表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/299

迷い込む 彼方と此方の境目 其の一

 ジメジメとした、梅雨の湿気に嫌気がさし始めた頃、圭吾は久々に母親と夕餉を取っていた。

 父親は相変わらず忙しく、毎日の仕事になんだか最近は、やり甲斐を見つけてしまったようだ。

 余りに欲がなく、まったりとした生活を送っていただけに、母親は有難いと思う反面、身体の心配をしている。

 まあ、我が家の婿(婿養子ではないが)としての勤めを果たさせられているのだから、寿命が縮む事があっても、今すぐどうこうなる事はない……。と思う。


 母親の大好きなテレビ画面には、都市伝説や未確認生命体等の特番が映っている。

 それに箸を動かす手を休めて、食い入るように見入る母親。その奥の部屋には、もはや指定席となっている神棚から、いえもりさまが大きな目をギンギラに輝かせて見入っている。

 地元のマサイ族と異名を取る圭吾だからこそ、神棚にちょこんと座って見ている、小さないえもりさまの表情を見て取れるのだろうが、普通の人間ではいえもりさまがいる事すら解らないだろう。


「こんなの見てると夜眠れなくなんだろ?」


「そうなのよ、トイレ行くの怖いけど……でも、なんか気になるじゃない?」


 母親は、実のところちょっと〝持っている〟

 〝持って〟いるが、自分で気づかない。

 いや、ちょっと持っているから自分で拒否れるのやもしれない。

 ……とにかく、恐怖心の方が先走り拒否っているから、自分が〝持って〟いる事を気づいていないらしい。

 だからホラーものなどは余り見ないのだが、未確認ナンタラや都市伝説的な番組は、興味があるらしい。

 そういえば、死んだばあちゃんは、UFOを信じていたみたいだから、その影響もあるのやもしれない。


「口裂け女とか信じてんの?」


「口裂け女はいないと思うけど、トイレの花子さんはいそうな気がする」


「げっ?マジで?」


「なんかトイレにいると、上から下から手が出てきたり、覗かれてたりしそうじゃない?」


「マジかー」


「えっ?圭ちゃん気しないんだ?」


「しない!」


「凄いきっぱり言い切るんだ……」


 なんだか、それが悪いような気がする程までに感心されてしまった。

 見るといえもりさまも神棚の上から……。


「嘘だろ……」


 呆れたような表情でこちらを見ている。


 ……何だか、最近の奴めは若主人に対する態度が、横柄になっているように感じるのは、自分だけだろうか?……



「いえもりさま……テレビ見ている時、若主人である俺様を馬鹿にしてたろう?」


「わ……若を馬鹿にするなど……()()()()()()


 その()()()()()()は、どう聞いたところで、()鹿()()()()()()と言っている。


 圭吾は自分の部屋でベットに横たわりながら、天井に張り付いているいえもりさまに問い詰めた。


「口裂け女やトイレの花子さんはいるんですか?」


 圭吾がムッとして言った。


「若……あのもの共は、名を変え姿を変えて、永きに渡り人間共と伴におりまする」


「げっ!マジか?」


「マジにござりまする。口裂け女さまもトイレの花子さまも、昔は違う名で呼ばれておられました……はて?なんだったか?余りに呼ばれ方が変わるので、ご当人も覚えておられぬとか……。まあ、名を付けて騒いでおるのは人間共でござりまするゆえ……」


 いえもりさまは、不気味に微笑んで言った。


「あー猫にゃん様的な?」


「さようにござりまする。彼方さま方もめんどくさいので、エリザベスとかマイケルとかにしようかと……」


「げっ!マジで?」


「冗談でござりますますよ、じょうだん……」


 もの凄く腹立たしい感じに、いえもりさまが笑った。

 

「お前マジで俺様を馬鹿にしてるだろう?」


「この私めが若を愚弄するなど、()()()()()()


 ……ゼッテー馬鹿にしてる……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ