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土護り お宝様 其の四

 最近いえもりさまのきも可愛い容姿にも慣れ、ちょっと不思議な〝もの達〟とも親しんで、いろいろといえもりさまに助けられ……。

 いえもりさまは、我が家の主人たる母親と時期主人たる圭吾の為には、尽力を惜しまないから、ついつい忘れてしまっていたが、〝家護り〟たるいえもりさまは、〝主人〟たる圭吾達の〝お家〟を護ってくれているだけなのかもしれない。

 つまり、母親や圭吾個人を思っていてくれるのではなくて、この今存在()る田川の〝家〟の為なのだろう。

 その為ならば母親も圭吾すらも、父親と同じ憂き目に合わないとは限らないのかもしれない……。




「へえー!とうとうけいちゃんも、そんな事を考えるようになったのか?」


 学校から帰ってくると、久々に友ちゃんが家の庭にいたので、ついつい愚痴ってしまう。


「そんな事を考える……ってたって……」


「だってそれがいえもりさまの使命だもんな」


「そうだろうけど……」


「彼らは意外とシビアだぜ……。人間みたいに甘えや惰性はないからな……。だから貴くて清いんだと思うよ」


 友ちゃんは、以前からいえもりさまに聞いていたように、前よりも元気でハツラツとしている。

 小さい時から、少食の為か華奢なタイプだが、ちょっと見ない間に少し太って頼もしい感じになっていた。

 だが、相変わらずのイケメンぶりだ。

 こんなイケメンが、桜の精とラブラブしていると知ったら、世の人間の女性は激怒してしまうに違いない。


「確かにそうだろうが……なんか父さんが不憫だ……ってか、明日の我が身って感じ?」


「はは……確かに。あのいえもりさまだと、馬車馬のように働かされそうだね……」


「いや……以前、大掃除に冬眠中の家守達を、使ってるのを見てるから……」


「大掃除?」


 友ちゃんが、話しが見えないという表情を作った。

 日本語が余り上手ではない圭吾は、かなりのタイミングで話しが飛ぶらしい。


「ああ……うちに家守がいるんだけど、大晦日あたりって、あいつら冬眠中じゃん?そいつらを寝ている状態のまま、いえもりさまは操って、大掃除をさせてたんだぜ」


「えっ?冬眠中の家守は、知らない間に働かされてたって事?……っていうか、大掃除してくれてるんだ?いえもりさま……」


「〝家〟の為じゃねぇの?」


「はは……マジでけいちゃんの将来は〝馬車馬〟だね……」


「……いえもりさまがいてくれて、いいのかどうかわからんようになってきた……」


「いてくれていいに、決まってるじゃないか?」


 友ちゃんが即答するものだから、圭吾が唖然としてしまった。


「だって、いえもりさまに尻を叩かれないと、けいちゃんじゃ〝家〟は栄えなさそうだ……」


 友ちゃんは大笑いをして言った。


「笑い事じゃないから、マジ怖え……」


 それを聞いて、余計に友ちゃんは笑った。


「ところで〝お宝様〟の事は聞いた?」


 真顔になって友ちゃんは言った。

 真剣な表情の友ちゃんは、小さい時からかっこいい。


「ああ……うん。ぬし様みたいに〝彼方〟に行く……って話しだろ?またお別れパーティーとか……」


「お宝様って、けいちゃんの裏のうちの、村田さんの所に居るらしいよ……」


「村田さん……?」


「けいちゃんちの裏の……」


「えっ?あそこ?……殆ど付き合いないからな……うちの庭にいるんじゃないんだ……?」


「この辺は、たぶん一つの森林だったんだろうな……だから、お宝様はどの辺までかは分からんが、一体をお預かりしていたんじゃないかな?ぬし様みたく……」


「そうか……この辺一体の土の管理を土地神様に任されて、(しもべ)ミミズを使って浄化してたって事か?」


「へえ……けいちゃんだんだん呑み込みが早くなったね」


 久しぶりに友ちゃんに褒められて、ちょっと照れてしまう。

 小さい時から、友ちゃんはおだて上手で、何でも先にできてしまっている友ちゃんに、褒められて育ったようなものなのだ。

 ……まあ、何を隠そう今回の〝お宝様〟の話しの呑み込みの良さは、ばあちゃんから散々聞かされたミミズの話しが基盤になっているのだが……。


 ……ばあちゃんありがとう!ばあちゃんのおかげで、久しぶりに友ちゃんに褒められたよ……


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