第十一話 影の圧力
夜道を歩く私たちの前に、突然の魔力の揺らぎが走った。
屋根の上、闇に溶けた黒衣の影。
聖堂追跡者が単独ではなく、数人でこちらを監視している。
攻撃ではない。圧力だ。
行動を制限するため、心理的に追い詰めるための存在。
ミリアは肩をすくめ、私の袖を握る。
怖いのだろう。
だが、守るのは私の役目。
手を握り返す。
私は静かに手をかざす。
魔力の流れを見極め、追跡者たちの結界の隙間を読み取る。
小さな干渉を逆手に取り、彼らの圧力を無効化する。
戦わず、制御する。
効率だけが判断基準だ。
ミリアがポツリとつぶやく。
「……私、どうしてここにいたんだろう」
背後の影も含め、世界は彼女の存在を監視している。
私は気づく。
魔力を奪われ、実験のように扱われた過去――
聖堂が直接関与したのか、あるいは別の組織か。
答えは今は不要だ。
必要なのは、目の前の歪みを変えること。
手をかざす。
微細な魔力循環の異常を修正する。
彼女の体内の魔力も、少しずつ安定していく。
追跡者たちは、再び撤退する。
報告が残るだろう。
だが、私を倒すことはできない。
直接戦闘ではなく、状況を変える――
それが、私のやり方。
夜風に吹かれ、ミリアは小さく息をつく。
私の胸の中で、少し安心している。
その姿を見て、私は考える。
――守るために、私は何をしているのか。
答えは単純だ。壊れたものを変えること。それだけで十分だ。




