授る 新米霊能者 其の終
さて墓穴を掘って、実篤様……もとい賀茂を頼って松田に案内役を頼み、小神様といえもり様まで伴って鈴木雅樹の生き霊と会ってしまったが為に、鈴木雅樹の依頼を受けねばならなくなったのだが、そこは友達がいいというのか、運がいいというのか、やっぱり〝持っている〟というのか、とにかく鈴木雅樹の依頼を賀茂が肩替わりしてくれたので、圭吾は夢を見る事もなくなり快眠を取り戻せる事と相成った。
「マジ凄えっすよね賀茂さん」
松田は魔物賀茂を羨望の目で見る様になり、以前以上に圭吾と賀茂を、神様巡りに誘いたがった。
賀茂……実篤様たる賀茂は、神様とのお目もじも満更ではない様子だが、その気が全く無い圭吾には、とても楽しいものとはいえない。事ある毎に理由をつけて断ろうとするが、何故だか小神様がいえもりさまを殊の外お気に召してしまい、小神様に誘われたいえもりさまのお供という形で、同行させられる事が多くなってしまった。
「田川さんは彼方此方キョロキョロしないでくださいよ」
松田は鈴木生き霊事件から、圭吾がボーとしていると、こう言ってダメ出しをするようになった。
「はあ?松田何言ってんの?」
「また何かと目が合ったらまずいだろう?」
賀茂が揶揄う様に言った。
「そんな事言ったら外を歩く事ができんだろ?」
「田川、たぶん大概の人間はおまえと同様に解らんもんだが、それでも何かしら感じ取るもんだ。そして無意識に本能で避けているものだが、それすら〝無い〟のは、反対に凄い事だぞ。この俺が言うのもなんだが……」
「本当っす。田川さんはマジなんか凄えっす」
「それって褒めてねえだろ?」
「いやぁ、持ってる僕らにしてみたら、やっぱ凄いと思うな……」
何故だか此処の所、この松田ツアーの一員となった鈴木雅樹が口を挟んだ。
「……っていうか、何故鈴木君が此処の所一緒に行動してるんだ?……いやいや、お前の所為でこの言われようなんすけど?」
圭吾が不満たらたらと鈴木をみて言った。
「いやぁ……僕は実篤様……いやいや賀茂さんには、一生付いて行くつもりだから……」
「はあ?賀茂の一生は果てしなく長いぞ」
「だから、僕の一生ってこと。ひょんな事から、僕も〝持〟ちゃったからねぇ、それに寿命は長いみたいなので、これからいろいろ賀茂さんにはご恩返しをしないと……」
「……って、どうやって取り替えたんすか?」
興味深々の松田はその話題に食らい付いて聞いた。
「企業秘密」
賀茂が冗談めかして答えた。
「秘密っすか?」
「はは……秘密っていうか、我々には想像すらつかない事……だから、説明もできない……」
鈴木が真面目に松田に言う。
「えー、それって凄え気になるってやつっすよねー」
「敢えて言うならば、松田が神様とお会いして、そのお姿の説明ができないっていうのと似てるかも……」
「……なるほど……」
好奇心旺盛な松田は納得して頷いた。
松田は納得しているが、こんな三人の会話に全然付いて行けないのが、何にも無い凡人の圭吾だ。
……何にしても、二度と不思議なものとは目を合わせたくないし、顔も合わせたくないが、魔物様と初心者マークの霊能者に神様に呼ばれる者……。
なんだかどんどん、不思議な〝もの〟だけでなく、不思議な〝者〟とも関わりだして、凡人たる平穏な日々が送れるものやら、不安にかられなくもないが、そこはあんまり気に留めない気質が幸いしている。
小神様といえもりさまの、五月蝿いはしゃぎようにも慣れて、一向は神様がお待ちになる地に……。
いったいその地は、本当に神様がお待ちになるのか、それとも………。
いやいや、何も考えないのが一番だ。
その術を知っているからこそ、圭吾は凡人としていられるのやもしれない……。
お読み頂いてありがとうございました。
全然怖くない不思議噺しで、それもマッタリし過ぎていますが、お付き合い頂いて本当にありがたいです。
更新も時間がかかりますが、それでもお待ち頂いて、本当に幸せ者でございます。
またまたお時間を頂くかもしれませんが、どうか宜しくお願い致します。