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呼ばれる 小神様 其の八

「なんともお労しい……」


 いえもりさまは、圭吾に語りながら潤んだ瞳へ手をやった。


「そりゃ、気の毒な気もしないではないが……」


「いやいやお気の毒にござりまする。護りとして、使える主人が努力の〝ど〟の字も知らぬお方程、不安で悲しいものはござりませぬ」


「おい!ちょっと待てよ。それって俺さまの事じゃねーか?」


「いえいえ……」


「ちげーだろ?どう聞いたって俺さまの事だわーそれ。第一小神様にとって、松田は主人じゃねーし。立場は上。小神様が上……」


「若……お察しが早うなられました……」


「はあ?馬鹿言ってんじゃねーよ。超絶ぶん殴りてぇ」


「そ……そればかりはご容赦を……」


 いえもりさまは、小さく身を屈めて嘆願するように言った。

 過去に何回か故意ではないが、いえもりさまに痛い目に遭わせている。

 圭吾は全く力を入れているつもりはないが、小さきもののいえもりさまには、圭吾の力は強力なものと化してしまうらしい。


「ふん。今回は許してやろう」


「ありがたき幸せにござりまする」


 いえもりさまが大袈裟に平伏すのを見ながら、圭吾の口元は綻んでいる。


「……で、小神様はどうすりゃいいわけ?」


「小神様?」


「……あれ?小神様が何かするのとは違うのか……。松田がどうすりゃいいんだ?小神様の為に……あれ、何か違う気がする……あれあれ?」


「若……何を申されたいのか分かりませぬ」


「うっ……俺も分かんねー???」


「……とにかく小神様は、若の後輩方の母君様の、お願い事をきけない事に、力をお落としなのでござりまする」


「……ったって、松田に一流大学や一流企業なんて、どう考えだって無理だべ?俺を考えりゃわかるじゃん?」


「さようにござりまするゆえ、悲しくなるのでござりまする」


「うっ……」


「とにかく、理由がわかりましたゆえに、それを後輩方にお伝えくだされまし」


「伝えたってなぁ……小神様にも、まして松田にも如何する事にもできないと思うがなぁ……」


「さようにはござりまするが、とにかく後輩方の疑問は解決いたしまする」


「疑問?」


「はあ?何を若さま……。何故大学へ入学したのに、今だに小神様が後輩方に付いておるか……でござりまする」


「おっ!そうだった」


「小神様のご憂鬱は……」


 いえもりさまも理解できるだけに、感慨深い表情になった。


 翌日圭吾は松田と授業の後に待ち合わせをした。


「……なんか元気ないなぁ」


「やっぱ分かります?気になり出したら、気になって気になって……」


「うん……分からんでもないが……」


「何かあいつも元気ないみたいなんすよ」


「そうかぁ……」


 圭吾はその理由を知っているが、流石に松田の出来の悪さが原因だとは言いにくい。


「そうだ。お母さんに聞いてみたらどうだ?」


「はあ?何をっすか?」


「彼処の神社に参拝してないかって……」


「彼処の神社っすか?」


「考えてみたら、お祖父さんの病院が直ぐ側なんだろ?お祖父さんが病気だったら、早く元気になって貰いたいって、参拝とかしないかなぁ……って思ってさ」


「……でも、彼処ってかなり分かりずらいっすからねー。オカンが行けるかなぁ?」


「松田が〝呼ばれて体質〟だったら、お母さんも少しはあるとか……」


「そうっすね……。聞いた事は無いっすけど、確かにうちの近くには道祖神が有るからなぁ……。神様とかに手を合わせる習慣は持ってるっすね」


 松田はしみじみと考え込んで言った。


「うちの親も俺の受験の時には、いろいろ神頼みしてたみたいだぜ……」


「そうっすか?」


「お守りとか買って来てさぁ……」


「そうっすね……確かに……。お守りか……彼処はそういうのは無かったすけど、天神様のお守りを持たされてました。……そういややってる可能性は高いすね」


 大きく頷くとちょっと元気になって言った。


「聞いてみる価値はあるんじゃね?」


「価値ありっすね……。帰ったら聞いてみます」


「聞いてみて聞いてみて」


「はい……」



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