episode10
大森の車が組へとたどり着くと、再び叶弥に抱きかかえられながら屋敷の中へと入って行く。組の若衆達がオレ達の姿を見ると「京司さん!」「若!京司さんをこんな目にあわせたヤツらは?!」と口々に声を上げた。叶弥の歩みが止まるのを感じ、視線を上げるとそこには凛太朗さんが立っていた。
「...凛...太朗...さん?」
「京司...大丈夫か?医者、呼んであっから良く診てもらえ?」
凛太朗さんは珍しく弱々しい声をしていた。その声を聞きオレは「...スミ、マセン...」と言うと凛太朗さんは急に涙を流し始め、「お前に何かあったらお前の両親に顔向け出来ねぇだろぉが...」と優しく声をかけてきた。
「オヤジ、気持ちは分かるが京を早く医者に診せねぇと...」
「...そうだな。叶弥、傍についていてやれ。」
「もちろん。」
「京司も...よく休めよ。」
「ハ...イ...」
叶弥はそのままオレの部屋へと向かい、部屋の中に入るとオレをベッドに横たえた。すると、ドアがノックされ、医者が中へと入ってくる。そして簡単に診察してもらうと、解薬剤を出され医者は部屋の外へと出ていった。
叶弥は受け取った解薬剤と水を手にすると、オレの身体を起こしオレを支えながら薬と水を渡してくる。しかし、オレはそれを上手く受け取る事が出来ない。そんな様子を見て叶弥は再びオレをベッドへ横たわせると、自分の口に薬と水を含み、オレへと口づけ薬を流し込んだ。
「んぅ...ん...」
「京。ツラいだろーけど、少し眠れ。安心しろ。どこにも行かねぇから。」
叶弥はそう言うとオレの手を握った。その手の温かさにオレはどこか安堵して、目を瞑る。
「おやすみ、京司。」
...どれくらいの時間が経ったのだろうか。オレは目を覚ますと身体を起こした。そして身体の様子を確認する。薬のお陰か、身体のイヤな感覚は無くなっており、オレはホッと胸を撫で下ろす。そして叶弥へと目をやると、オレの手を握ったまま眠っていた。
「叶弥...叶弥!」
「ん...!京?!」
「うん。おはよう。」
「おはようってお前...身体はもう大丈夫なんか?!」
「あぁ、もう何ともない。...ありがとう、叶弥。」
「!...京司!!」
叶弥はオレの名を呼ぶと力強く抱き締めてきた。
「良かった...!!ホントに...!!」
「もうこんな事はしないで、オレを頼ってくれ...!!」
「でも...もうオレ、叶弥の側にいる資格なんて...」
オレがそう言うと叶弥はオレの肩を強く掴み「資格無いとか言うな!」と涙を流しながら訴えてきた。
「京がいなきゃ意味ねぇんだよ!オレの側から離れるなんて絶対許さねぇからな!!」
「...オレなんかでいいのか...?」
「"なんか"じゃねぇ!お前じゃなきゃイヤなんだ!!」
「...叶弥...!!」
オレは堪らなくなって叶弥に抱きついた。すると叶弥は驚いた様な顔をした後、顔を真っ赤に染め上げた。
「け、京...」
「ブハッ!なんて顔してんだよ。...涙なんてらしくねぇよ。」
「う、うるせぇ!!」
「なんか昔の叶弥みたいだったぞ?ガキ大将?」
「...コノヤロー...あ。」
「?」
「オーイ!テメェら!京が起きたぞー!!」
叶弥が廊下に向かってそう叫ぶと、廊下からドタバタと騒がしい音がし、部屋ドアが開き、大勢の若衆が雪崩込んで来た。皆口々に「無事で良かった」だの「無茶しないでください」だの「京司さんに何かあったらオレらは...」と声をかけてきた。
「皆、ありがとう。心配かけて悪かった。もう大丈夫だから。」
そう皆に笑いかけると、皆が皆、顔を真っ赤にするのであった。...叶弥まで赤くなっていたのはナゾだった。




