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秋祭り 鎮守の神様 其の二

まっ、最近のいえもりさまの態度ときたら、殆どこんな感じではあるが……いや待てよ。出会った時からこうかもしれない説ありか?


「若主人様……再三申し上げておりますが、日本には八百万の神様が座すのでございます。八百万の神様はこの日本のありとあらゆる所・物に座されるのでございます……つまりは、ありとあらゆる村や町や建物に座すのでございます……」


いえもりさまが立ち上がったまま、ど偉そうに両手を後ろに組んで力説し始めた。


「……かつて、その土地に住むとされておいでの地主神様を、人間が人工物を造営した折にその土地に宿る神霊が、害を及ぼすやもしれぬと祟りを恐れ、地主神様より神力の強い神様を勧請して祀ったのでございます」


「はあ?それって酷くね?」


「酷い事にございます。ゆえに地主神は祟りを起こす事もあるのです」


「まっ、当然といやぁ当然だわ……」


「しかしながら、原来八百万の神様方はそれは穏やかなご性分でございますれば、余程人間が理不尽をしない限り祟りなど致されません。神力のお強い鎮守の神様とも上手く()()をお護りでございます。第一人間の様に神々様方は、拘りはお有りに成られませんゆえ、誰が何処をどの様にお護りしても、誰と誰がお護りしても構わないのでございます。ただ()()が守られればよいのであって、それは〝人間の為〟の護りではございません。只々〝地球〟にとっての護りでございます」


物凄〜くドヤ顔を作って圭吾を直視する。

小さくてふにょふょにょ感が、堪らなくきも可愛い。


「なるほど、地主神様と鎮守の神様が、お護り下さってくれている訳ね?この辺の土地も……?」


「左様にございます」


いえもりさまは、それは嬉しそうに言った。


「……で?なんで今頃祭りな訳?大体祭りは夏だろう?」


「若何を申されます……お祭りは秋にございましょう」


いえもりさまは、吃驚仰天の様子で言った。


「え?祭りってやっぱ夏っしょ?」


「それは……夏祭りは盂蘭盆会、虫送り、疫病、台風除け祈願……秋祭りは収穫感謝、祈願……といった意味合いがござりまする。秋祭りもいっぱいいっぱいござりまする」


「へえ……」


「秋祭りは頃合いも良く、実り豊かな頃にござりますれば、それは楽しみにござりまする」


いえもりさまは、目をきらきらさせて言った。



翌日〝村の鎮守の神様の秋祭り〟に招待を受けた、神系(自称)の松田幸甫に大学で呼び止められた。

松田とはついこの間、いえもりさまと小神様をお迎えに、かのかの有名な樹海に行って、死神様と遭遇したばかりだ。


「松田も秋祭り行くんだ?」


大学の食堂で自販機の飲料水を買って、テーブルの椅子に座りながら圭吾は聞いた。

あれから……樹海を出てから、ちょっと神々しく輝いて見えていた小神様は、その輝きが見えなくなってしまった。

超常現象的なものを好む松田はそれは哀れんでくれたが、圭吾はああキラキラというか神々しく輝いていられては、目も痛いし落ち着かないから、見えなくなって良かったと思っている。


「ああ……小神様がご招待されたので、そのお伴で……。田川さんも行けばいいのに……」


「はあ?どうせ人間じゃない、不思議な感じもんばかり来るんだろ?」


圭吾は紅茶の飲料水を口に含んで


「俺はいいや……」


と言った。

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