表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/299

交霊 新米霊能者 其の終

 駅前の喫茶店のガラス越しから、賑やかな街並みを見つめながら、鈴木雅樹は肘をついて大きくため息を吐いた。


「……まったく面倒ちいたら……」


 行儀が悪いが舌打ちをする。


 仕方のない事だが、いろいろなものが見えるようになった。

 霊や霊とも人とも区別がつかぬもの……。

 人混みを眺めるのも疲れるのに、同じ数の不思議なものまで見れてしまうと、疲れは何倍にも増してしまう。

 雅樹は、物分かりの良い方だ。

 だから、斗司夫さんが言った事は大概理解しているから、見えたとしても驚きもしなかった。

 素直に抵抗もせずに受け入れた、だがこう毎日……というか、当たり前のように頻繁に目に入ってくるなんて…….。

 ……どころか、近寄って来たり、話しかけられたり…….。

 〝面倒〟と言って、舌打ちしたくなるのも致し方ない事だ。


「…………」


 雅樹は硝子の向こうから大きく手を振る、松田を見つけて視線を逸らした。

 神系(松田の言うところ)が見える松田は、霊能者となった雅樹に興味津々だ。

 ことあるごとにラインを送ってきてウザい程だが、何故か憎めない懐っこさがある。

 その松田が持ち前の懐っこさで、魔物と化した実篤様……賀茂に懐いているから、お力をお借りした以降も、有り難い事に実篤様と交流が叶っている。

 そんな松田の後から、なんとも面倒臭げに歩いて来るのが田川だ。

 雅樹から言わせれば、田川程のものを持っている者が、何故に周りのいろいろなものが見えないのか?

 見えているのに気がつかないのか?

 気がつかない〝フリ〟をしているのか?

 急にこんな状況と化した雅樹にとって、田川はちょっと腹立たしい存在だ。

 何故なら、彼はそれら全てを拒絶する事を許されているから…….。

 そんな特権を与えられた不思議な存在…….。


「田川……」


 雅樹は松田が、テーブルの真向かいに座るのを見届けて言った。


「は?」


 呑気な表情で田川は雅樹を見た。


「お前また目が合ってたぞ」


「ええ?」


 言われた当人よりも、見事なリアクションで驚いてくれるのは松田だ。

 何時も事だが、その見事なリアクションに可愛さを覚える程だ。


「誰と?」


 当人はこの間の抜けたリアクションだが、そこがこいつの〝凄い〟ところのような気がしてきている。


「人間……では無いもの……」


「げっ、マジか?」


 この拍子抜けする受け答えも毎度の事となっている。


「田川……〝ガンつけ〟はかなりやばいぞ……」


 賀茂がからかう様に割って入ってきた。


「ええ?マジか?マジ……」


「大丈夫だ。賀茂さんの存在を察して、向こうから身を引いた」


「賀茂……マジでサンキュー」


 田川が本心から礼を言っているのがわかる。

 天は何故、こんな小心者にこんな〝力〟を与えたのだろうか?

 己にはなんの能力は無く、あったとしてもそれを拒否れる〝力〟と大物を惹きつける〝力〟


「田川さん、目がデカイっすからねー」


 松田が言う。


「関係ねーだろ?」


「こんだけつぶらな瞳だと、相手も目がいくってもんすよ」


「もう下向いて歩くかなぁ……」


「はは……そんなにビビらんでも、お前に何かするのは小物しかいない」


「えっ?」


「たいていの〝もの〟は、田川の背後(うしろ)にいる大物の気配を察するからね」


「マジで?実篤様っすか?」


「いや、俺じゃない……」


「……?……」


「田川……お前はわからんでいい」


 賀茂が慰めるように言った。


「えーそれ知りたいっすねー」


 好奇心旺盛な松田が言った。

 確かに雅樹も同感だ。


「はは……多くのお方とお目もじ頂いているって事……」


「あ……」


 圭吾は思い当たる事がいっぱいで言葉を呑んだ。


「な、なんすか田川さん、思い当たる節があるんすねー」


「う……いえもりさまの所為であり過ぎて……」


「えーいいっすね」


  能天気な松田が興奮地味に言った。


「言い訳ねーだろが……」


 圭吾は真顔で松田に食って掛かる。

 それを見ながら雅樹はほくそ笑んだ。


 ……なんでもいい……


 今こうして、人に話しても解って貰えないような事を、語り合える相手がいるのだから……。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。

また少しお時間を頂いて、書き進めたら……と思います。

どうかよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ