交霊 新米霊能者 其の六
意識が遠退いたのは、それからすぐだった。
あの煌々とした輝きはなんだったのか……。
地の神か?谷の神か?山の神か?
……どうやら神様の要望に応える事ができたようだ……。
雅樹は斗司夫さんの家の居間で、気怠さを覚えながら目を覚ました。
「合格したようだね……」
笑顔を見せて傍らにいる斗司夫さんに言った。
「まだまだ教える事は沢山あるがね……」
「おたくが教えるの?」
「ああ……それとも修行をするかね?」
「……修行をするくらいなら、おたくに教えてもらいたいけど、死んでるんじゃなぁ……」
「私を呼ぶ事はもうできるはずだからね……」
「えっ?マジで?」
雅樹は嬉しそうに言った。
「ああ……。君が合格してくれたお陰で、私も君に会いに来れる」
「へぇ……。神様のお許しが出たって事?」
「いや……君の力が増したって事かな」
「ええ?スキルUPってやつ?マジで?」
「一応私もそれなりの霊能者だらね。君に与えた能力はそれなりの〝もの〟だ。ただ〝それなりのもの〟を使いこなせる実力を身につけて貰わないと、かなり危険だからね」
「それが解っていて、僕にくれたんだよね?……いや……違うな……。おたくは最初に言った事だけのつもりだったはず……。やっぱり、僕が田川を見つけた時に、僕は神様に見初められた?いやいや違うな……。僕がここで事故に遭ったのも、おたくが僕を見つけたのも、僕が田川を見つけたのも、全て神様が望まれた事か?つまり、おたくもここまでは知らなかった……」
「流石だね、としかいいようがないね……。確かに私もそのつもりはなかった。私が此処に君を呼んだのは、実篤様が娘を救ってくれたからだが、それが神の意向か否かは私には解らないし、どうでもいい事なんだ」
「うーん……確かに」
雅樹は何時ものごとく朗らかに笑った。
「どうでもいいが……合格じゃなかったら、僕はどうなっていたんだろうね?神様の力って霊の力より超絶上だよね?祟り程恐いものはないんだろ?」
「よく知ってるね?」
「こんな風になったら、普通調べるっしょ?簡単に調べられるんだからさ〜見た事もないもんいろいろ見ちゃう訳だし、会っちゃう訳だし……マジでおたくがスキルUPさせてくれんのは、当たり前だよね?……つうか、能力もらえばまあまあ使えると思うじゃん?確かに使えるんだけど、下手に使うと恐いとかいろいろ書いてあって、マジでビビった。……けど、見えるし会うし来るし……途方に暮れてたら、おたくから此処を示されたからね、来ないわけにはいかなかった」
「私も君を指導できるようになるとはね……。実篤様がお出ましになられた時に、もはや私は安心していたんだ。いざとなったらお助け頂けるってね……」
「はは……まあ可能だろうけど、かなりやばい状態だったらだろうね……」
「だが〝強いもの〟を持った者と知り合いになったじゃないか?」
「〝強いもの〟は持っているけど、奴は頼りにならない。〝持って〟いる事すら理解できない、わからず屋だからね。〝強いもの〟が側に居ても解らないあんぽんたんだ」
「まさか…….。話しを聞く限り信じられないな……」
「でもマジで解ろうとしない…….」
「それはそれで凄い能力だ。余程の〝もの〟がついていない限り、そこまで守られないからね……」
「そっか…….。初心者マークの僕が感じ取れる程の〝もの〟を感じないって事は、それなりの力に守られてるって事か……」
雅樹は手を叩いてそう言った。
「じゃあ、此処に来れば指導してもらえるわけ?」
「此処に来れば力は増すだろうが、指導は何処でも可能だ」
「えっ?」
「君が私を呼び寄せられるからね……」
「僕が呼び寄せられる?どうやるんだ?」
「それはその時にわかるだろう……昨夜の時のように、何時しか唱える言葉は、君の中に浮かんでくる」
「………」
雅樹は初めて昨夜の事が、夢ではなく現実であったのだと実感した。