新春 猫にゃんにゃん 其の四
「実は、お目覚めになられた猫にゃんさまは、猫殿達にとって、それはそれは住みにくい世となっておる事に、お気づきになられたご様子で……」
「住みにくい?」
「はあ……猫殿達が不自由な暮らし向きのみならず、人間共に処分されたり虐待を受けたり……諸々にござります……」
「ああ……犬猫の殺処分は問題になってるもんなぁ……。今じゃ家飼いやケージ飼いが当たり前……糞尿問題もあるから、自由に外に出してやれんって、母親が嘆いてたわ。俺が産まれた時に飼ってた奴は、自由に外に遊びに行かせてたのに、今の奴らは出ないように苦労してるし、面白半分に虐待されたり殺されたり……考えれば、かなり住みにくいっていやぁ住みにくいか……」
「それにお気づきになられました猫にゃんさまは、それはそれは激怒されましてござりまする」
「なるほど……そうだろうな……。おかんみたく好きな人間にとっても大問題だもんな……猫の神様じゃ怒り心頭だろうな」
「大問題……ならばよろしいのでござりまするが……。猫にゃんさまには、それは大きなお力がおありになるのでござります。その猫にゃんさまが、〝激怒〟されてしまわれれば、それはそれは一大事な事になりまする……」
「ん……例えば?」
「……たり……たりにござりまする」
「へっ?」
地獄耳の圭吾が聞き直すほどの声で、いえもりさまは言った。
「ですから……罰をお与になられましてござりまする……例えば、死を持って償わせたり……たりにござりまする」
「ええ?〝死を持って〟って……あれか?あれか?……」
「……天罰にござりまする……」
「……ああ……」
圭吾はちょっと頭がクラクラするのを覚えた。
「若主さまは、近頃わいどしょうで、騒がれている事柄をご存知でござりまするか?」
いえもりさまは、申し訳無さげに言った。
「……ええ?まじか?まじあれか?」
「まじあれでござりまする……」
「……はあ……」
圭吾は聞きたく無いものを聞いてしまったように、眉間に皺を寄せて項垂れた。
最近ワイドショーを賑わしている事柄……。
それは何故か、原因不明で突然亡くなる人が多発している……という事で、毎日のようにテレビで取り上げられており、新種の細菌かウイルスじゃないか?とか、話は死亡人数が増えるごとに、大きくなっている感じだが……。
これが、猫にゃん様の仕業というのだろうか?
「今騒がれてる〝あれ〟だろ?どんどん死亡人数が増えてるってやつ……」
「さようにござりまする。どんどん調子に乗ってまいるのが、猫にゃんさまなのでござりまする」
いえもりさまは、〝そこ〟を強調して言った。
「……ってまだまだ死ぬって事か?……何で猫にゃん様が?」
「そんなの簡単な事であろう」
ひそひそと話している、いえもりさまと圭吾の話しを聞いて、当の猫にゃん様が割って入って来て言った。
「うわー」
「何が〝うわー〟じゃ。わしの耳は物凄〜くよいのじゃ」
「そうだった。猫ってすげーんだった……」
「ふん!耳も鼻も目も身体能力も、全て〝良し〟なのじゃ。人間の比になどならぬ程優れた種族なのじゃ」
「性格は別だよな……」
「はん?今何と申した?」
「ちと性急なご性格で……」
「何を申すか家守り。わしは性格も俊敏なのじゃ」
……ものは言いようだ……と圭吾。だが口に出さなくなっただけ、この手の大物を悟り始めている。
「わしがほんのちょっとうたた寝しておる内に、無惨にも沢山のもの共が命を落とした。彼奴らに無惨な事をできるのが、お前ら人間ならば、お前ら人間に無惨な事を強いれるのは、このわしじゃ。そうであろう?」
「そ……それはそうでござりまするが……。猫にゃんさま。これでは人間共の大半が罰を当てられてしまいまする。猫にゃんさまに罰を当てられる、という事は、つまりその者たちは〝死〟を持って償わねばなりませぬ」
「彼奴らと同じ思いをして、苦しみながら報いるのじゃ」
「いやいや……同じように死ぬって事っすか?同じ……?ええ?もしかして、死んでる人達って何かしら猫に酷い事又は、殺したりしてるって事?……殺したり……ってまさか?不本意でもしなくちゃいけない場合でも?」
「猫にゃんさまには、人間共の理由や理屈など通りはいたしませぬ……」
「……ええ……やべーじゃん?まじやべーじゃん……今じゃ殺処分ゼロなんて動いている人増えたけど……ちょっと前までかなりの数……ええ?まじっすか……どうにかなんねーの、いえもりさま」
「どうにもこうにも……」
「死んだものは、たといわしとてもどうにもならんぞ」
猫にゃん様は、大きくて愛くるしい顔を向けて言った。




