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1.神と対話する

 気が付いたら、真っ白な空間に浮かんでいた。

 上も下も右も左も、わからない。

 こう、ふわふわ~って感じに浮かんでいた。

 えっと、何が起きたんだ?

 確か、私の体が光って……飛んでいって……。

 さっき起きたことを整理しよう、と思ったその時、目の前に人っぽい影が現れた。

 その影はこう言った。

『美空よ。先程はワシの呼びかけに応えてくれて、本当にありがとう』

 聞こえたのは、今朝から度々私に語りかけていた奇妙な声。

 ……というか、いつ私が呼びかけに応えたって? 私ずっとあなたを無視していましたよね? なんで私の名前知ってるの?

 そんな気持ちを込めて、人影をにらむ。

『む? 名前なら散々呼ばれていたではないか。空に近いところに来てほしいとワシが言ったから、来てくれたのじゃろう? 屋上とやらに』

「いや、あれは春樹が屋上に来いって言ったから行っただけですし。あなたは全く関係無いんですけど」

『……そ、そうか。それはすまないことをした』

 戸惑った様子のその影は私に謝罪をした。つまり、誤解は解けたってこと?

 「そうですよ。分かったら私を元のところに返して下さい。突然私がいなくなって、春樹もビックリしていると思います」

 これで万事解決。帰れる! と、思ったが、

『そう言われてもじゃ……。もう連れてきてしまったし……返すのにも力を使うから……』

「つまり、疲れるし面倒くさいからやりたくない、と?」

 なにそれ。いつも穏やかな私でもイラッとするんですけど。

『ま、まて。それは誤解じゃ! ちゃんと説明するから!』

 そう言うと影は語り出した。

 なんでも、影さんは私のいたところではない、どっか別の世界で神様をしていたらしい。そこには自分を讃える宗教があり、その教えに人々が従って生活することによって、神様はかなり強大な力を保っていたそうだ。

『じゃが、ある日のことじゃ』

 いつもの様に世界に干渉しようとしたら、できなくなっていた。

 知らないうちにその世界の人間達が、自分が作った教えとは違う何か別のものに従う様になっていたのだ。

 そして、人々が正しい教えを守らないことによって、世界のバランスは崩れ始めた。そのせいで、魔物と呼ばれる破壊の化身が世界中に現れ、世界を壊しつくそうとしている。

 しかし、自分にはもう世界に干渉する力はほとんど無い。

 どうしたものか、神様は考えた。

 そして、出た結論は、

『別の世界の者に頼んで、正しい教えを広めて貰おう、ということなのじゃよ。どうだろう、この役目を引き受けてもらえないだろうか?』

「……」

 とても、壮大な話だった。

 正しい教えを広めて欲しい?

 世界中に? 

 私が?

「神さん、私の様な唯の女子高生にそのようなことを頼むのは、間違っていると思いますよ? 私には無理です」

『神さん……? いや、しかし、助言は出せるだけ出してやるし、ワシの力だって少し分けてやることが出来る。だから、きっとワシとお主なら出来るから』

「ですが私は、……っ」

『すまないが、ワシも困っておるのじゃ。大丈夫じゃ、全てが終わったその時は、元のところに返してやるから』

「え?」

 目の前にいた人影は形を失い、光の粒子となって私を包んだ。そして、

『どうか、この世界を救ってくれ』

 そう聞こえた後、私を包んでいた光が弾けて、

 トサッ

 っとどこかに落ちた。湿った空気が肌にまとわりつく。どこだ、ここ?

 顔をあげると、そこには私と同じくらいの年に見える少女が、目を見開いて私を見ていた。そして、私の後ろには、

「グルルルル………」

 見たことのない、巨大な熊のような、体の所々に鱗がついた何かがいた。

 え、何? 私ここで死ぬの……?

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