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ソフホーズ  作者: 尸音
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第1章:記念祭

グロテスクな表現が含まれますので、苦手な方は読むのをお控えください。

      挿絵(By みてみん)



今日も空が青い。




窓辺で座って頬杖をつき、外を眺めていると、日差しが妙に暖かく感じられる。


などと詩人めいたことを考えていると暑くてしょうがなくなってきた。




季節は秋。


外に出れば乾いた風が時に寒いくらいに吹き付けるのだが、屋内は風が遮断されて太陽の熱気だけになる。



今日も学校に着くのが早すぎた。


教室には4~5人しかいない。


各々読書やら居眠りやら、静かに過ごしている。




…と、自己紹介が遅れた。



俺はクイル。



ソフホーズ第7地区第3学校、第3学年。つまり、今年卒業。


前述の通り、履修内容が少ないから学校は3年制である。


ソフホーズ外の学校は6年制、3年制と2つの学校を卒業しなければならないというから大変だ。



ま、外に出たことがない俺にしてみれば、中の学校でも十分大変である。


それがキツいかどうか、相対的経験が無ければ唯一の経験が最大の苦難となるのだ。






「おっはよ~!」


ボーっとしてたらいきなり後ろから頭を叩かれた。



こんなガキめいたことをやるヤツは決まってる。



「ミラ、いきなり叩くのはやめろって何回言や分かる?」


俺は本心を表情に出しながら振り向いた。



「じゃあ明日から蹴っ飛ばす事にするwww」


朝っぱらからイヤにテンションの高いこの女はミラ。


まぁコイツからこのテンションをとったら残るものは何もない。



「あれ、カトラスは?」


ミラがキョロキョロしながら聞いて来た。


「まだ来てねぇよ。珍しくな。」



と言った途端。



「お~す、クイル、ミラ。」


カトラスが教室に入ってきた。いつも俺と同じか、少し早めくらいに来ているのに今日はどうしたんだろう。


「あ、カトラス、おっは~♪」


ミラがパッと笑顔になって言った。


「オス。」


俺も左手を少し挙げて軽い挨拶。



「今日はどうしてこんな遅いの? 傘が襲い掛かってきたの?」


ミラがいつも通りの意味無しボケをかます。


「何言ってんだお前。今度の記念祭の準備があっただけだ。」


カトラスが苦笑しながら言った。



記念祭とは、ソフホーズの建設によって国の食糧供給の安定がほぼ確実なものとなったため、それを祝うためのささやかな祭りだ。


各地区で、それぞれの家が出店を出し、その家で獲れた作物なんかでちょっとした屋台料理を出す。


初めてのことなのでソフホーズ中が週末に向けて浮かれ切って準備しているという事だ。



「ああ、なるほどね~。ウチは何にもしないから気楽で良いや♪」


「ウチも何にも出さないな、そういえば。カトラスん家は何出すんだ?」


「焼きとうもろこしだとよ。味気ねえけど、楽だからな。」


「じゃあ絶対行かなきゃね!」


ミラが言うと、カトラスがまた苦笑を漏らし、「絶対来んな。」と軽口を叩いた。




そこで担任教師が入ってきた。


気付くと、もうクラスのメンバーは全員集まっている。


ミラとカトラスは慌てて席に着いた。




今日も平和だ。



怖いくらいに。




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