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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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episode2

懐かしい夢を見た。両親を失くした時の夢。

あの後凛太朗さんは宣言通り二日後の退院の日に迎えに来てくれた。

そんな彼の後ろにはオレと同い年くらいの少年が偉そうに立っていた。


「ほら。コイツが俺の息子の叶弥だ。年は前にも話したが京司と同い年だ。叶弥、ふんぞり返ってないで挨拶しろ。」

「...五十嵐 叶弥。よろしく。」

「田河 京司です...よろしくお願いします。」


そうオレがあいさつをし返した途端、叶弥は顔をバッと上げニカッと笑いながら言葉を続けた。


「お前が今日からオレの舎弟になるんだよな!な!そうだろオヤジ!」

「先ずは友達から始めんか。何をまるで出会って速攻結婚を申し込むみてぇな世迷いごとを言ってやがる。」


凛太朗さんが叶弥の頭にゲンコツを入れながらそう言うと、彼は「痛ってぇ!」と声を上げながら、しかし嬉しそうな笑みを浮かべオレに話しかけてきた。


「まぁ、なんだ。同い年だし同じ家に住むことになるんだから仲良くしようぜ!」

「う、うん...」


叶弥と言う存在に戸惑いながら目を回していると、凛太朗さんが話しかけてきた。


「悪ぃなこんなクソガキで。あ、そうだ。遺産は全部お前が相続出来るようにしておいた。」


そう言う凛太朗さんは暗い笑みを浮かべながらこう続けた。


「お前の親戚連中がやたらと煩かったが...チョット"お願い"したら快く了承してくれたわ。」


オレはその"お願い"がどんなのだか怖くて聞くことが出来なかった。


「よし!じゃあ先ずは京司の家に行って必要なモンを持ってこよう。そんで"家"へと帰るぞ。」

「...はい。」


そうして荷物を持って病院を出ると...そこには黒塗りの立派なベンツが止めてあった。そしてそのベンツの前には何人かのスーツの男達が立っていた。


「お疲れ様です!オジキ!」

「お待ちしてました!」

「この坊主が例の子供ですかい?」


男達は次々と凛太朗さんへ話しかける。そんな男達をなだめて彼はオレに「スマンな、ウチの若衆が」と言った。そして車内へと誘われた。


「先ずは京司。お前の家に行くぞ。」

「あ、はい。分かりました。」

「今日運び込めなかった分はまた後日来ような。」

「はい。」


そう話していると横から叶弥が口を出してきた。


「オレも手伝う!そんでもって京司、明日からケンカの稽古をするぞ!将来はオレの右腕になってもらうんだからな!」


叶弥は目をランランとさせながらオレにそう告げた。


「ケンカ...ですか?」

「あぁ!五十嵐家の男として恥ずかしくない男に仕上げてやるよ!」

「おい、叶弥。京司はまだ病み上がりなんだから無理言うな。」

「えー。なんだよオヤジぃ。」

「京司。お前は暫く絶対安静な。その間に小学校の転入手続きもしておくから安心しな。」

「ありがとうございます。凛太朗さん。」


叶弥は少し機嫌を悪くしたのか、「せっかく子分ができたのにぃ」と頬を膨らませ静かになった。

そうこうしている内に車は慣れ親しんだ家の前へと着いた。


「さぁ、持ち出せるだけ持ち出しちまおう。」


凛太朗さんがそう言うとオレ達三人と若衆の何人かが家の中へ入っていく。

すると家の中から誰かの話し声が聞こえて来る。...その声の主は親戚の叔父や叔母であった。


「全く。あの子は田河血を継いで無いのだから遺産をくれてやる事はないのに...」

「仕方ないだろう。養子縁組までしてあるって言うんだから...」

「何処ぞの馬の骨とも分からん女の子供に田河の遺産を渡していいものか...」


そんなゲスな会話を聞いて、オレはここまで嫌われていたのかと涙を流した。


「おぅおぅ。親を失くしたばかりの子供に対して随分な言い草だな。」


堪らず凛太朗さんは親戚連中に声をかけた。

すると何人からか「ヒッ!」と言う小さな悲鳴が上がった。


「コイツの両親の遺産は田河の血に関わらず息子の京司の物だ。...次おかしな事ぬかしやがったら...わかるよな?」


凛太朗さんが親戚連中を相手にしている時、叶弥がオレの頭をわしゃわしゃとしながら、「泣くな!」と言ってきた。


「泣くな!男だろ!日本男児たる者、五十嵐組である者、簡単に泣くもんじゃない。強くあり続けるんだ!」


叶弥はオレにそう叱咤激励をすると俺の涙をぶっきらぼうに拭ってくれた。

そんな叶弥に対し、心がポカポカするのを感じる。


「ありがとう...叶弥...さん」

「"さん"なんて要らねぇ。"叶弥"で良いんだぞ、"京司"。」


こうしてオレと叶弥の間に新たな絆が生まれたのであった。

そうこうしている内に、凛太朗さんは親戚連中を黙らせ、「京司」とオレを呼んだ。

凛太朗さんの元へ行くと目の前には亡くなった両親の遺影が飾られていた。


「遺骨はもうコイツらが勝手に収骨しちまったみたいで悪ぃが、遺影にだけでも手を合わせてやんな。」


そう言うとオレを遺影の前へと座らせ、手を合わせる様に促した。オレは遺影の二人の笑顔を見て泣きそうになるのをグッと堪えながら手を合わせ目を瞑り、二人が天国へ行けるよう祈った。


「さぁ、荷物を運び出すかねぇ。」


凛太朗さんのその言葉をかわきりにオレと叶弥はもちろん、若衆の人達も動き出すのであった。

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