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灰色の天国  作者: Reborn
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2. 手がかり

暗い空が都市を覆い続け、林凡と寒風の調査は続いていた。神秘的なトンネルに入ってから、寒風の表情はますます捉えがたいものとなっていた。林凡は常に彼に警戒していたが、寒風の平静な表情の奥に潜む微妙な違和感が見逃せなかった。


トンネル内の光は薄暗く、壁には一部破れた標識が残され、ここがかつて秘密実験室の跡地であったことを示していた。しかし、連盟の記録にはこのような施設の記述は一切なく、林凡の疑念は深まった。なぜこの施設は放棄されたのか?また、なぜ記録が一切残っていないのか?


「ここはかつて秘密研究施設だったのだろう。」寒風が静かに口を開いた。「連盟が成立する前から存在した技術があり、ここもその一部かもしれない。」


林凡は寒風の顔を横目で見て、何かを読み取ろうとしたが、彼の表情には波風が立たず、まるで全てが彼の予想通りであるかのようだった。その神秘的な雰囲気が次第に不安をかき立てた。


トンネルの奥から微かな音が響き、何かが蠢いているようだった。湿った腐敗臭が漂う中、二人は慎重に進み、荒廃した制御室にたどり着いた。室内には古びた機器や書類が散乱し、破れた連盟の標章が壁にかかっていた。


林凡は周囲を見渡し、埃をかぶった書類を手に取った。かすれた文字をなんとか読み取ると、「精神制御」「実験失敗」「痕跡の抹消」といったキーワードが浮かび上がった。その言葉に彼は息をのんだ。これは非常に危険な計画を示唆している。連盟は常に市民の福祉を優先すると主張してきたが、この書類はその裏にある冷酷な現実を暴露していた。


「ここでの研究内容は極端な技術に関わっている可能性がある。」寒風は林凡の背後から冷静に説明した。「たとえば、精神制御や意識の干渉、さらには思考の改造。こうした技術は公にされることは許されない。あまりにも危険で不安定だからだ。」


林凡の疑念はさらに深まった。この極端な技術は一体誰が関与しているのか?また、誰がこれらの危険な秘密を廃棄された工業地区の奥深くに隠したのか?そして、寒風の突然の出現とこれらがどう関係しているのか?彼は寒風に目を向けたが、寒風の表情には一切の変化が見られず、まるで彼にとってこれらの秘密は日常の出来事であるかのようだった。


その時、林凡は一瞬の違和感を感じ取った。隅にある古いコンピュータがまだ動いており、画面には未処理のデータが流れていた。林凡はすぐに端末を開き、データを確認しようとした。


「ここにまだ動作中の設備があるとは?」林凡は低くつぶやき、素早くキーボードを叩いた。


「もしかしたら、研究者が何かを残したのかもしれない。」寒風が近づき、画面上のデータの流れを注視していた。


画面には一連のコードが現れ、奇妙な記号や暗号が混在していた。林凡はそれを解読しようとしたが、簡単には解けないことに気づいた。これらのデータは外部からの解読を試みると即座に消去されるように設計されていた。


「どうやら誰かがわざと保護機構を設けたようだ。」寒風は低く言い、冷笑を浮かべた。その手法に彼は馴染みがあるかのようだった。「解読するには、もっと高度な技術が必要だろう。」


「連盟のセキュリティレベルで対処できるだろう。」林凡はデータを見ながら提案した。「このデータを持ち帰り、専門家に分析させよう。」


しかし、データを転送しようとした瞬間、画面に一行の文字が表示された。「真実を暴こうとするな、さもなくば後悔することになる。」


その一行が林凡の手を止め、背筋に冷たいものが走った。反射的に寒風を見やると、彼もまた画面を見つめ、陰鬱な表情を浮かべていた。


「おそらく今日の我々の行動は誰かに感づかれている。」寒風は異様な冷静さで言った。「ここに隠された秘密は我々の想像を超えているようだ。」


林凡は背筋に冷や汗を感じた。これは明らかな警告であり、彼らが踏み込んではいけない領域であることを告げているかのようだった。


「調査を続けるか、それとも退却するか?」林凡は寒風に問いかけ、彼の表情から手がかりを得ようとした。しかし、寒風の顔には一切の動揺がなく、すべてが彼の掌中にあるかのようだった。


「ここまで来たからには、何が起こっているのか確かめよう。」寒風は低くつぶやき、その瞳に決意の色が光った。


林凡は静かにうなずき、制御室でさらなる手がかりを探し続けた。壁の隅にあるいくつかの機器は古びていたが、構造はまだしっかりとしていた。彼が機器を調べていると、隠された引き出しを発見した。引き出しを開けると、小さなハードディスクが入っており、ラベルには「プロジェクトX - 最終機密」と記されていた。


林凡は心臓が高鳴るのを感じた。このハードディスクこそ、実験の核心記録かもしれない。彼は慎重にそれをポケットにしまい、さらに調査を進めようとした。しかしその時、制御室の照明が点滅し始め、背後から重い機械の扉がゆっくりと下り、退路をふさごうとしていた。


「我々の動向が知られたようだな。」寒風は冷ややかに笑い、その眼には不安ではなく、むしろ期待のようなものが見えた。まるでこれが彼の想定内であるかのように。


「まだこれらの機器に電気が通っているのか?」林凡は驚き、周囲の機器が老朽化しているにもかかわらず、誰かが密かにここを制御しているのだと気づいた。


「我々が偶然、何かの仕掛けを作動させただけかもしれない。」寒風は微笑し、その笑みが林凡に不安をもたらした。


二人は退路を探し始めたが、この実験室は極めて複雑に設計されており、トンネルの配置により一時的に方向感覚を失っていた。機械の扉が次第に降下するにつれ、林凡は不安な気持ちが高まってきた。ここは単なる廃棄された研究施設ではなく、彼らを待ち構えた罠のようだった。


「林凡、これらの実験の目的を知っているか?」寒風が突然問いかけ、その声には探求心が宿っていた。


林凡は冷ややかに応じた。「連盟のすべての実験は、社会の『安定』のためだ。それが唯一の答えだ。」


寒風は微笑を浮かべた。「安定、それは美しい言い訳だな。だが、その真実は君の想


像をはるかに超えている。」


林凡は驚きを隠せなかった。寒風の言葉は、彼の手の届かない真実を暗示しているかのようだった。その時、トンネルの奥から鈍い足音が響き、何かが近づいているようだった。彼らの時間はもう少ない。この謎の暴露はまだ始まったばかりだ。

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