第十五話 変わる世界
街道を進む途中、深い森の影に少女が倒れていた。
薄汚れた衣服、怯えた目。
魔力を奪われ、体は生気を失っている。
この状況を放置すれば、彼女の命も、町の未来も危うい。
ミリアがそっと手を握る。
「大丈夫…?」
私は微かに頷き、手をかざす。
魔力の流れを視る。
歪みは個体に集中している。
これを変えられれば、彼女は再び息を吹き返す。
(直すのではない。変える)
微細な魔力循環を調整し、体内に欠けた部分を補う。
瞬時にではない。ゆっくりと、確実に。
少女の呼吸が戻り、瞳に光が宿る。
彼女は私を見上げ、震える声で言った。
「……誰?」
名前はまだ必要ない。
私がするのは、壊れたものを変えることだけ。
戦わず、叫ばず、ただ変える。
遠く、聖堂の影が動く。
町や人を管理する存在が、また監視している。
しかし、直接的な干渉はない。
力で制するのではなく、状況を変える――
それが、私のやり方だ。
ミリアが小さく笑い、少女の手を握る。
初めての安心の笑顔。
世界の歪みを変えるのは、こうした小さな一歩の連続。
そして、次の課題は――
人そのものを変えること。
私は少女を抱き、街道を進む。
静かに、確実に、世界の歪みを変えながら.




