第6回路 鍛治職人と魔石商
紹介されて次の休みの日にそのお店に行ってみた
【ゴメル武具店】
ジャーン♫
ドラの音?
扉の間に少し隙間の空いた魔導線が配線されているのが見えた
ここを通ると人の体を導体に音が鳴る仕組みだ
「ごめんくださーい」
短剣や長剣など所狭しと並んでいる
普通の武器屋のようだ
「なんじゃー」
工房だろうか、奥の方から金物を打つ音が止まり
ドワーフらしき職人が現れた
「リードさんに紹介されて」
「おぉ、聞いておるぞ。で要件はなんじゃ?」
「コレなんですが」
柄の部分が擦り切れて使い込んであるニッパーを見せた
「なんじゃ?これ?ハサミとは違うしなー」
「魔導巧士の見習いなんですが、こんな感じで歯の部分に魔導ナイフの歯を移植したりできませんか?」
ふーーーん、と言いながら色んな角度からニッパーを睨みつける
「面白そうじゃな、やってみよう、明日また来てくれるか?」
「仕事終わりに伺います!」
Eランクの依頼をいくつかこなし、宿に戻った。
【宿屋イタール】
「おかえり、デンちゃん。今日はご飯食べる?」
彼女はここの看板娘、マーヤ。厨房にいるのは彼女の父親、ウリムだ。
「お願いします!」
そんな感じで食事はいるもいらないも、その時の気分で全く問題ないのは助かる
ーー次の日ーー
【ゴメル武具店】
ジャーン♫
「すいませーん」
「おぉ、お前さんか!出来たぞ、ちょっと試してみな」
天井からぶら下がっている魔導線を掴んで切ってみた
パチン
コレはすごい!まさにニッパーだ!
「どうじゃ?」
「めちゃくちゃイメージ通りです!」
「コレは試作段階だからお金はいいぞ、ただ耐久性など改善点があったら色々報告してくれ、ソイツの型はとらせてもらったよ」
「コレを作れるんですか?」
「色んな金属で試してみて一番いいのを商品にする
ゴメル印の魔導巧具としてな!」
なんか工具は頼めば作ってくれそうだ
「よろしくお願いします!」
ーーある日の仕事終わりーー
リードさんにアトリエと呼ばれるところに案内された
お世辞にもアートとは言えないガラクタがいっぱいの部屋だ
ハリガネのように普通の人には見えない魔導線で動物の形を作っていたり、拡声器みたいなのもあった
「コレって声を大きく出来たりします?」
「あぁ、そうだな。
ただ使うところがねぇんだ、大きい声を出さなくても魔法で直接声を届けられるからな。魔力によっては町内放送も可能だぞ」
なるほど。ん?拡声器があるってことは磁石はこの世界にもあるのか?
「磁石ってあります?」
「そりゃあるよ、当然コンパスで方角を知ることができるんだから」
(ってことはモーターを作れるんじゃないか!
このヘンテコ発明家と俺の知識を融合させれば!!)
紙に簡単な絵を描いて説明した
できるかできないかやってみないとわからないけど
と言うことだったが2日後の仕事終わりにアトリエに来るように言われた
ーー2日後ーー
「試作1号、名付けて魔導線銃!
このダイヤルで線の太さを決めて魔力を流しつつトリガーを引くと圧縮された魔力、魔導線が銃口から魔導器具に向かって線が飛んでいくコレで配線がだいぶ楽になるし、コツがなくても線の太さを一定にすることができる
「コレはいいですね、自分みたいな素人でも魔導配線ができます!」
ただ俺としての問題は魔力不足
打ちまくっていたら配線はすぐに終わるけど
魔力が足りなくて今日は打ち止めってことに。
なんかないかなぁ。。
「魔石を腰袋に入れて銃と繋げとけはいいんじゃないか?」
おぉ、それだ!
「魔石って加工出来ます?」
「魔石彫刻家がいるんだから削ったりもできるんじゃないか」
ということはバッテリーみたいにでバッテリーセルを魔石で造作すればバッテリーパック、MPパックが作れるってことか!
とりあえず魔石屋に行ってみよう
(リードさんによるとこの辺りにお店があるらしいのだが)
【リアク・バイタン魔石店】
(ここかな)
カランカラン♫
店内は遮光カーテンで窓が覆われていてずいぶん薄暗いがお陰で魔石の大きさ、色がわかりやすくなっている
「いらっしゃいま…」
やる気のない低い声の持ち主
白いローブを見にまとった女性がココの店員だろう
「あのー魔石について聞きたいんですが」
「なにぃ?魔石についてだと!
魔石というのは自然界では魔鉱石といって…」
ネクラかと思われたその店員は魔石のウンチクを延々と語り出した
30分はたっただろうか
「…というわけだ。なにか他に知りたいことはあるか?質問もドシドシ受け付けるぞー」
ずいぶん楽しそうだ、鼻息も荒い
長ったらしい話を要約するとこうだ
魔石は大きさによって許容できる魔力量も変わるが
赤橙黄緑青藍紫の順て蓄えられている魔力量は多くなる
また、魔石は使い切ると崩れてしまう。家にある魔石炉の魔石は赤になると交換が必要とのこと。また、空魔石というのがあって使い切ってもまた魔力を流すと蓄えることができるらしい
つまりMPパックには空魔石を使って、赤になる頃に家にある魔石炉に繋いで蓄魔力する、まさにMPのバッテリーができる!
「空魔石をこんな感じで削ることはできますか?」
腰袋に入っていた51のビスと25のびすを並べてイメージする直方体を伝えた。
「加工に時間がかかりそうだから明日まで時間もらえるか?」
「お願いします」
店を出て冒険者ギルドに向かった
時間もあるから依頼を受けよう
荷受けと留守番の依頼か
よし、コレを受けよう!
「お疲れ様ーはい、報酬。
そう言えばデンちゃん、ランクDに上がったよ」
相変わらずタメ口で馴れ馴れしいが
こっちもタメ口で対応するようになってから
なんとなく近しい間柄にはなっていた
隙間時間に依頼をこなした甲斐があった
いよいよ冒険者ランクDか
魔物討伐にも行けるようになった
(うーん、しかし…
そもそも魔導巧士ってどうやって戦うんだ?
魔力があるんだから魔法は使えるのか?
あー、あのおしゃべり魔石屋に聞いてみるか
いらない雑学は聞き流そう。)
R7.8.20 加筆