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授る 新米霊能者 其の四

 バスを降りると、見送るようにバス停に立った。

 バスの中では流石にお疲れ気味になって静かにしていたが、松田は魔物の実篤様……今は賀茂……とお出かけができて、それはそれはテンションが上がりまくりだったのだ。

 一応圭吾の異常事態の説明を受け、圭吾の為に出動している部隊だと承知しているとは思うのだが、はっきりいってメンバーの中で、言い出しっぺの賀茂と当事者の圭吾以外は、異常事態と認識している者はいないようだ。

 まあ、圭吾すら体調不良があり、睡眠障害があり、心身憔悴感があったとしても、余り気に止めるタイプでは無いから、この騒がしくてお祭り騒ぎ的な状態でも、ちょっとうざったい位にしか感じていない。

 然しながら、家護りのいえもりさまが、いくら小神様のお伴で嬉しいといえど、主人たる圭吾の異常事態に、こんなに浮かれていて良いものだろうか?


 国道沿いの停留所で走り行くバスを見送っていると、車は滞る事なく幾台も走り去って行くのは、流石国道と名が付いているだけの事はある。

 こんなに留めどなく行き交っているのに、道祖神様の前で渋滞に遭い、降りる奇遇に合うとは、神様にお呼び頂く事の多い松田と一緒にいたとはいえ、やはり此処は何かの作用を疑ってみるのも、当然の事やもしれない。


 バスが走って行った方向とは反対方向に暫く歩くと、石に彫られた道祖神様が、風化と共に永きに渡りこの当たりをお護り下さっていたお姿を現していた。

 

「また参りました」


 松田はそう言うと深々と手を合わせて頭を垂れた。

 それに従って圭吾が頭を下げる。賀茂と松田はそのお姿に何かを見入るように、面を上げて同じ方向を見ていた。

 小神様も同じ方向を直視し、いえもりさまは平べったくひれ伏している。

 圭吾以外の者達が、神の御前でご神力を頂いていた。


「田川行くぞ」


 賀茂が深々と手を合わせて頭を下げてから、圭吾の腕を掴んで言った。


「お前の言った通り、この先の交差点だ」


「えっ?何?」


「えー!まさかまさか、賀茂さん……神様から何か伺えたっすか?」


 松田は興奮気味に賀茂に言った。


「俺、お姿は拝見できるんすけど、お声を聞いた事無いんすよ。凄えす」


「神様だからな……。真の神様のお言葉なんざ、たかが人間如きが伺える筈がない」


「え?でも、神託頂く方っているっすよね?」


「あれは、下級神……とか言われてる。下級でも神様ならいいが、大体の所神様じゃない事が多い」


「じゃ、なんすか?」


「神以外のも・の・だ……。神は殆ど人間にお言葉などかけないし、神託などする事はない。本当に稀にお気に召された時にされる事はあるが、本当に皆無に近い」


「……そうなんすか?俺親しくして頂いているつもりでしたのに、ちょっと寂しい気持ちになったんすよね〜よかった……」


「小神様がお出でだけで充分だろう?」


「あ?そうすよね。充分過ぎっすよね……あいつとは話せるし……」


「そう思えるから、小神様がお出でなんだろうな……」


「ありがたいっす」


 賀茂は松田の素直さに好感を持ったようだ。


 国道沿いを歩いて行く。

 車は引っ切り無しに走っていて、滞る事はない。

 国道の両脇には林が茂っていて、此処は以前小高い山の中だったのだろうと、地形から臆測できた。

 振り返って見ると、林が途切れた辺りから平地になって田畑が広がっている。その先には以外と大きな川が流れていて、その先にも田畑がずっと広がっている。

 その広がる田畑の合い間に住宅があって、昔其処を部落といって、小さく分かれていたのかもしれない。

 そんな想像を駆り立てるように、長閑な景色と家々が点在している。


 行く道は上り坂だ。

 とても平坦に見える上り坂だ。

 歩き続けて振り返れば、一目瞭然坂道だと納得するが、振り返らずにひたすら歩き続けたら、気づかずにいるかもしれないような坂道だが、やっぱり疲れる。

 そんな事を思いながら歩いていると、圭吾が夢でよく見る交差点に辿り着いた。


「此処だ」


「此処でござりまするか?」


 いえもりさまが、圭吾の肩の上から見渡して言った。


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