第四話 学園離脱
朝の学園は、いつもより静かだった。
教室の窓から差し込む光は、昨日までと変わらない。
けれど、空気は違った。
私が異端として記録された日、世界は確実に変わった。
リーナが廊下の端で、こちらを見ている。
目が合った瞬間、わずかに眉を下げた。
あの子も、何かを察しているらしい。
私は、何も言わずに通り過ぎた。
学園長室に呼ばれた。
扉を開けると、正面には学園長と魔導庁の担当者。
表情は硬い。
私を止める気はないらしい。
「…休学扱いで、外の世界を見てもらう」
「条件は一つ」
「管理下に戻る意志を示さないこと」
頷く。
問題ない。
荷物をまとめ、学園を後にする。
振り返らない。
振り返る意味はない。
通学路を歩くと、街の雑踏が目に入った。
学園の秩序とは違う、生命の雑音。
ここから、世界の“歪み”を確認する旅が始まる。
最初の町まで、徒歩で半日。
途中、魔力循環の乱れた畑や水路を見る。
治癒魔法は働いているが、根本は放置されたまま。
静かに息をつき、手をかざす。
魔力の流れが見える。
矛盾と歪み、無駄な循環、壊れた構造。
全て、私の目の前にある。
(直すのではない。変えるだけ)
町に到着すると、小さな騒ぎがあった。
魔力を奪われた少女――ミリア――が倒れていた。
観察する。
逃げ惑う人々。
魔法の暴走。
混乱の中心で、私は立ち止まる。
ここからが、本当の始まりだ。




