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月魄 月兎輝夜 其の終

「永遠の縁でちょと思い出したんだけど」


 圭吾は木霊が観音様の元に赴くのを見送って言った。


「木霊は桜の精霊でしょ?じゃ、魔物になった〝者〟は?」


「えっ?圭ちゃん魔物になった者とも知り合いなの?」


 友ちゃんは唖然としたように身を乗り出した。


「知り合い……っていうか、大学の学生……」


「魔物が学生なのか?」


「話せば長いが、実篤様っていってなんか、其方方面では有名な人だから、後で木霊に聞いて。……で、その実篤様……今賀茂っていうんだが、魔物になった原因が、好きだった薫子様っていう姫君なんだが、その薫子様が死ぬ時に実篤様との縁を望んで昇天したらしく、薫子様が生まれ変わったら賀茂と恋愛関係になるらしく……」


「輪廻ってやつか……」


「それを友ちゃんも望んでいるわけだろ?」


「ああ……」


「だけど、魔物の加茂は薫子様との輪廻に飽き飽きしたらしく、二人現世で出逢っても知らぬまま過ごそうと言ったらしい」


「薫子様は同意されたのか?」


「たぶん……だけど、ご縁の神様に縁を結んで頂いているから、また縁は結び合うだろうって……」


「そうなるだろうなぁ……」

 

「しかしだ。賀茂の言い分も解らんでもない。薫子様は生まれ変わるが、賀茂はずっと薫子様が生まれ変わって来るのを待つのみだ。その間はひとりだし、縁が結ばれていれば、他の縁とは結べないんだろ?薫子様は一世づつ忘れるが、賀茂はずっと覚え続けてる。俺だったらとっくにヒートアップだ……」


「圭ちゃん、実篤様は魔物になる程に何かに憤りを抱き、そして魔物と化して現世を渡り歩いてる。それは魔物と化した実篤様の業だ。縁同様その業も続く……」


「だろうが、俺は友だからちょと同情もする……」


「解る気もするが……」


「友ちゃんも永遠の縁を結んだとして、木霊は賀茂のようにならないだろうか?』


「はあ?」


「だから、木霊が賀茂みたいな事を、ずっとずっと未来の友ちゃんに言ったら……」


「木霊は言わない。僕が一世を終えて眠りに就いたら、木霊も彼方に行って暫し休む為に眠りに就く。それに僕の記憶は消える事は有っても、何処かに遺して下さるから、木霊と同じ重みを背負って行く。それは観音様と縁の神様にお誓いしている。この縁は木霊が生を終えるまで続き、その後ふたりで天に行く。その為には、僕も木霊も人一倍の善行を行う」


 何とも壮大な〝愛〟の形だ。


「実篤様は魔物と化されたが、元は人間だ。人間には裏切りが存在する。だから、木霊を危惧するより僕は僕が怖い。圭ちゃんが心配する言葉を僕自身が言わないか、それが怖いし許せない。もしもそうなった時には、僕は木霊の桜の下で全ての命を観音様にお返しする。その事すら忘れて生き永らえたら、その時は僕も実篤様同様の末路を辿る」


 友ちゃんは頑なだ。小さい時から、子供にしてはその片鱗が見え隠れしていた。

 それが魅力でもあり、欠点でもあった。


「うちのいえもりさまが、何故かご縁の神様と親しいのは知ってるだろ?」


「ああ……」


「……で、何だったか忘れたがお願い事のついでに、賀茂の話しをご縁の神様にしたら……」


「縁を断ちたいと思ってる事をお伝えしたのか?」


「らしい。そしたら縁を断って下さったらしい」


「薫子様の承諾なしにか?」


「いや、加茂は薫子様とは知らないようにしようと言った訳だし、薫子様も何も言わなかったらしいから、いいんじゃねーの」


「いや、それはヤバいだろ?」


「へっ?」


「分かんないけど、そう簡単そうじゃないような気がする……」


「マジで?」


「マジで……」


 友ちゃんの〝それ〟は圭吾と違い持っている。

 それに今や永遠に誓いあった相手が木霊だ。〝それ〟はそれは確かなものになっているような気がする。



 さて、月兎の輝夜だが。

 友ちゃんの愛しい愛しい木霊のお陰で彼方で養生して、元気を回復して一旦月に戻って、それはそれは元気になって帰って来たらしい。

 ご縁の神様に見て頂いて、なんと大野木とふたりも縁を結ぶ事ができた。


 よくよく考えてみると、又々圭吾は不思議なもの達とお知り合いになってしまったのやも……。

 本当にこんな風に違う種族、種属……?との恋愛って有っていいものだろうか?

 残念だか圭吾の頭では理解でない。

お読み頂きありがとうございました。

お読み頂けるだけで本当に、倖せです。

〝不思議噺〟として書いていたお話が、私にしては長くなってしまったので、別のお話として投稿したいと思っております。

宜しかったら、それもお読み頂けたらと思います。

ありがとうございました。

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