秋祭り 鎮守の神様 其の一
むーらの鎮守の神様のぉ
今日はめでたいお祭日ぃ
どんどんヒャララ どんヒャララ
どんどんヒャララ どんヒャララ
あーさから聞こえる笛太鼓ぉ
いえもりさまは、圭吾が帰宅した時には、絶好調で圭吾の部屋のベッドの上で、踊りも交えて歌っている。
「なんだ?その歌?」
五月蝿いけれど、面白いからやらせていたら、ひたすら踊って歌っているから、流石に飽きて声をかける。
「ご存知ないのでござりまするか?村祭りでごさりまするよ!村祭り……」
「それは聞いていて解るんだが……。なんかずっと歌ってねぇ?」
「はい。ずっとずっと歌っておりましてござります」
「えっ?ちょっと待って……ずっと歌っておりました……おりました……???」
圭吾は一瞬言葉を切って考える素振りをみせた。
日本語が余り得意としない圭吾には、〝すぐ〟に引っかかっている〝理由〟が解らない。
「はい……一日中歌っておりました」
「おっ!そういう事ね……」
単細胞の圭吾が納得した。
日本語……というよりも、日本特有というべき〝言葉の綾〟の理解力が日本で生まれ育ち、日本語に親しんでいる日本人にしては、かなり劣っている……と母親がいうのだ。
まあ……若い者達の中には、圭吾のように表現力に乏しい者も、多少なりと存在すると思う。
海外で暮らす者が増えているし、其れこそ日本語よりも外国語を得意とする者も増えているし、ちょっと昔の人のように、言葉の綾を使って美しい言葉を楽しむ者も減っている。
だから、長きに渡って受け継がれた〝日本語〟(母親が言うところの)が苦手な若者が増えているかもしれないが、反面〝若者言葉〟として、言葉好きな日本人らしい、新しい言葉が生まれている。
その言葉を大人達は変な日本語と言うが、これもやっぱり新しい〝言葉の綾〟といえないだろうか?
兎も角もそんな事はさて置き、圭吾が引っかかった
「ずっと歌ってお・り・ま・し・た……」は、過去形+何か……とまでは、圭吾は感じたのだが、その何かが理解できなかったのだが、その何かが長時間に及ぶ継続であった事で、圭吾の引っ掛かりが解決した事になった。
とても面倒くさい話になったが、簡単にいえば圭吾は
「ずっとずっと歌っておりました」
と言ういえもりさまの言葉に
「えっ?ずっと?まさか朝からじゃないよな?」
と頭ではなくて、鋭くなった勘が思った事で、案の定いえもりさまは、朝からずっとずっと歌っていた……という結論になったのでした。ジャンジャン。
「……って、なんで今頃村祭り?」
「はい、私め。とてもとても嬉しい事に、鎮守の神様から村祭りに、ご招待いただいたのでござりまする」
「ち、鎮守の神様?」
「さようにござりまする。その土地をお護りくださる、鎮守の神様にございます」
「へっ?神様って全〜部まとめて、守ってくれるんじゃねぇの?」
「な、何を申されます?全〜部まとめて……?意味が分かりませぬ」
いえもりさまは立ち上がって、無い肩をすぼめて分からんチンポーズを、小生意気にして見せる。
「や、だから……神様はこう全体的にだなぁ……人間をだなぁ……」
いえもりさまはチッチッチと、吸盤の指?を振った。
「若さま、それはもしかしてお一人の神様が、全ての人間をお護りくださると?そうお思いでございますか?」
「そ、そうそう……」
「何を仰っておいでにございます?」
「日本には八百万の神様が座しますのに……」
「へっ?」
物凄〜く冷たい視線を、いえもりさまは圭吾に浴びせて言った。