第10回路 魔流紋
(魔力残量…それがわかる術があれば)
【EMMA'S BODYART】
(ボディペイント?
こっちの世界にもあるんだ
そう言えば紋章を腕の甲とかに刻んでたりするの見たことあるような気がする、アレは浮かび上がってくるものもあるのかな?聞いてみよう)
丸い窓の空いた木の扉を開けた
ギギィー
立て付けが悪いのかドアの軋む音がした
中で機械音がする
気がついた店員
「そちらのソファーにおかけになってお待ちください。あと10分ほどで終わりますので」
マスクのせいか少しこもった女性の声だ。
カーテンの隙間から見えたアーティストは
長い茶色の髪を束ねてベッコウのバレッタで止めていて
うなじがなんとも色っぽい
マシン音が止まり
「お疲れ様でしたー大丈夫でした?」
「あ…はい」
「鏡で見てみます?こちらにどうぞ」
「すごくかわいいです」
「ですよね?蝶々はメタモルフォーゼの象徴
成長していく自分に重ね合わせて入れられる女性がすごく多いんですよ!」
2人の会話を盗み聞きしながら
ガラステーブルの上にあったデザインフラッシュのファイルを見ていた
「ありがとうございました、お気をつけて」
客が見えなくなるまで頭を下げていた
「すいませーん、お待たせしてしまって」
束ねていた髪をいつの間にか下ろしていて
黒い襟付きのシャツに長めのスカートのスリットから
細くて長い足と絵柄の一部覗いている
「エマと言います。よろしくお願いいたします。」
「ウルシバラデンリュウです。宜しくお願い致します。」
ミズキも出てきて挨拶しているようだ
「ちょっとめちゃめちゃ可愛いんですけどー!!」
目をキラキラさせている
「色々聞きたいことがあって…痛いですか?」」
「痛み?ないですよ。皮膚の上に特殊なペンでインクを乗せていくだけですから」
「洗い流したら消えちゃいます?」
エマさんは首を横に振った。
「魔力を使って皮膚に浸透させるので、あざに近いと思っていただければ。ただ消すこともできます。」
「この機械ってどうやって動いているんですか?」
「コレは海の向こうから知り合いを通じて仕入れているんですが
家にある魔力コンセントに繋いで手元で自分の魔力を干渉させるんです。そんなに魔力は使わないんですが、集中力が大事で、その方の入れたいものに対する思いとか背景をカウンセリングでいっぱいお聞きしたあと、自分なりに解釈してそれをペン先に伝えるんです。だから、終わった後はヘトヘトになっちゃいますよ」
確かにかなりの集中力が必要そうだ
「魔流紋を入れたいなって思ったキッカケとかおありですか?」
(魔流紋っていうのか…)
「うーーん、まぁキッカケというか…
魔法使いの人って紋章みたいなのがあったりするじゃないですか?
アレってみんな魔流紋ですか?」
「そうですね、魔流紋の方もいらっしゃいます。
メカニズムはわからないですが上級魔術者はシンポルみたくある一定の条件を満たすと顔や手に浮かび上がるみたいですよ」
「無理難題を言っているのは承知でお聞きしたいのですが
空魔石を粉々にしてインクと混ぜて入れることって出来ますか?」
「えーーーっ?魔石を??
やってやれなくはないと思いますがインクと一緒に定着するかどうか…体が拒否反応起こしたり定着しないで石の成分だけ皮膚に弾かれちゃったりするかもです。」
「入れたいのは左腕で、なんかよくあるあの模様みたいな…」
「トライバルですね?こんなの。」
デザインフラッシュをペラペラめくって指さした
「あっそうそう、コレコレ。コレを自分なりにイメージしたデザインで」
「わかりました。なにかアレルギーみたいなのはありますか?」
「虫は見るとなんかゾワゾワってします」
「それはアレルギーではないですね。」
足を組み直して、サラッと流された
「皮膚試験でアレルギー反応が出ないか確認することもできますよ。」
「大丈夫です…問題ないと思います。」
1枚の紙を渡されて
「カウンセリングシートです。わかるところをご記入いただいてわからないことがあれば聞いてくださいね。」
エマさんは席を立って、先ほどまでの作業場の片付けをしている
落ち着いて店内を見渡すと
白を基調に美容室っぽくキレイにまとまっている
書き終わったのを見計らって
「書けました?」
こちらに歩いてきた。
座って記入した欄を丁寧にチェックしている
「予約したい日程とかはありますか?
お休みに合わせるとか」
あんまり日付の感覚がよくわからないが
「最短だといつになります?」
「そうですね…、明後日の午前中になります」
「それでお願いします。デザインと魔石の粉は当日までに用意します」
「ほんとに魔石入れるんですかー??」
茶化し気味で言ってきた
「入れます!」
日程を再度確認してお店を出た
(リアクさんのとこに行こう。
空魔石の粉を作ってもらわないと。)
R7.8.20 加筆