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第57話 鬼柳の真実 壱

白狐兎と迅は、鬼一口の前で深呼吸して体制を整えた。


 鬼柳は、2人の能力で何とかなるだろうとたかをくくって、1人タバコをふかして、夜の暗闇に同化した。やっとこそ、増殖ふたくちおんなの除霊に成功した空狐と風狐も息を荒くして、参戦する。




「こんだけいれば、何とかなるだろう」


「そんな悠長にしてられるかよ」




 迅は、人が多ければ何とかなるという浅はかさを持っていたが、白狐兎は嫌な胸騒ぎを感じていた。




「白狐兎! 私たちは体力残されてないから任せるからね」


「無理無理。結局、足手まといよ」


「へん、お前らに期待なんかするかよ」


「は? なんで呼んだ?!」


「ちょっと、痴話げんかはよそでやってよ。来るぞ」


 迅は、仲良さげな空狐と白狐兎にツッコミするが、2人ともお怒りのようだった。




「どこが痴話げんかだよ!?」


「そうよ」


 




 そうこうしているうちに鬼一口の大きな体が4人の動きが取れないくらいの地響きが起きていた。予想だにしない出来事だ。路上が次々と地割れしていく。


 迅は、札をしっかりと握りしめ、地面に手をあてた。大きな魔法陣が緑色の光とともに浮かび上がる。




≪急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう≫




 烏兎翔の力を借りて、大きな風を起こしてみる。何が効くかと小手調べだ。こんだけ地割れを起こすくらいだ。びくともしない。




「そんな弱弱しいの、効くわけないだろ」


「うっせー」




 すぐに白狐兎は手のひらから青白く光る弓矢を取り出し、3本の矢を続けて放った。どこからか吹く風に遮られ、うまく鬼一口に当たることはなかった。




「ちくしょ、風が吹かなければ!」


「ノーコンのせいだろ」


「ちッ…………」




 改めて、迅は、もう一度挑戦しようと札を取り出し、目を閉じた。深呼吸して、呼吸を整えた。




≪改・青龍≫




 目を大きく見開いて、呟くと、魔法陣の上に大きな青龍がとぐろを巻いて現れた。鬼一口の妖気で敵だと分かると、一気に攻め入った。何度も頭を激しく揺さぶり、時には、ぐるぐると体に巻き付いたが、互角の戦いだった。なかなか決着がつかない。




 未だにタバコをふかしていた鬼柳がため息をつく。




「だろうな……同じレベルの者同士、勝つわけがないだろう」




 その言葉は迅や白狐兎に届くことはなかった。すると、物々しい雰囲気を醸し出し、やってきたのは、酒呑童子の息子、鬼童丸きどうまるが鬼柳の横に近づいていた。




「まだ遊んでいるのか」


「……ええ、まだ終わらないようですね」


「お前はそこで何をしているのだ」


「まぁ、まもなく終わるでしょう。貴方がいらっしゃったんですから」


「…………ふん」




 鬼童丸は、ご機嫌悪そうにしながらも、赤く大きな体にたくさんの筋肉をつけて、2本の黄金に光る角が目立っていた。




 青龍と戦っていた鬼一口の体が一瞬固まった。鬼童丸の気配にやっと気づいた。こうべを自らたらし、膝を地面についた。青龍も強い力を感じて何もすることはできなかった。


 迅は、何が起こったかと不思議で仕方なかった。あまりにも強い力にむしろ目をつぶりたくなる思いで、現実に直視したくなかった。白狐兎は、早く決着をつけたいとどんな強さだろうと関係なかった。体制を整えて、身を構えていた。




「いつまで遊んでいるんだ? 鬼一口。ごちそうは目の前にあるだろ」


「鬼童丸様! わざわざ私めのところに来ていただけるなんて光栄です」


「喜んでいる場合か。お前は遅いのだ」




 鬼童丸は、味方であるはずの鬼一口の首を右をふりあげて、一瞬にして吹き飛ばした。あたり一面、血の海になる。これから倒そうと張り切っていた白狐兎は開いた口がふさがらない。むしろ、迅は倒す必要が少なくなってラッキーとさえ思っている。




「使えないものは死と同じだ。次は誰の番だろうなぁ」


 右に飛び散ってついた血をペロリと舐める。迅と白狐兎をじっと睨みつけた。鬼柳は少し離れたところで見守っていた。




 鬼童丸の手で鬼一口が死んだ様子を見て怖くなった風狐と空狐は、きゃーきゃー叫びながら、見えなくなるところまで走って逃げて行った。




 夜はまだまだ終わらなそうだ。

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