第六話 追跡者との遭遇
町を歩く途中、魔力の流れに異常を感じた。
呼吸するように変化する空気。
振り返ると、黒衣の男――聖堂追跡者が、ゆっくりと近づいてくる。
狙いは明白だ。
恐怖も殺意もない。
ただ、世界の秩序を守るために、私を消す可能性を持つ存在。
町の人々に危害を与えさせないため、私は瞬間的に構造を把握する。
男の魔力。
攻撃魔法の成立条件。
結界の歪み。
弱点ではなく、すべて“修正可能な構造”として視える。
「ここで止める」
心の中で呟く。
言葉にする必要はない。
男が魔法陣を展開する。
直接攻撃型。
瞬間的に周囲の空間に圧力が走る。
私は動かない。
魔力も集めない。
ただ、歪みを変えるだけ。
攻撃が迫る瞬間、指先で触れるように魔法の構造を操作する。
噛み合わない部分を外し、余計な干渉を解除する。
攻撃は自らのループに巻き戻され、男の制御に収まった。
一瞬の静寂。
追跡者の目が僅かに揺れる。
その隙に、倒れていた少女――ミリア――を抱き上げる。
魔力を奪われ、体力も限界だ。
「…連れて行く」
男は再度攻撃を仕掛けようとするが、構造を変えられた空間では、成立しない。
殺さずに無力化。
効率的な安全確保。
町の住人は、何が起きたか理解できないまま、恐怖を感じる。
だが、混乱は最小限に収まった。
追跡者は、一度だけ振り返り、そして撤退する。
私を記録し、恐れる。
次は手段を変えるだろう。
私は、ミリアを抱きしめ、町を離れる。
この子を、守る。
そして、歪みを変える――ただそれだけ。




