死神様 樹海へようこそ 其の五
「……で、君は……」
死神様が圭吾を見ているようだ、とにかく顔が蒼光して判然と解らないから、想像するしかないのだが、何か見られていると思うと、根っからのビビリは身を縮める。
「へぇ〜君……凄いねぇ?あの金神の……へぇ〜」
何となく……何とな〜くだが感心して頂いている様に思えるのだが、凄〜く喜べないのは何故だろう?
「へぇ……」
死神様は感心したりで圭吾に釘付けらしいが、圭吾としてみたら早く他所に興味を持って行って頂きたい。
「金神ってさー凄く面倒くさい神じゃん?」
「えっ?そうなんすか?」
自称〝神系〟と公言して憚らない松田が、〝神〟の言葉に食らいつく。
「気に入らなかったら七殺しちゃうし、祟り神だし……まっ、私同様恐神的な?……つまり、そんな大物がバックに在るってゆーのに、そのビビリ方はなんだかなぁ……」
「あー。田川さん的には、あんまり持っていないとゆーか……」
「えっ?持ってないの?金神の……なのに?」
死神様は、たぶん呆れた様に言っている。
「じゃ、君は?」
有り難い事に、視線が松田に移った様だ。
「一応〝神系〟には持ってます。……よくお呼び頂くんで……」
「あーなるほど?確かにそんな体質っぽい……」
気さくなのか軽いのか、とても死神様とは見えない対応だ。
「……っで?なんだったっけ?場違いな君達が此処にいる理由?」
「あ?はい……自分の小神様と、田川さんの家守りを探してまして……」
「えっ?小神様と家守り?またまた、どうして此処に?」
当然の事ながら、質問がくるのは納得だ。
だって、圭吾自身が質問したいくらいだ。
「はあ……。此処でまったり過ごしておられる、猫にゃん様と犬わん様に誘われた金神様を探しに、うちの小神様と田川さんの所の家守りが来ている筈なんす……その二人?を探しに……」
「あー!あの不明な理由で名を変えた……ああ、あの……って、あれらとも知り合い?凄いね君達……」
「……っーても、こちらの田川さんっすが……」
圭吾の気持ちなど、とんとお構い無しの松田が、圭吾を指して言う。
「へぇ?金神にあの神々かぁ?……君凄いね」
再び視線を送られた様で、圭吾は身を竦めて死神様を直視できない。
「あー、いえもりさまが知り合いでして……」
……あれ?そうだったかな?どうだったろうか?
何せ〝小さきもの〟のいえもりさまは、余り役に立った記憶はないのだが、いろいろと首を突っ込むタイプ?いや違うか……はて?なんの因果でいろいろ関わる羽目に陥るのか?
第一は、無自覚なのにちょっと〝持ってる〟母親が、無意識に面倒な事に関わるからで……?
いやいや、バイト仲間の古関とか、見習い霊能者の鈴木に、魔物の実篤様……ハッ!月兎輝夜を恋人に持つ奴も知り合いになったばかりだ。……ゲゲ!幼馴染は桜の精とラブラブで……隣にいるコイツは神と親しい?
元を正せば無自覚な母親が、金神様に授けて頂いた子供で……。
いや、待て待て。ちょっと考えただけでも、何かいえもりさまだけの事じゃない様な気がする……気がするが、これ以上は考えたくないような……。
いろいろ巡らせている内に、少しパニック気味の圭吾の様子を他所に
「あの小馬鹿にした様な容姿と名を持つ神だが、かなりの力を持った神だし、高々の人間が目通りできるもんでもないんだぞ」
「……そうなんスカ?田川さん聞きましたか?」
「うっ……松田、何故俺に振る?……っーか、お前さぁ……死神様の顔って拝めんの?」
萎縮したりの圭吾に、松田は唖然とした表情を向ける。
「何言ってんすか?」
「あーつまりだなぁ……死神様の顔が解るか?って聞いてんの」
「はぁ?いつもいつも意味不な田川さんすけど、今日の田川さんは意味不を通り越して、ちょっとヤバいすよ」
松田の呆れ果てた視線が痛い、痛いがそれ以上に死神様の視線が怖い。