秋祭り 鎮守の神様 其の三
「えー?田川さん勿体ないっすよ」
松田は呆れる様に言う。
「はあ?何で?」
「だって秋祭りっすよ……鎮守の神様のご招待っすよ。そんな事あり得ない事っすよ……」
「まあ……鎮守の神様にご招待は、普通されんわな……」
「されませんよ。あり得ないっすから……」
「……なるほど……」
圭吾は遠い目をする。
そして徐ろに
「村の鎮守の神様ってさぁ……なんか違うの?」
何時もの事だが、驚く程に無知な事を恥じらいもなく、あっさりと聞いてくる。
「田川さん……それはマジでヤバイっすよ。その地域に住む人々をお護り下さるのが、鎮守の神様っす」
「その地域の?それはいえもりさまに聞いたんだけどね」
「じゃ……分かるっしょ?昔で言う所の集落とか、村とか……部落だったり……。うーん、俺的には神様が御座す所に集まった人達……的な……だから、たぶん田川さんが想像している〝神様〟とは違うっす」
「うーん……」
「どうせ田川さんの言うところの〝神様〟は、有名な神社の〝神様〟っすよね?それとは違って、身近な存在つーか、地元に根づいた的な?」
「うーん……いえもりさまが言うには、地主神様と鎮守の神様とがだなぁ……」
「ええ?田川さん!普段に無くよく知ってますね?」
「いえもりさまがだな、それは偉そうに教えてくれた」
「じゃ……行きましょうよ」
「………………」
「村の鎮守の神様の秋祭り……」
松田はそれは嬉しそうに笑って言った。
「いやぁ……いえもりさまにもろくな目に遭わされんが、このまえ松田と樹海に行った時も……あんまりいい事は無かった」
「は、はぁ?田川さん。凄え凄え〝いい事〟あったじゃないっすか?死・神・様にお会いしたじゃないっすか?凄え……凄え事すよ」
「はぁ……俺は恐怖はあったが、喜びは無かった……」
「田川さん……マジで田川さんは勿体ないっす……」
松田は呆れる様にため息交じりで言った。
さて、何だかんだと言っていた癖に、結局圭吾は村の鎮守の神様の、今日は楽しいお祭り日……に、いえもりさまのお伴という触れ込みで、招待されている自分って何だ???
小神様のお伴の松田と、連れ立って歩く自分に自問する。
鎮守の神様のお祭りは、森林が大きく広がりその先が山へと続く神社に、広範囲に渡って縁日が開かれている。
縁日お祭り大好き人間の圭吾ですら、初めて見る程の盛大さで、神社の前では五穀豊穣の踊りが村人達によって踊られ、大人子供の神輿が担がれるらしい。
……らしい?これから担がれるのか?
圭吾は左右の縁日の屋台に釘付けの、松田を見て考える。
「これから担がれんの?」
「えっ?」
松田が不意に言った圭吾に視線を向けた。
「神輿……って、此処は何処だ?」
「鎮守の神様のお祭りっす……」
「何処の?」
「鎮守の神様の……」
「だから、何処の鎮守の神様のお祭りなんだ?」
「えっ?」
松田は圭吾を直視して首を傾げた。