第9話 ダンジョン探索
翌朝、俺はリリアを連れて、F級の冒険者がよく利用するダンジョンへと向かおうとしていた。すると、父親が俺を呼び止め、低く重い声で告げる。
「レオン、お前がメイドを連れて何かしているようだが、家の名に傷をつけるようなことはするな」
その視線には俺への期待も失望もなく、ただ冷淡なものだった。俺は肩をすくめて軽く頷く。
「心配には及びません。俺は俺のやるべきことをするだけです」
父はそれ以上何も言わず、俺たちは屋敷を後にした。
道中、リリアは少し緊張した様子で俺に尋ねる。
「レオン様、今回の目的地は……?」
「F級の冒険者がよく利用するダンジョンだ」
それを聞いたリリアは安心したように胸をなでおろした。彼女も俺が無茶をするのではないかと心配していたのだろう。しかし、俺の目的は普通の冒険者が行くような場所ではない。
ダンジョンの入り口にはすでに何人かの冒険者たちが集まっていた。リリアは辺りを見渡しながら、小声で俺に話しかける。
「やはり、ここは冒険者でにぎわっていますね」
「そうだな。でも、俺たちが向かうのは、ここにいる連中とは違う道だ」
俺は周囲を気にしつつ、人目を避けながらダンジョンの奥へと進む。通常のルートを無視し、まっすぐある一室へと向かう。そこには一見普通の壁があるだけだが、ゲーム知識のある俺にはわかっていた。
「ここだ」
俺は壁の一部に手を当て、そっと押し込んだ。すると、壁の一部がふっと消え、隠された通路が現れる。
「えっ……壁が……?」
リリアは驚きの声を上げたが、俺は構わず中へと足を踏み入れた。
「ついてこい。ここからが本番だ」
こうして俺たちは、通常の冒険者が決して知ることのない秘密の場所へと進んでいった。
◆◆◆
ダンジョンの奥へと向かうと、そこには石造りの巨大な扉が待ち構えていた。重厚な雰囲気を放つその扉の前で、リリアが息を呑む。
「レオン様、あの扉の向こうに何かが……!」
「ゴーレムがいるはずだ。宝箱を守っている番人みたいなものだな」
俺はゲームの知識を頼りに進み、扉を押し開ける。すると、内部には高さ二メートルほどの石造りのゴーレムが、どっしりと構えていた。
「来たな……!」
ゴーレムは無言のまま拳を振り上げ、こちらに向かって襲い掛かる。しかし、俺は慌てずに拳を握りしめた。
(この程度の奴ならlevel5になればスキル無しの素手だけでもやれるが……、試してみるか)
ゴーレムの拳が迫る中、俺はそれを避けると同時に構えを取るとカウンターで拳を叩き込んだ。
「はっ!!」
瞬間、拳から淡い青白い光が放たれ、ゴーレムの胴体に衝撃が走る。
【スキル《正拳突き》を習得しました】
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《正拳突き》
スキル効果:
・自身の【力】の50%と【敏捷】の30%を攻撃力に加算する。
・対象の【防御力】を20%無視。
・クリティカル時、ダメージ倍率1.5倍。
・消費MP:5
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俺の拳がゴーレムの胴体にめり込み、そのまま衝撃波のようなエフェクトが広がった。
「レオン様!? それはスキルですか!? いつの間にそんなものを……す、すごいです!」
リリアが驚きの声を上げる中、ゴーレムの体がヒビ割れ、そのまま粉々に砕け散った。
「……ふぅ、やっぱりスキルがあると便利だな」
俺は拳を軽く振りながら、崩れたゴーレムの後ろにある宝箱へと近づいた。そして慎重に蓋を開ける。
「よし、予想通りあったな!」
宝箱の中には、一冊の古びた本が収められていた。俺はそれを手に取り、ページを開く。
【スキル《回復薬調合》を習得しました】
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《回復薬調合》
スキル効果:
・HP回復ポーションの生成が可能。
・回復量は【知力】の40%を基準に変動。
・ポーションの品質に応じて【運】の影響を受ける。
・特定の素材を使用することで効果を強化可能。
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「これで回復手段が確保できるな……」
この世界では、低レベルの回復薬ですら高価で、一般の冒険者が頻繁に使えるものではなかった。しかし、このスキルがあれば、自作してコストを抑えることができる。
「レオン様、本当にすごいです! これがあれば、今後の冒険がずっと楽になりますね!」
「そうだな。まずは素材を集めて、試しに調合してみるか」
俺は新たなスキルを手に入れたことで、次の目標が明確になった。
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