第十二話 対峙する秩序
町の入口で、魔力の異常が視界を覆った。
井戸の水は逆流し、街灯はちらつき、家々の結界は互いに干渉している。
小さな歪みではなく、大きな構造の崩れ。
放置すれば、この町全体が破綻する。
私が手をかざすと、魔力の流れが目に見える。
矛盾、干渉、無駄なループ。
全て、変えられる。
攻撃ではなく、制御。静かな無双。
背後で音がする。
黒衣の追跡者、複数。
今度は直接対面。
その目は冷たく、秩序の論理に従って行動する。
「あなたのやり方は、秩序に反する」
一人が声を上げる。
静かな怒り。
言葉だけで圧をかける。
「歪みを放置する方が、秩序に反する」
私は手を止めずに答える。
結界の噛み合わない部分を外し、水路の循環を変え、攻撃魔法の暴走を制御する。
言葉ではなく、行動で示す。
追跡者たちは一瞬立ち止まる。
攻撃を仕掛ける間もなく、彼らの魔法は無効化され、成立条件を変えられる。
殺さずに制御する――これが、私のやり方。
ミリアがそっと手を握る。
目はまだ恐怖と困惑で揺れている。
だが、私の意思は揺らがない。
追跡者は報告を残すために後退する。
戦闘ではない。
思想の衝突、価値観の対立。
この町の歪みを直すこと、それが最優先だ。
日が傾き、町が静かになるころ、変化は完了した。
町の人々はまだ気づかない。
それでも、世界は少しだけ安全になった。
私の中で、問いは一つ。
――壊れたものを変えることと、秩序を守ることは、どちらが未来をつくるのか。




