1-4
30分も歩き回ると、手に持ちきれないほどの食べ物が手に入った。
何しろ今日は人々のテンションが高い。
呼び止められては薦められ、その笑顔に断るのが痛くて買ってしまう悪循環。
「ちょっと休もうよ。これ以上持てないよ。」
ミラが言った。
ミラだけじゃなく、俺らだってもう手のキャパシティに余裕がない。
広場を抜け、柵の外にあるベンチに腰かけた。
直に置けるもの―――紙に包まれていたり簡単なパックに入っていたりするもの―――を置いて、まずは置けないものを食べていくことにした。
「しかし美味いな、これ。」
カトラスのところで売っていた焼きとうもろこしの残りをかじって言った。
「たりめーだろ。昨日か一昨日獲ったやつしか使ってねえんだ。」
カトラスが笑いながら言った。
「ちょっと冷めちゃったのが残念。」
ミラが言いながらとうもろこしは完食し、今度はフランクフルトを食べ始めた。
「それにしても今日はみんなホントにご機嫌だよね。」
「まぁな。特に元々外にいた人なんか、久々の祭りだから尚更気合入ってるんじゃねえの?」
「俺ら外に出た事ないから祭りが何なのかも知らなかったしな。」
「何を隠そう、親父がウザイくらい張り切ってたんだよ。」
「楽しそうだったね、カトラスのお父さん。」
「はは、まぁな。」
こんな調子で、3人で他愛もないことを話し通した。
学校でも休み時間が長くないから、こんなに長時間話したのは2週間前くらいに2人がウチに遊びに来た時以来だ。
と思っていたら、そろそろ食い物が尽きてきた。
時間を忘れるとは恐ろしい。
「じゃあまた見て回るか。」
「うん!」
「まだまだ見てない屋台あるしな。」
ゴミは設置されたゴミ箱に捨て、3人でまた会場に入ろうとした時だ。
「ねぇ、アレ。」
ミラが神妙な顔で遠くを指差す。
「ん?」
見ると、遠くからこっちに向かって歩いてくる群衆がいる。
手に手に旗や拡声器を持っている。
「アイツら…、まさか……」
カトラスが嫌な予感を表情に出して言う。
無論、俺だって同じ表情をしていたのだろう。
―――レジスタンスが、こんな日にまで…。