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第8話 最強への道

 ギルドでの用事を終えた俺たちは、まっすぐ屋敷へと戻った。


 夕食を終え、少し休憩を挟んだ後、俺はリリアを自室へと呼び出した。


「レオン様? こんな時間にどうされました?」


 部屋へ入ってきたリリアは、少し不思議そうな顔をしている。


 俺は椅子に腰掛け、テーブルに指を軽く置きながら、まっすぐ彼女を見た。


「リリア、これからの方針を決めた」


「方針……ですか?」


「俺は、S級冒険者になる」


 その瞬間、リリアの瞳が大きく見開かれた。


「えっ……S級……?」


「そうだ。この国の歴史上、S級に到達したのはたったの三人。だが、俺はその四人目になる」


「…………」


 リリアは、呆然としたまま固まっている。


 この世界の冒険者ランクは、F級から始まり、E、D、C、B、A、そして最上位のS級と上がっていく。だが、A級ですら歴史上百人程度しか到達していないのが現状だ。


 ましてやS級となれば、まさに伝説の存在。リリアの驚きも当然だろう。


「俺は最強になるつもりだ。そして、そのためにまずはレベル30を目指す」


「れ、レベル30……!?」


 リリアが驚愕に目を見開く。


 当然だ。レベル30といえば、国でも有数の実力者クラス。王国騎士団の団長クラスでも20前後が普通で、30以上の者はほぼいない。


「レ、レオン様……本気でおっしゃっているのですか?」


「ああ、本気だ」


 俺がきっぱりと言い切ると、リリアは少し口ごもりながら、俺をじっと見つめた。


 そして、意を決したように小さな声で尋ねる。


「……そ、それに……私もついていっても、いいのでしょうか……?」


 その問いかけに、俺は自然と微笑んだ。


「もちろんだ」


「えっ……」


「俺がどれだけ強くなろうが、周りにそれを見ている人間がいなかったらつまらない」


 リリアが驚いた表情のまま固まる。


「だから、お前もついてこい。俺と一緒に、強くなるんだ」


「……!」


 リリアの瞳が、何かを決意したように輝きを増す。


 そして俺は、リリアの目を見据えながら続ける。


「今、周辺の情勢が安定していない。いつ何が起きてもおかしくない状態だ」


「そ、そんな……」


「だからこそ、俺たちは強くならなければならない。最低限、自分の身を守れるだけの力をつける必要がある」


 リリアは驚きと不安、そして微かな決意の入り混じった表情を浮かべながら、小さく頷いた。


「……わかりました、レオン様。私、ついていきます!」


 こうして、俺たちの本格的な強化計画が始まった。


◆◆◆◆◆


 リリアを部屋から送り出し、俺は一人で静かに考える時間を取ることにした。


「……さて、今後の方針を改めて整理するか」


 俺はベッドに腰掛け、軽く天井を見上げながら、今後の動きを思案する。


 まず、次に向かうべきはダンジョンだ。


 この世界には無数のダンジョンが存在するが、冒険者ギルドに登録していないと入れない低級ダンジョンも多い。その中に、俺が狙っている場所がある。


 《薬草の洞窟》。


 F級冒険者向けの簡単なダンジョンで、出現するモンスターも弱いスライムやゴブリン程度。しかし、このダンジョンの奥にある祭壇で特定の条件を満たせば、《回復薬調合》のスキルを獲得できる。


「回復手段の確保が最優先だな」


 この世界では、回復薬の値段が異常に高い。しかも、低級のポーションですら数十銀貨もするくせに、効果は微妙というクソ仕様。そのくせ、適正レベルの狩場では普通に大ダメージを受けるのだから、商人ギルドがぼったくっているのは明白だ。


 その状況を打開するためにも、自力で回復薬を調合できるようにしておく必要がある。


「《回復薬調合》さえ手に入れれば、材料を採取して安価でポーションを作れる」


 これで高価な回復薬に頼る必要がなくなり、長期的な探索も可能になる。


 そして、次の目標。


「ゴールデンスライムの金を活用する」


 俺のアイテムストレージには、すでに大量の金属や魔石がストックされている。それらを換金すれば、相当な資金になるのは間違いない。


 その資金を使って狙うのは、詐欺師じみた商人NPC──《レオナルド》の持つレア装備だ。


 こいつは、一見するといかにも胡散臭い商人で、ゲームでも信用ならないNPCの代表格だった。扱っている商品も、適当に見れば大したことがないものばかり。しかし、特定の選択肢を選ぶことで、表には出てこない超レア装備を購入できる。


 しかも、ゲームの仕様上、序盤から彼の高級商品を買うプレイヤーがほぼいないため、バグじみた破格の値段で売られていた。


「ゲームの知識があれば、どう考えても大儲けだな」


 俺はクスッと笑いながら、次の行動を決めた。


 まずは《薬草の洞窟》に向かい、《回復薬調合》を獲得する。

 その後、ゴールデンスライムの金を使って《レオナルド》からレア装備を手に入れる。


 これで、戦力を大幅に強化できるはずだ。


「順調に進めば、レベル30なんてあっという間だな」


 俺は軽く伸びをしながら、確かな手応えを感じていた。

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