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新春 猫にゃんにゃん 其の一

 去年から、何故か急に忙しく働かされる暮れを過ぎ、それ以上にいえもりさまにこき使われる元日、やんややんやと急かされ見送られる初詣……得体の知れないもの達との宴会……などなど、不思議と去年を境に目まぐるしく過ぎる三が日が過ぎ、バイト、学校、七草粥に鏡開き……あっ……と言う間に一月の中旬になってしまった頃……。

 久々に〝猫愛情主義〟という、とても変だが一目で“猫好き愛好者〟の興味を引く名前の喫茶店に、お手伝いに行って来た母親が、新春から妙な話を聞いて来た。

「松前さんのお爺さんや、浜崎さんのご主人に、河原さんに織田さん……それから……兎に角猫嫌いと有名で、猫好き仲間から嫌われていた人達が、急死するならまだいいような、半身不随やら寝たきりやら、食べ物を食べる事が出来ない病気やら……と、私達みたいに猫好きからしてみれば「ざまあみろ天罰だ」と、陰口を叩くような出来事が、年が明けてから頻繁に起きているらしいのよ……」

 母親はたぶん他愛なく

「ヒヒヒ……」

 と笑った。

 その笑い方が、とても〝他愛なく〟は思えないものだったが、一応身内なので、他人の不幸を喜ぶ人間では無い!と願いを込めて〝他愛なく〟笑ったのであろうと思いたい。

「……なんか悪い物でも撒かれてるんじゃねぇの?ほら近所の猫殺し婆あが、糞尿の消毒と嘯いて消毒液の原液撒いてただろ?」

 ちょっと性格がいびつだが、意外と人間の本性の的を得て見透かす父親が言った。

「ああ……浜田さんね?浜田さんも施設に入れられているんだけど、変な事ばかり言って介護士さんを困らせてるらしいわ」

「……変な事?」

「猫の事ばかり言っているんですって。それこそ消毒液を持って来いとか、消毒液のつもりで水を撒いたり、奇行が酷くて介護士さんにも猫に相当酷い事してたんだろうって評判らしいわよ」

「へえ……」

「喫茶店の常連さんに、施設の介護士さんを知っている人がいて、浜田さんの噂を聞いてね、その人も猫好きだから、天罰だろうっていろいろ教えてくれるらしいのよ」

「……まあ、猫でも殺しゃ罰は当たって当然だ。簡単に呆けられちゃつまんねぇから、もっともっと苦しめ苦しめ……」

 父親は豪快に笑うとご機嫌で二階に上がって行った。

 父親にしてみれば、身に覚えが全くないにも関わらず、自分に言われたものかそうでは無いものかも判らず仕舞いだが、通り過ぎた途端


「みんな殺してやる!」


 などと大声を出されたのだ、普段は覚えていないように見せているが、根がしつこいタイプだから〝猫殺し婆あ〟の浜田さんを許せるはずも無い。


 ……よくも俺様に言ってくれたな、この猫殺し糞婆あ……ってな感じだ。


「食べ物を食べれない松前さんのお爺さんなんか、随分と野良猫を餓死させたらしくてね〜みんな陰じゃ死ぬ時には、あの人も餓死だって言ってたのよ……そしたら本当に食べれない病気になったのに、医学が進んで死ぬに死ねずにずっと生きてんだって……」

「へっ?」

「もう身体なんて足を組んだまま固まったりしちゃって、家族じゃ怖くて伸ばせないから、看護師さんにお願いして真っ直ぐにして貰うけど、すぐまた組んでるんですって……それでいて意識はしっかりしてるらしくて、話かけると返事するらしいんだけど、やっぱ弱って来てるらしいわ」

「おかん」

「え?」

「嬉しそうに言っちゃいかんよ」

「えー?やっぱ駄目?家の中だし……可愛い猫を餓死させた奴なら、ざまーみろって感じ?頭はしっかりしてるのに、食べる事も出来ずに寝たきりで、一日中天井を見て過ごす毎日ってどんなだろう?考えただけでもぞっとすると思わない?」

「まあ……新手の拷問だなぁ」

「でしょ?まだまだ死なせんなー!なんて思っちゃ駄目?ははは……」

 母親は意地悪く笑うと台所に姿を消した。

 夫婦仲はすこぶる良い……とはいえない二人だが、割れ鍋に綴じ蓋……よく似ている。

 そう言えば、きっと二人はいい顔をせずに否定するだろうが……。


 ……うーん。しかし猫嫌いな人が立て続けに悲運に見舞われているとは……


「いやいや、単なる偶然だろう……」


 圭吾はちょっと嫌〜な感じを覚えたが、それを明るく?振り払った。

 だがしかし、最近の自分は以前より〝嫌〜な〟予感が当たるようになっているのが、マジ嫌だ。

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