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火炎怪人・火廻り
まだプロローグです。
炎に照らされる「あの人」は美しい。
ぱちぱちと火薬が爆ぜるたびに浮き上がる「あの人」の笑顔に、私はいつも魅せられてしまう。
誰もが知る光の下の「あの人」とは違う、私だけが知る表情が私の胸の奥を乱暴にかき乱し、
むくむくと溢れる欲求にいつも体が震える。
「あの人」を独占したい。この火の下で「あの人」と共にいたい。
だが、私はこうして闇の中から「あの人」を見つめている、ただの影でいい。
私は「あの人」の前に現れなくてもいい。
見ているだけでいいのだ。
そうだ、「あの人」の約束された未来を、私はただ遠くから見守るのだ。
だからあり得ない。「あの人」がここで止まるなど。
「あの人」が、こんな所で消えるはずがない。
消えるはずがないのだ。