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第二話 測定拒否

 模擬戦の翌日、私は別室に呼び出された。


 教室ではない。

 研究棟の最奥。

 窓のない、静かな部屋だった。


 壁には複数の観測装置。

 床には精密な魔法陣。

 昨日壊れたものより、明らかに新しい。


「座ってください」


 そう言った教官の声は、いつもより低かった。

 隣には見覚えのない大人がいる。

 魔導庁の腕章。


 なるほど。

 話が早い。


「再測定を行います」

「今回は正式な手続きです」


 私は椅子に腰掛け、周囲を見回した。


 装置の配置。

 魔法陣の構造。

 昨日のものを踏まえて、対策が施されている。


 ……でも。


(前提が同じ)


 根本は変わっていない。


「質問があります」


 教官が一瞬、眉を動かす。


「どうぞ」


「この測定は、何を確認するためのものですか」


 一拍、沈黙。


「あなたの魔力量と、適性です」


「それが分かったら、何が決まりますか」


 魔導庁の男が口を開いた。


「管理区分です」


 私は、納得した。


 測る理由は、知るためじゃない。

 分類するためだ。


「では、始めます」


 魔力を流すよう、促される。

 私は手を魔法陣の中心に置いた。


 ――違和感。


 昨日と同じ。

 いや、もっと露骨だ。


 測定装置は、私を“数値”に落とそうとしている。

 世界を単純化し、枠に収めるための構造。


(それは、無理だと思う)


 私は、手を引いた。


「……拒否します」


 空気が凍る。


「拒否、とは?」


 魔導庁の男の声が、わずかに硬くなる。


「この測定は、正確ではありません」

「前提が間違っています」


「それを判断するのは――」


「私です」


 自分でも驚くほど、静かな声だった。


 私は立ち上がる。


「この装置は、私を測れません」

「測れるように“変える”つもりもありません」


 教官が言葉を探している。

 魔導庁の男は、黙って私を見ていた。


 やがて、彼は短く息を吐く。


「……記録に残します」


 それだけ言って、端末を操作した。


 拒否。

 非協力。

 管理不能。


 たぶん、そんな言葉が並ぶのだろう。


 私は、少しだけ首をかしげる。


 なぜ、測れると思ったのか。

 なぜ、測れない可能性を想定しなかったのか。


 部屋を出るとき、背中に視線を感じた。


 それは恐れではない。

 観測でもない。


 ――警戒だ。


 その日、魔導庁の記録に

 私の項目が一つ、追加された。


 【要注意:測定拒否】


 世界は、私を理解する前に

 管理しようとするらしい。

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