プロローグ
一匹のこげ茶のとんがり帽子を被ったスライムが、草原に佇んでいた。その姿は、某RPGのマスコットに帽子を被せたような姿である。
彼の名前は、プルプル。もとは、現代の日本で高校生をしていた男の子だった。彼はとある事情でスライムとなって、剣と魔法の世界に転生する。この物語は、この転生した男子高校生もとい、スライムの物語である。それでは、転生するまでを彼の回想から少し語っておきたい。
◆ プルプルの回想 ◆
俺が高校に入ったころ、剣と魔法の異世界にある大陸をテーマにしたネットゲーム、「カオティック」がサービスを開始した。、光と闇の女神の陣営に分かれて大陸を制覇する事をコンセプトにした中世風RPG。
代表的なところで光の神の加護を受けし、人間にエルフ。そして、多様な姿形をした闇の女神に加護を受けし魔族たち。
そして俺は、闇の女神の加護を受けし種族の1つ、スライムに目が留まった。創生の神話では、闇の女神が最後に生み出した種族がスライムで、女神の力の残りカスがら生まれたといわれ、このゲームでも最弱種族。様々なネトゲをやってはいたが、代わり映えのしない設定に飽き飽きしていた。そんな時、カオティックのゲームキャラの種族にスライムという響きを発見して、新しい何かを感じてひかれた。
選んだスライムの初期ステータスは、すべてにわたり最低ランクのオール1。しかし、ステータスのボーナスが種族最多の100P。ボーナスが最多だが、ステ振り上限があって、STRやVIT、DEFなどの上限が5と決まっている。
100Pという破格のボーナスがあるが、近接ではどこまで行っても紙な強さにしかなれないということだ。これは、ネタだろう・・
実質、街には戦闘に参加できずに露店放置キャラとしてスライムが犇めいていた。
「ふむ、どうしようか。近接はあきらめて魔法一辺倒にするか、生産職になろうか・・・。そこが問題だ。」
種族最多のステータスボーナス、どうせならば上限がない物に振りたい。しかし、魔法職ならINTとMNEに振らないといけない。生産ならDEXに一点振りだ。
「漢ならやっぱり一点振りでだよな。このゲームは生産でも経験値入るみたいだし・・」
ということで、俺はDEXに一点振りして生産職になったのであった。
◆そして3年の歳月がたった・・・◆
「それにしても、3年も良く続いたよな・・。我ながら飽きっぽいのにな。」
我ながら本当によく続いたと思うところだ。多分に製作が面白かったのかもしれない。
この”カオティック”というゲームには、最初からレシピというものが存在しない。自身で素材を組み合わせて、錬金するとアイテムができる寸法だ。
例えば、弓1つにして説明すると。
樫の木+草のツル= ショートボウ
樫の木+獣のヒゲ+ばね= ボウガン
竹+植物のツル= 和弓
と、素材によってできる物が違ってくる。後は、ランダムで完成時に特殊効果があったりする。
まあ、なんだかんだで自分のツボに嵌ったらしくこの3年間ひたすら製作三昧だったりする。
そして、これが結構大事なのだが、ゲームを初めて2年目の時に、自身の手で神装備が出来たのがモチベーションを支えてくれた。
その名も”賢者の帽子”だ。これは特に変哲もない革で出来た魔術師がかぶる、とんがり帽子で見た目は某フャンタジーの組み分け帽子なのだが、効果が凄かった。なんとステータスを2倍にする効果が付いたのだ。あとでWIKIで確認してみたのだが、特に乗ってなく、アイテム名もユニークアイテムを示す橙色になっていた。
それからは凄まじい勢いで、高性能な装備を作りだしては高値で売り。そして得たお金で、レア素材を買ってはレア装備のレシピ研究をし続けた。最初の1年は、お金もなくゴミクエストと生産の低レベルクエストをこなして、やってやっとこlevel10になるくらいだったのだが、賢者の帽子の御蔭でこのゲームでも廃人プレイヤーの仲間入りであるlevel100に残り2年間でなったのである。
そして今現在の俺のステータスは、下記の通りとなり、levelが1つ上がることに貰える1Pのボーナスを知能と精神力に振り、生産無双はもちろんのこと。非力な自分でも安全に敵を職滅できる結界魔法の無双になった。
名前:プルプル / 種族:スライム level 100
STR (攻撃力) : 2
VIT (体 力) : 2
DEF (防御力) : 2
INT (知 能) : 100(50)
MEN (精神力) : 100(50)
DEX (器用さ) : 200(100)
装備:賢者の帽子
固有スキル:念動力 (物を浮かせたり・引き寄せたりできる。スライムには手足がないため、日常生活に必要なスキルで、スライムは生まれながらに持っているスキル。)
スキル (Maxレベル): 錬金 (素材を組み合わせてアイテムを作り出す。) 結界魔法 (色んな効果を生み出す結界を作り出すことができる。)
そして念願の最高レベル、level100になった時に事は起きた。level100の限定クエストをやっているときに、異世界の女神とやらに遭遇したのである。
女神様が言うには、自分はこのゲームに似た世界の創造者で光の闇の女神の母という。そしてその世界が、光と闇の女神の喧嘩で壊滅寸前だからそれを止める為に、異世界に行ってくれと言うのだ。
もちろん、そんな荒唐無稽な話は信じられなかったし現実世界が大事だったから頷くつもりもなかった。
だが女神が言うには、俺の寿命はあと1週間しかないから第二人生楽しまないかってことで声を掛けてくれたらしい。最初は相手にしなかったが、1週間後に俺は餅を喉に詰まらせて死を確信する場面にあっってしまった。もうだめかと思った時に、もう一度女神の声が頭に聞こえてきて俺は一言。
「分った、俺を異世界に転生させてくれ。」と願って今に至るのだった。
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