第3回路 はじめのイッポ
【見覚えのない世界】
ゆっくり目を開けると大きな木の下に横たわっていた
起き上がり、木を頼りに立ち上がる
小高い丘になっていて、街並みを見下ろした
城下町、連なる軒並み、キレイに並べられた石畳
その先には大きな宮殿も確認できる
露店が連なり人が行き交っている
よくある異世界と呼ばれる景色がそこに広がっていた
(とりあえず街に行ってみるか)
不安と好奇心に後押しされるように
街に向かって歩き出した
【見知らぬ街】
街に入りメイン通りを歩く
丘から見た時はみんな人に見えたのだが
それは随分様子が違う
人型の…様々な種族
文字は見たことはないが認識できる
『案内所』
街中を案内してくれるのだろうが
今は自分がどこにいてどこに向かえばいいのか
案内して欲しい
「すいません」
「なにかお困りですニャ?」
あーーネコ科の獣人ね。
たわわに実った胸元にはキラリと光る赤いハート型のネックレス。襟付きの白いシャツの3番目のボタンは今にも弾け飛びそうだ。
黒いタイトスカートはかなり短く尻尾は縫いつけたようにひょっこり顔を出している。
舐めるように視線が上から下まで行った
「どうしたニャン?」
ハッとして声の主に視線を戻す。その可愛らしい表情と身体とのギャップに…
《ピーポーピーポー》
(なんだコレ!なんの音だー?)
股間の膨らみがおさまると音が止んだ
フーー
落ち着きを取り戻して
「あのーー遠くから来て全く何が何だかわからなくて…」
引かれるかと思ってはいるんだけど、状況を把握するには…
「なるほどニャー。ココは城下町エドガルニャ。なーんでも揃ってるニャ」
「自分の名前くらいはわかるんですが、身元を証明するものもなくて」
「わかりましニャ。とりあえず冒険者ギルドに案内するニャ。
冒険者として登録すれば取り急ぎ身分証は発行されるニャ。ついてくるニャ」
多種多様の種族がいるから、とりあえず冒険者になっとけば身元が明かせるっていうことね
「ついたニャ。ココで冒険者登録をして色々聞くといいニャ。また、何か困ったことがあったら案内所に来るニャ」
「ありがと…ニャ」
聞き間違いか?みたいな顔をしてそのネコちゃんは戻って行った
(かわいかったなーー名前くらい聞いとけばよかった。
それよりまず登録だな)
【冒険者ギルド】
「すいませーん」
「はいはーい」
冒険者ギルドのエンブレムだろうか
茶色に黄色いロゴの膝上くらいまでの
暖簾の奥から声がしたのも束の間
すごい勢いでカウンターに突っ込んできた
ガッシャーン!
どうやら随分あわてんぼうのようだ
「大丈夫ですか?」
ハッキリ言ってその勢いの良さはちょっと引く
「大丈夫、大丈夫。で、なんのよう」
金髪でツインテールの小柄な女の子
ピンクのワンピースを着ている
ってタメ口かいっ!
「…冒険者登録をしたくて」
「いいよ、じゃこの前に立って」
あーコイツやっぱりタメ口だ
どうみても俺の方が年上だよな。
ダメだ、ダメだ、ココは異世界。
自分の常識が通用しない
「今日はBランクの依頼が全然ないんだねー」
仕事依頼掲示板から冒険者らしき人が声を上げた
「そうなんですよ、でも明日は魔物討伐系の依頼が来てたと思いますよ」
!!!
「じゃ、また明日来るわ」
あれっ今敬語使ったよね。
コイツ人見て使い分けてやがる。
「はーい、じゃこの透明の透き通った丸い玉、これ水晶って呼んでるんだけどわかる?」
「それくらいはわかります!!」
(なんか馬鹿にされてるなぁ)
「覗き込んでー…名前は?」
「ウルシバラ デンリュウ」
ちょっとイライラしながら覗き込む
水晶越しの女の子の小さな胸元。
シャツから少し覗けそうな…
《ピーポーピーポー》
まただー
「あっれー、どうしたのかな??
平常心じゃないとステータス表示が乱れるので
落ち着いてー」
大きく深呼吸して再び覗き込んだ
「まぁ、普通だね、一般的な男性ステータス。
ん??珍しい職業、魔導巧士」
「魔導巧士?」
「ほら、あそこにぶら下がってんじゃん、照明」
「あれ?」
「そう、あんなのを家とかお店につけたりすんの」
「あれって電気じゃないの?!」
「デンキ?なにそれ?あれは魔法、魔力で光ってんの。
そんなことも知らないの?ずいぶん田舎から来たんだね」
(なんかやっぱりバカにされてる)
「珍しい職業だけどそんなにメジャーな仕事じゃないから
冒険者として稼いだ方がいいと思うよ」
「そうなんだ…」
「なんか変わった服着てるね。職人さん?っていうかアンタさっきからタメ口だよね?」
(俺がお前に言いたいわっ!!
やっぱり長袖のシャツにジョガーパンツ、腰道具って言うのはこっちでは珍しいんだろうな。)
「まぁ、田舎もんだから許してあげるけど」
「…すいません」
「で、冒険者ランクの話をすると
最下級のEランクスタート。自分のランクの仕事を10回こなせば1ランク上がる。不定期だけどランク昇格試験に合格しても上がる。
パーティを組んで上位ランクの仕事をこなしても自分のランクの1回こなしたとみなされる。稀に仕事の貢献度によっては2回分とか3回分になることもある。なにか他に聞きたいことは?」
「お名前教えていただけま…」
「誰が教えるかいっ!おとといきやがれっ!」
被せてきやがった。
「身分証になるプレートできたら声かけるから
適当に掲示板とか見ておきなー」
カウンター右横木目調の壁にAランクから順に依頼が並んでいる
(E、E、E…
あった!なになに…
買い物代行に、引越しの手伝い、話し相手募集…
便利屋みたいだな
まぁ地道にやるしかないか)
「デンリュウさーん、できたよー」
カウンターに向かう
「はい、コレ」
「ありがとうございます」
「あーそうそう、あとコレも」
麻の小袋を渡された
「お金?…くれるの?払うんじゃなくて?」
「この国を治めている国王から新規冒険者登録者に
補助金が出てるのよ。向こう3ヶ月は何もしなくても暮らせるだけのお金よ。そのせいで冒険なんてしないのに不正受給するやつもいるから、反対派も大勢いるけどね」
(何はともあれ仕事は選ばなきゃできそうだし
身の回りのものも買えそうだな
あとは寝床か…
案内所に戻ってもしょうがないし
もうちょっと先に進めば何かあるかな
街のことも知っておきたいし
不審者に間違われないように観光客を装って
あんまりキョロキョロしないようにしよう)
露店では野菜や食材が売っている
威勢のいい声も飛び交っている
「いらっしゃい、いらっしゃい」
焼き物も売られている
(ガスコンロじゃないな
ん?コンロじゃなくて魔法陣だ)
そこから火が出ていて店員さんが魔法陣に向かって両手をかざしている。
まさに魔法の世界だ
R7.8.20 加筆