4.町に着いて
日が傾いてきた頃。道中、シオンがヤバくなったこと以外は特に何もなく町についた。
町の名前はアンジェリスという。
商業の町だとかなんかシオンの父親が言っていたが、
「すごいね」
「そうですね! ミソラさん!」
何がすごいって、人の量がすごい。人口密度がすごい。
ちょっと高い所から見たら、ざわざわとうごく人の頭がたくさんあって目が回る位すごい。
『わけがわからんぞ』
もう、神さんはうるさいな。
シオンに手を引かれて歩き、やがて、一軒の建物の前に着いた。彼らはそこで商売を始めるらしい。
建物の中は、まあ、何もなかった。当たり前か。
そういえば、お店を始めるって、
「何のお店なんですか?」
「装飾品屋です。指輪とかネックレスとかを売るんです」
こういうのです、とシオンの父親は指輪を一つ見せてくれた。
銀色のリングに小さい青い石がついている。それは、シンプルで綺麗であったが、目の錯覚だろうか。指輪は薄く、黒っぽい霧の様な物を纏っている様に見えた。
「教会で祝福された素材で出来ているんですよ」
『教会じゃと?』
「教会?」
それって、シューキョー的なやつ?
『きっと、ワシの教えとは違う教えを広めたのはその教会じゃな。この指輪が魔の力を纏っているのが美空、わかるか?』
魔の力って、この黒い霧のこと?
『そうじゃ』
それがあるとどうなるの? 危険なの?
『魔法と言われる力を使えるようになるぞい』
それは、ファンタジーですね。すごいなあ。
『良いものではないぞい。確かに魔法を使えれば生活を楽にすることは出来るかもしれんが、魔法を使い続けるとな』
使い続けると?
『身も心も魔物へと変化してしまうのじゃよ。魔の力に常に晒されているだけでもな。あの熊の様に、ただ破壊するだけの存在になってしまうのじゃ』
「え、魔物に……」
それって、この店で売る予定のあの指輪とかを身に付けていたら、
『買っていった者は魔物になってしまうな』
ええっ! それって、超ヤバいじゃん! なんでそんな物売ってんの?
「ミソラさん? 魔物ですか? ああ、そういえばあの時の。あなたへの……お礼を何か考えなくてはいけませんね」
ちらり、とシオンを見て言った。
ああ……ですよね。娘をヤバくしちゃったかも知れないやつにお礼なんて、したくないですよね。
「……お礼は別に、いいですよ」
「……ですが」
ちらり、とシオンを見る。
「? どうかしました?」
シオンは何もわかっていない笑みをかえす。
「あれは、もしかすると私のせいかも知れないんで、お礼は」
「……しかし、こちらは命を助けてもらっているので」
そのあとも、父親と私のお礼をするいらない、は続き、妥協案として、彼達が私に命を救ってくれたことに対するお礼を、私がシオンをヤバい人にしてしまったことに対するお詫びをする、ということで落ち着いた。
シオンが口を開いた。
「ミソラさん! ここに泊まっていきますよね?」
え? そういえば、泊まるとかそういう事は全く考えてなかった。
「う、うん? いいの?」
「いいですよ。私達親子の命の恩人なんですから」
シオンの父親もそう言った。
「あ、ありがとう、ございます」
「いいですって。二階にある部屋を使って下さい」
「は、はい」
「ミソラさん、こっちです。ついてきて下さい」
シオンに連れられ、階段を上がって、部屋に入った。
「何か用があったら呼んで下さいね」
シオンはそう言って一階に降りていった。
部屋には窓があり、外が見えた。
外は大分真っ暗になっていたが、部屋の中は明るかった。天井には電球の様なものがついていたが、黒っぽい霧のような物を纏っていた。魔の力関係だろうな。
部屋にベッドがあったので、その上に寝転がった。
はあー。この一日でなんか色んな事があった。
神とか魔物とかいるし、魔法が在るらしいし。
なんか、とても疲れたな。
布団が温まって、まぶたが重くなってきた。
この、寝るときのぼやーっとした幸せな感じは、どこでも一緒なんだなぁ……。
…………。