アル・フィーネ
「くっ・・・・あっ・・・・」
秋人の全身に斧や剣が大量に刺さっていった。しかし、秋人は気力で意識を保たせ、倒れるのを抑える。
「ほう・・・まだ動けたのか秋人よ」
冬夜は秋人に感心していた。
「ああ・・・まあな。幼馴染のピンチだしな、無理やり体を動かした・・・うっ・・」
秋人は一通り言い終えたところで体がふらついた。
「ふっ・・・しかし、お前に何ができる?能力も使えない、立っているのもやっとの状態だというのに」
冬夜が呆れ気味にそんなことを言う。
「安心しろ、冬夜。このふらついた体を無理やりにでも動かして、お前の攻撃も避けて、お前の腹を一発殴ることくらいできる」
それを冬夜に告げた秋人は体中に刺さった武器を抜く。
「はっはっは、何を言うかと思えば面白いことを言ってくれる。いいだろう。ならば俺の攻撃を避けて俺を殴って見るんだな」
秋人の言葉に思わず笑った冬夜。そして、武器の大群を召喚した。
「行くぞ、秋人。死ぬ準備は出来たか?」
「いいや、そんなものは必要ない。俺はまだ死なないからな」
冬夜の言葉に秋人は答える。秋人の答えを鼻で笑い、召喚した武器をすべて秋人に向かって飛ばした。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
冬夜が武器を飛ばすと同時に秋人は走り出す。秋人は茜と冬夜が戦っている間、冬夜の能力の弱点を探っていた。そして、見つけた弱点。それは冬夜が武器を放つ時、武器と武器の間が一定間隔で
あいており、武器は皆一定の速さで飛んでいること。つまりタイミングさえつかめれば避けるのはたやすいということだ。
「な、なに・・・まさか本当に避けているだと・・・・」
冬夜は秋人が冬夜のの飛ばした武器を避けている光景を見て驚いていた。
「うおおおおおおおおおおおおおお」
秋人は武器の大群を完璧に避け、冬夜の目の前まで近づいて腹を殴る。
「・・・・・・・・っ」
秋人は殴る時に再び不思議な力を感じていた。最初に感じた時よりもさらに強い力を。そして、その不思議な力に身を任せて拳を振るった。
「あがっ・・・・」
冬夜は秋人が最初に殴った時よりも遥か遠くへ、秋人の視界からみえなくなるくらい飛んでいった。
「くっ・・・・」
秋人はふらついて膝をつく。秋人が安心したのもつかの間秋人に向かって武器が飛んできた。
「はっ・・・・・」
秋人は横にそれを転がることで避けて立ち上がる。
「うーむ・・・あたらなかったか・・」
秋人の目に腹を抱えながら大量の武器を召喚しながら秋人に近づいていく冬夜の姿が見えた。
「はっはっは、さっきはよくもやってくれたじゃないか。だが、そろそろ本格的に終わりにせねばな!」
冬夜はさらに多くの武器を召喚し、秋人に飛ばす。秋人もそれにあわせて走ろうとする。しかし・・
「うっ・・・・・あっ・・・」
心臓を圧迫する謎の力が秋人を襲った。早くなる鼓動、呼吸もままならないくらい息苦しくなった。それによって動くことができなかった秋人は大量の武器が体中に刺さってしまった。
「ああああああああああああああああああああああああ」
息苦しさから解放された秋人は全身からくる痛みに思わず悲鳴をあげた。
「痛いか・・・・・でも、安心しろ、秋人よ。次の攻撃があたれば確実にお前は天国へ行けるだろう。出会ってから11年、いままで楽しかったぞ、秋人。お前と親友であれたことを光栄に思う。さよならだ、秋人」
冬夜は目に涙を貯めながら大量の武器を秋人に飛ばす。
「く、くそ・・・・・」
秋人はもう足を無理矢理動かすことすらできなかった。秋人には冬夜の飛ばした武器がいつもよりかなりゆっくり動いているように見えた。武器が迫る度に恐怖が秋人を襲う。そして再び秋人を襲う心臓を圧迫する謎の力。その力は秋人が冬夜を殴る時に感じていた力と似ていた。力はどんどん大きくなっていく。
「ア・・・・アキ・・・」
秋人には自分を心配する茜の声が聞こえたがそれに言葉を返すことができなかった。今度は頭痛もしてきた。頭が痛い、息苦しいという感覚で秋人は頭がいっぱいだった。
「っ・・・・」
秋人の頭にいくつかの呪文のような言葉が入ってくる。秋人はそれの言葉の意味を考えることなく、その言葉がこの危機を救う言葉であるという期待を込めて、自分の人生をかけて、右腕をを高く上げてその言葉をただ唱えた。
「魔法召喚、発動、戻される世界」
秋人の右手に魔法陣が召喚され、奇跡が起きた。