恐怖の対象だ。
ダークなイメージといえば、死神様と甲乙付けがたいのが金神様らしいのだが、その金神様に可愛がられている……これは賀茂とか鈴木が言う事なのだが……圭吾は、かなりの最強神に護られている立場らしいが、それすらも理解できない、はっきり言っておバカさんだ。