山茶花の頃 寂しい家 其の終
あれから暫くは、お婆さんはお姉さんの所に姿を見せていたが、それは段々と怖いものではなくなって来た頃、お婆さんはパッタリと姿を見せなくなり、気配すらしなくなって、古関の家の怖い事件は終わりを遂げた。
無論古関はバイトで会うと、大喜びで圭吾にハグして感謝を表し、二回も飯をおごってくれた。
それから数ヶ月した頃、古関のお母さんは裏のお婆さんが亡くなった事を、遺品の整理に来た長女から聞いた。
お婆さんは或る日急に目を覚ますと、この家を優一さんに残し、あとの財産を三人の姉達で分けるようにと言い残して、とても幸せそうな笑顔を最後に見せて亡くなったそうで、正気を逸していた母親が、最後に正気を戻して言い残した遺言なので、娘達は母親の願い通りにする事とした。
この家の中に残されたものは、全て三人で片ずけて処分し、この古びた家だけを優一さんが、貰い受ける事になったのだ。
それから時を経て、ご縁の神様のお力か、優一さんは長年付き合っていたにもかかわらず、鬼女彼女とはあっさりと別れ、こっちの会社の勤務となって、古関の家の裏の家に住む事となった。
長年空き家だった為、優一さんが住むにはリフォームしなくてはならなくて、幾度となく優一さんが、お婆さんの家を訪れている内に、優一さんと美沙さんは知り合うようになり、ご縁が結ばれているゆえに、お互いは一目で惹かれあって、優一さんが裏に引っ越して来るや否や、直ぐにお付き合いをするようになった。
これには古関の家族はびっくりだが、話を聞いた圭吾だけはしたり顔だ。
「今年の後半か来年に入ってから直ぐに、古関のねえちゃん結婚するだろうってさ」
「当然にござりまする。ご縁の神様がお約束くだされたのでござりまする。トトんがトン。トントン拍子にござりまする」
「……そうだよな……って、ご縁の神様って、ここの所よく耳にするけど、いえもりさまがお願いすれば、願いを聞いてくれるもん?」
「はあ?何を仰せにござりまする。ご縁とは、お願いして聞いて頂くものではござりません。ご縁の神様がご覧になられ、良き縁とお思いになられれば、ご縁が頂けるのでござりまする」
「んー?だって、いい縁ばかりじゃないだろ?」
「それはいろいろな因縁や悪縁だの……入り乱れ絡み合うと、いろいろと厄介な事になるのでござりまする。それはご縁の神様が望まれる事ではござりませぬゆえ、断ち切られる事もござりまする。それをなおも結べば災いとなり悪縁となるのでござりまする」
「んー?」
「トントン拍子に何事もなく進む事は、兎にも角にも良きご縁にござりまする。実にめでたい事にござりまする」
「なるほど……じゃあ、古関の裏のお婆さんも喜んでんだろうな?」
「それはそれはお喜びにござりました。ご縁の神様がご承諾くだされしご縁は、良きご縁にござりまする。安心して彼方に行かれましてござりまする」
「そうか……だから、古関の所にも来なくなったんだな。よかったよかった……。そうそう、古関のねえちゃんって、持ってそうじゃん?」
「何をでござりまする?」
「霊感?」
「さようにござりまするな……」
「あれって、どうにかして感じなくできねえの?……ほら前には変なのに憑かれて、いえもりさまに食ってもらったベ?今回は生き霊婆さんじゃん?ああいうのに取り憑かれない事ってできねえの?いえもりさま的なものとか?」
「あそこには、山茶花殿がおりますゆえ、ご一緒になられあそこに住む事となれば、山茶花殿がお護りいたしましょう」
「えっ?じゃあ、絶対切らねえように古関に言っとかないと」
「若さま、大丈夫にござりまする。優一さまはお婆さまの大事にされていたものを、切り捨てたりはいたしませぬ。それゆえに、お婆さまは優一さまをお選びになったのでござりまする」
「……なるほど……」
「なるほど……にござりまする」
最後までお読み頂きありがとうございました。
暮れから新年にかけて、いろいろ不幸が続き、なかなか進まず内容も、何時もに増しておぼつかず……。
それでもご覧頂き有難いです。
今年もぼちぼちとやって参るつもりです。
どうか宜しくお願い致します。