土護り お宝様 其の五
「その村田さんち、今空き家になってるの知ってた?」
「いや……。俺は知らんからなぁ……」
「……って言っても、ここ二三年くらいだろうけど……お爺さんもお婆さんも亡くなってるから、子供達が売りに出そうとしてるらしい……」
「マジで?」
「うん……しかし、あそこにはお宝様がおいでだし、周りは新しく家が建ってるか、反対に老人だから除草剤を離れて暮らす子供が、撒いて行ったりしてとてもいい環境とは言えないらしい……」
「マジで?だからお宝様は〝彼方〟に行くって事か?」
流石の圭吾も神妙にな表情を作ったが
「友ちゃんちにお引越ししてくればよくね?」
妙案が浮かんだと、言わんばかりに言った。
「うちか……」
「友ちゃんちは、おじいちゃんがまだまだ元気で、野菜なんか作ってるし、手作りの池もあるし……井戸もあるんじゃなかったっけ?」
「ああ……あるある……使ってないけど、水質検査ってやつはやってる……」
「環境的には最適じゃね?お隣も同じように木や花を大事にしていてるし……」
「なるほど……うちか……」
友ちゃんは、かなり真剣な表情を作って考え込んだ。
こんな時の友ちゃんは、子供の時からちょっと大人ぽくてかっこいい。
家に帰って部屋に入ると、今日はドラマがないのかいえもりさまが天井に張り付いていた。
最近……というより以前から、無神の神棚からテレビを見ているのが好きだっだが、母親が夢中になっているドラマに、いえもりさまもハマっていて、母親が居る時テレビ三昧が日常になっているようだ。
今日はそのドラマ達のお休みの日らしい。
「今日はドラマはないのか?」
「はい……今日はつまらぬ日にござりまする……」
「なるほどな……」
圭吾はそう言うと、スマホを手にとってベッドに横になった。
「そうそう…….帰りに友ちゃんに会ったぜ」
「兄貴分さまにござりまするか?ならば、木霊にお会いになされましてござりまするか?」
「えっ?木霊?いや……会わんかった……って、木霊友ちゃん所に来たりしてんの?」
「さようで……。もはやおうちの方々には、公認の仲にござりまする」
「……っていっても、木霊の正体は知らないんだろう?」
「そ……それは……さようにござりまするが……」
「まっ……友ちゃんのお母さんは、木霊の正体を知ったところで、大騒ぎするような人じゃないだろうけど……」
「さようにござりまする。あそこの方々は、流石にぬし様がお認めになられたお方々にござりまする……木霊が正体を知ったところで、態度を変えるような方々ではござりませぬ……」
「……でも、騙しておいた方が無難だけどな……」
「若……人聞きが悪うござりまする……騙すなどと……」
「……って、騙してんじゃん?」
「さようでござりまするが……」
いえもりさまは不本意そうに言葉を切った。
「そうそう……裏の村田さんの所に〝お宝様〟が居るんだろう?」
「さようにござりまする……」
「いずれ村田さん所が売りに出されるか、子供が帰って来るか……とにかく、新しい家が建って今の庭のようには行かなくなったら、友ちゃんの所に引っ越しすればいい……って話しして来たんだ」
「兄貴分さまの所にござりまするか?」
「そうそう……あそこは友ちゃんが居るから、ずっと環境はいい状態でいるだろうし、隣とかもうちみたく土を大事にしてるらしいぜ」
「さようにござりまするが……お隣はお年を召しておいでゆえ、先々同じ憂き目に合わぬ限りもござりませぬ……」
「そうか……?友ちゃんなら広げてくれそうだけどな……」
「さようにござりまするが……実を申しますると……」
いえもりさまはもじもじとして言った。
「なになに?その意味ありげな格好……」
「実を申しますると……お宝さまより、我が庭を広げて欲しいとのご要望を頂いておりまする……」
「我が庭……?……って、うちか?うちの庭を地続きにしろと?」
圭吾は思わず大声を出して、それこそ開いた口が塞がらない状態に陥った。