第5回路 異世界照明交換
歩いて5分くらいだろうか
彼女はいるのか?とか家族構成とか他愛のない話をし
「なんかお前の腰道具、色々ぶら下がってんな」
興味津々のようだ
ほどなく一軒の家の前で立ち止まった
「住所によるとここだな
ごめんくださーい、エドガル魔導巧士店です」
「はーい」
「リビングの照明がつかないとのことで伺ったのですが」
メイドさんだろうか、メイド服を着た可愛らしい女の子が出てきた
「どうぞこちらへ」
中に入ると玄関は広くあまり物が置いてなくてスッキリした感じだ
奥に案内され
「ココなんです」
とリビングの照明を指差した
部屋の入り口にある四角い魔法陣が描かれたスイッチプレートっぽいところに触れて
「つかないなぁ。たぶん魔光石の寿命ですね」
(ん?これがスイッチ?ボタンらしきものは付いてないが。)
「ここに脚立お願いしていいか?」
照明の真下を指差した
「あ、はい」
置いた脚立の2段目を足で挟んだ
腰袋から何かの石の結晶を取り出して
慣れた手つきで照明の中のそれと取り替えた
「魔導チェックしてもらえる?」
(???)
「入り口のプレートに魔力流して!」
(あの魔法陣プレートに魔力を流す??)
「軽く触ってみな」
(触るだけ?)
プレートに触れた瞬間、スイッチプレートの魔法陣が赤く輝き、リビングが明るくなった
「ありがとうございます」
「経年劣化ですね。交換したのでまた当分持つと思います。」
そう言って小声で
「俺なんかはこれくらい離れていても…」
2mくらい離れてるだろうか
スッ
あかりが消えた、また
スッ
明かりが灯った
「子供は魔力が少ないからプレートに触れる必要があるが
魔力を使いこなせるようになったら離れていても
つけたり消したりできるようになる」
男が小声で続ける
「魔導プレートから照明まで繋がる光の線が見えるか?」
よく見てみるとスイッチから天井に向かって上がったあとまっすぐ照明まで伸びた細い光の線が見えた
「細い線みたいなのが見えます。」
「それを繋ぐのが魔導巧士の仕事さ」
なるほど転生前が電気工事士でこっちの世界で魔導巧士
なんか因果関係があるんだろうな
「それではこれで失礼いたします。また、何かございましたらお気軽にお申し付けください。」
「ありがとうございました」
2人は外に出てお店に向かって歩き始めた
「あのー今バイトとか募集してませんか?手元とかなんでもしますので!」
ここで色々学ばせてもらえれば今後の生活の基盤にもなる
「そうかーじゃ日当銀貨1枚!どうだ?」
「ありがとうございます、宜しくお願いします!」
俺は深々と頭を下げた
(こっちにきて、すぐに職につけるなんてツイてる!)
仕事も見つかったし、宿は当分イタールでお世話になることにした。
それから俺の魔導巧士としての修行が始まった
とは言っても電気工事の経験からすぐに容量は掴んだ
暇な時は冒険者ギルドで依頼をこなしながら
電気工事と違うのは一方通行でいいこと
小学校の理科の実験で覚えている人も多いと思うが
普通電気には+と-があって電池からでた電気が電球を通って-に戻ってくる。これが原理原則で全ての電気はそれで成り立っている
しかし、魔力は電気で言うところの+のみ。負荷まで到達したあと勝手にアースつまり地球に還っていくのだ。
他には戸建てやマンションでいうとこっちには分電盤がなく
代わりに魔石炉がある。
そこから魔力が家中に魔導線を通って行き渡る。
電気だと分電盤から出ていった非接地側から一筆書きで接地側に戻ってくる。
コレがうまくいってないと照明がつかなかったりショートしたりするのだ。
それを考えると魔導巧士は簡単だ。
とにかく繋ぎたいところまで線を繋ぐだけなのだから理屈は簡単。
壁とか障害物も魔導線は通り抜けるからホルソーで穴を開けたりする必要もない。
ただそこにちょうどいい線の太さを魔導巧士のスキルで作り出すのが難しい。
太すぎて長さが足りなかったり、
今度は細すぎて途中で切れてしまったり、
自分の魔力切れなんてことも
「経験を積めば魔力量も増えるしあとはコツだな」
あとは専門の魔導工具
魔導線は魔導巧士にしか見えないから、
線がヨレヨレになっていてもつながっていれば魔力は流れるから心配ない
それにスキルを持ってないと線にも触れられないのだ。
見えないから触れられない、まぁ当然のことか。
ただ古い家とかになると昔のいらない線がいっぱいあって
施行の邪魔になることも。
線を切るのはドワーフが作った魔導ナイフのみ。
ただ使い勝手が悪くキレ味がよくないから、だいたいみんな切った後の線は放置している。
どんなに綺麗にリフォームされていても線がいっぱいぶら下がっていたりする。線の両端を切ってあげれば魔素となって空気中に消えていくが、そんなのどうせ見えないからと職人はほったらかしだ
(ニッパーがあればなぁ…そうだ!なければ作ればいい)
「あのー腕のいい鍛冶屋さん、リードさんのお知り合いでいませんか?」
「いつも魔導ナイフ作ってくれている職人ならいる。紹介するぞ」
R7.8.20