時は流れる
「……あれからもう7年も経つんだねぇ。」
そう。時間というのは重いような軽いようなもので、流れていく。
小学生だった私も、高校2年生になっていた。
優しく声をかけてくれたお姉さんも25歳。今は一児のママさんだ。
「そうですね。早いん…ですかね。」
「…はぁ〜、柚ちゃんの片思いも7年目か。」
「7年は言い過ぎですよ。まぁ…長いですけど…。」
うん。長い。
いつまで続ければいいのか、もう分からないのだから。
「あんなののドコがいいのよ!?顔は良いかもしれんが性格が腐ってるわ。チャラいし、遊び人だし、子どもには好かれるけどいっつも女の子泣かせて!あのオタンコナス!ちゃらんぽらんよ!!」
お姉さんが死語まで使ってボロクソに罵っているのは、実の弟のことだ。
そして、私の好きな人。
「まぁ、柚ちゃんのこと好きだから応援するけど。根回しもするけど。」
「ありがとうございます…。でも根回しは大丈夫です。」
お姉さんは私の気持ちをずっと前から知っているから、気をきかせてくれたり約束を取り付けてくれたりするが、未だ期待に答えられていない。
それでも自分で区切りを付けたい。時間がかかっても…。
「……そろそろ行こっか。お駄賃はあたしが持つよ!」
マイナス思考に陥り、落ち込みかけた私に気付いたのか、お姉さんはそう言って立ち上がった。
「え…そ、そんな悪いです…!私も払います!!」
「いーのいーの。あたしもう社会人だし。結構お給料も貰ってるのよ?」
イタズラに笑うとお姉さんは、テーブルの上に置いてあったレシートを持って、さっさとお会計を済ませてしまった。
背も高くてスタイルもよくて、すごく大人っぽい美人さんなのにたまに見せる子どものような笑顔がチャーミングだ。
私の憧れる女性だ。
「あ、ありがとうございます!ご馳走様です。」
「ふふ。柚ちゃんカワイイ♪」
カ、カワイイ…!
私にそんなことを言ってくれるのはお姉さんぐらいだ。
なんとなく恥ずかしくて、顔が見えないように下を向いてしまう。
「せっかくカワイイお顔なんだから下向いたら勿体無いでしょ!さぁ、そのカワイイお顔に見合うカワイイ服を買いに行くわよ!!」
「へ…?あ!お、お姉さん……!」
そう言うとお姉さんは強引に私の腕を掴んで、ブランド服の着せ替え人形と化した。