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迷い込む 彼方と此方の境目 其の二

「しかしながら、これからの時期は、彼方と此方の境目が薄くなる時期にござりますれば、彼方に迷い込む者たちもおりましょう」


「彼方と此方?……って、あの世のあちらか?主様達がいるあちらか?」


「もう若!違いまする。両方に続く彼方でござります。その境目に迷い込みますると、力の無い者はなかなか抜け出せず、迷い続けまする」


「迷い続けるって、失踪ってヤツすか」


「いえいえ若……しいて申せば、此方側に姿を置きながら、魂が彼方にある状態にござります」


「はあ?」


「その者によって現れ方は異なりまするが、例えば何時ものように暮らしておりながら、なんとなく景色が違って見えたり……そうそう、霞むというか少しぼやけて見えたり……最初は違和感から目が悪くなったと思いがちでござりまするが、すぐに慣れてしまい気がつきませぬ。力の無い者はおかしいとは思いながらも、どうする術もなく、ただ抜け出せる時迄待たねばなりませぬ」


「えー!そんなのあり?」


「あり……にござりまする。彼方と此方の境目が薄くなっておりますれば、普通に生活して行動しておる内に、境目より戻って参られまする」


「戻って来れなかったら?」


「その時は、口裂け女さまや花子さまとかと頻繁にお会いするのみにござります」


「えー?あいつ等に遭遇するって、そこに迷ってるって事?」


「まあ……大概は……。鈴木さまのような特殊な方以外は……」


「ええ?鈴木って、そこに迷い込んでるって事?教えてやらんと……」


「いえいえ若、鈴木さまは迷い込まれるのではなく、往き来のできるお方でござりまする」


「え?え?」


「鈴木さまは、ご自身の意思で行って帰って来られる稀な人間なのでござりまする」


「…………」


 圭吾には、ちょっと難しくて理解できないと察したのか、いえもりさまは話を続けた。


「人間共がなんとかスポットだのともうしておりまするが、そんなものはござりませぬ。たかが人間ごときに容易く解るようにはなっておりませぬ……が、いとも容易く境目に迷い込めてしまうは、真に愚かな者たちにござります。それをさも、自らの〝力〟で遭遇したかの如くに錯覚するとは、真に真に愚かでござりまする」


 いえもりさまは、そう言いながら大きくため息を吐いた。


「……でも、そんな類のテレビ好きだよな……」


「う……好きくはござりませぬ。哀れだなぁ……と思いつつ、見ている……いえいえ、情報を得ておるのでござりまする……そうそう今生の……余りに世が変わり過ぎまするので、私めも若のお伴を致すために……」


「まあ……そういう事にしといてやるが……。でもなんか、そんな境目に入りたくねぇなぁ……」


「若は大丈夫にござりまする」


「はあ?なんで?」


「気づかずに事を終える事と存じまする」


「はあ?お前また馬鹿にしてるだろ?」


「いえいえ。とても凄いお力にござりまする」


「はあ……馬鹿にしてる……」


「いえいえ。若のお力程凄いものはござりませぬ。ほら、すぐそこに境目がござりまするが、若は入ろうと致されませぬ」


 いえもりさまは、至極真顔を作って指差して言った。


「マジ?マジ?」


 いえもりさまの、指ではないだろうが、指らしきものが指す方を見ながら言った。


「マジにござりまする」


「えー、マジ入り込んだらどうするんだよ?」


「別段!」


「はあ?別段って……口裂け女やトイレの花子さんだぞ?」


「若は大丈夫にござりまする」


「はあ?」


「たぶん……いやいや確かに、解らないまま過ごされまする」


「えー?そんな事言わずに助けてくれよ」


「助けるも何も……お解りにならないのに……」


「ええ?マジでそういうのも()なんすけど……」


「しかしながら、こればかりは若……今までも全然大丈夫でござりましたし……」


「ええ?今までにもあったのか?」


「多少なりと……」


「マジで?そういう時は教えて……いやいや助けてよ、マジで助けろよいえもり!」



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