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呼ばれる 小神様 其の三

 松田は翌日目を覚ますと、吃驚してベッドから転がり落ちた。


「ま……マジか?」


「マジだ」


「……」


 松田は目の前に、子供の神様をみとめた……だけでなく会話をしたのだ。

 長年神様とは、交流が在ると自負はしていたが、こんな事は初めてだった。


「我は先日詣りし大神様より、其の方を護れと命を受けて参った」


「ま……も……る?」


「そうだ」


「……?……俺って何かお願い事しましたっけ?」


「そ……それは其の方が、一番良く知っておろう?」


「……っすよね〜でも、覚えて無いんすよね……やっぱ受験の事かなぁ?」


「お……覚えておらんとは馬鹿者よの。ゆえに大神様は、我をお遣わしになったのだ……」


「そうすか?マジ怪しいんすけど……」


「な……何を戯けた事を……」


「何か動揺してるし」


「た……戯けめ」


「た……たわけ……自体分からんし……」


「其の方本当にお馬鹿者じゃな」


「はあ?子供に言われたく無いんすけど」


「は?何を申す。童の姿をしておるが、神は神であるぞ」


「はあ?其れこそ怪しいもんだ」


「何を……」


「ちょっとヒントくんないすか?」


「なんのじゃ?」


「何をお願い事したか……。マジ気になるわ」


「神にも守秘義務があるのじゃ」


「守秘義務?マジマジ?医者や弁護士が使うやつ?」


「偉いものにはあるのじゃ」


「意味解んないすけど……」


「それは其の方がお馬鹿だからじゃ……」


 と言う事で、その子供の神様が松田の家に住み着き、松田に張り付いて離れなくなってしまった。


「張り付いてしまった……って、居んの?今此処に?」


「居ますよ。ほら其処……」


 松田が指差す方に顔を向けても、〝何も持っていない〟圭吾に見える筈もない。


「マジ見えないんすね〜」


「はあ……そんなに残念そうに言うなよ……」


「いやいや……残念っす……マジ……」


「……って、子供の神様にしろ、お護り頂いてんだから、別に問題ないんじゃね?」


「そうなんすけど……何か……」


 松田は神妙な面持ちで言葉を切った。そして暫く考えていて言った。


「あの時は、俺受験生だったんで、願い事ったら〝あれ〟しか無い訳っすよ」


「あ、あれ……ね。うん」


「大学受かってキャンパスライフってやつすっか?俺曲がりなりにもこうして、楽しく送ってる訳っすよ」


「うんうん……」


 〝曲がりなりにも楽しく〟に大いに共感して頷く。


「なのに何故あの神様は、今だに俺に張り付いているんすかね?」


「えっ?」


「いや〜だから、願い事叶ったっていうのに、如何してまだ居るんだろうと思い出したら、気になっちゃって気になっちゃって……」


「そりゃ気になるだろうが……ってか、話せるんだから、直接聞いてみたら?」


「聞いたんすよー」


「ほうマジか……っで?」


「守秘義務があるそうで……」


「それかぁ……」


「〝それ〟っす。俺的には、あいつが来てから、ラッキーつうか、思ったよかいい事があって、守ってくれてんなーなんて有難く思う事が多いっていうか……」


「へえ……いいじゃん」


 ……俺なんて、いえもりさまと出会ってから、いい事っていうより、面倒な事ばっかなのに……


「……っていっても、ほんのちょびっとですけどね……。それでも、もう駄目かなぁ?なんて思ってると意外と上手く行くんで、それってあいつのお陰かなぁ?なんて有難く思う様になってきて……そうなると、何か何故居んのかな?とか、いつ迄居んのかなぁ?とか思う様になっちゃって……。当てにする訳じゃ無いんすげど、何か……居なくなれないの俺の所為かな?なんて思うようになっちゃったんす」


「なるほど……」


「ちゃんとお礼詣りも済ませたんすよ。これでお別れかなぁ……って、神妙な気分にもなったんす。……けど……」


「うん。居るんだね……」


「居るんす」


「この辺にね」


「いや……此処っす」

「はは……此処かぁ……」


 圭吾は、隣の椅子に座っていると指摘されて苦笑した。

 だって、こんな信じられない埒もない話を、大学生が昼日中から学食でしているなんて、高額な授業料を払ってくれている親が知ったら、さぞかしがっかりする事だろう……というか、大丈夫かと心配されてしまうだろう。

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