8月31日(日) 10時
あれから約一時間が経った。
バスに乗って、電車に乗っていけるところまで。
遠いところまで行く。あいにくお金は一万円あったから、できる限り遠くまで行こうと思えば行けた。
でも、怖かった。それでいいのかと思った。そんなことで『敵』から逃げることが出来るのだろうか……そう思った。
でも逃げなくちゃ。助けなくちゃ。救わなくちゃ。
俺が救えるんだ……カオリちゃんを! これってまるでファンタジーじゃないか!
そう思って、俺はバスに揺られる。
行先はまったく知らない場所だったけれど。
場所は変わって、とある雑居ビルの占い屋。
そこで占い師をしている紅亜津沙の子供、紅圭織は時を待っていた。
自らを占った時に現れた一人の相手。
小学生だったが……自分と同じ年齢だったが……あれは確かに自分を救ってくれるに違いなかった。
彼女もまた占いの才能に秀でていて、小学校二年生の頃から『見える』ようになった。その見える範囲は様々で、人の生き死にから恋愛運まで見ることができる。
だが、彼女の母親はそれをしないよう言った。
彼女の母親曰く、
「占いで食っていけるのはほんの僅かだ。私はほんとうに、愚かなことをしてしまったと未だに苦労している。だから、美優にはそんな道を歩ませたくない」
とのこと。
だが、彼女としてはこの才能を手に占い師として頑張りたかった。成功したかった。
だからある日……こっそりと試した。
自分を救ってくれる人を。探したのだ。
そして出てきたその少年のヴィジョン。
「あ」
そして彼女は――。
――そのヴィジョンの相手と、運命的に出会うこととなる。
少年は少女を引き連れていた。デート、だろうか。邪魔してはいけないのか? そんなこと、彼女は考えることなんてなかった。
そして、彼女は。
少年に声をかけた。
「……あの」
少年は振り返る。
「私を……助けてくれませんか?」
少年はその言葉に首をかしげた。もちろん、それは少女も同じだったが。
◇◇◇
さて。
これは厄介なことになったぞ。
今ファミレスにやってきているけど、この占い師志望の女の子。突然俺に向かって『助けてくれないか』だって? なんじゃそりゃ、って話だ。助けて欲しいのは逆にこっちだったりする。
でもそんなことなんて言えないから、俺はここにいたりする。
「助けてほしい人……というヴィジョンに俺が出た、と。君はそう言いたいんだね?」
こくり、と頷く。
どうやら嘘じゃないみたい。
でもなあ。
どうすりゃいいんだろ。
「カイトくん、これで両手に花ね」
完全に調子を取り戻してくれたのは嬉しいけど何だかその言葉はひどいですカオリちゃん。
「さてと……それじゃこれからさらに逃避行を続けますか」
「逃避行?」
カオリちゃんの言葉に、紅さんは言った。(名前一緒だから分ける必要がある)
まあ、当然だろうなあ。
「……でも、私も行きます。きっとあなたは助けてくれる。そう信じていますから」
「え、ええ……?」
――くれないさんが なかまに なった! ▼