第五十二話 三度目
第五十二話 三度目
サイド 大川 京太朗
凶刃が振り下ろされるその瞬間。
窓ガラスを突き破って放った跳び膝蹴りがスケルトンの頭蓋骨を粉砕した。
「え?」
ガラスが砕けた音に驚いたのか、周囲の視線がバスの方に向かう。だがそんな事を気にしている余裕はない。
魔装を展開しながら、息を大きく吸い込んだ。
「モンスターだぁあああああああ!!警官に助けてもらええええええええ!!」
自分の兜が震えるのを感じながら、上に向かって全力の大声。スリットで狭い視界の中で、青空が黒い天蓋で覆われていくのが見える。
既に氾濫は第二から第三に移るってところか。
「君達」
「え、ひっ」
怯えた様子の子供たちに、膝をついてできるだけ視線を合わせる。
「親が近くにいるのならそこに向かいなさい。いないならここは駅の近くだ。交番のお回りさんを頼りなさい。わかった?」
「……っ!!」
怯えた様子で何度も頷く子供たち。それにこちらも一度頷いて返す。
「いい子だ。さあ走って!走れ!」
「は、はいいい!?」
慌てて駆けていく子供たち。そして周囲でも異変に気付いたのか、慌ただしく逃げる人もいれば呆然と空を眺める人もいる。
レイラと雪音を出現させながら、アイテム袋からリーンフォースを取り出した。不幸中の幸いか、ダンジョン帰りなのでリーンフォースの装備はそのままだ。
「ダンジョンの氾濫が発生。スケルトンが街中に出ている。緊急時につきレイラとリーンフォース。雪音と僕で二手に分かれて行動。民間人の保護とモンスターの殲滅をしろ」
「わかりました」
「了解」
「主様」
周囲を見回して警戒する自分に、レイラが小声で尋ねてくる。
「人助けもいいですが」
「わかっている。自分の命最優先。そっちもそのつもりで行動してくれ」
「かしこまりました」
「なら行動開始!雪音!」
「はい!」
とりあえず走る。どうせダンジョンの氾濫なら、適当に動いていてもモンスターとかち合うだろう。
「雪音!」
「はい!」
「僕あとでお祓いに行く!!」
「そうしましょう!!!」
案の定、七、いや八体のスケルトンが人々を襲っている姿を目視。日曜日のまだ日も出ている時間だけあって、人は多い。魔力濃度が上がった影響か非覚醒者でもモンスターの姿が見えているらしく、悲鳴があちこちから上がり誰も彼もパニック状態にある。
剣は、抜かない。この状況じゃリーチは邪魔だ。スケルトン相手なら素手で十分すぎる。
逃げ惑う人々が邪魔だと、道路標識からビルの壁へ。そして斜め上からスケルトンに強襲する。
ちょっと目測をミスって直撃はしなかったが、跳躍と同時に放った拳がかすっただけでスケルトンの頭蓋を砕いた。
着地の衝撃でアスファルトの地面に足が食い込むが、強引に引き抜きつつ駆ける。こちらに振り返ろうとした個体にラリアットを決めて首を刎ね、そのまま次の個体を盾ごと蹴り飛ばす。
上半身が弾けたスケルトンを無視し、次の標的に。ようやくこちらの存在に気づいたか、槍持ち二体が突っ込んできた。
好都合だ。突き出された槍の間を走り去る間際に両手でそいつらの顔面を掴み、握りつぶす。
残り三。だが、それらの体には既に氷の槍が突き刺さっていた。
「大丈夫ですか?」
「ひ、ひぃ!?」
腕を押さえたスーツ姿の男性。どうやら左腕から出血しているらしい。
……やっぱ人間の血は慣れんわ。
「傷口をとにかく強く押さえて。落ち着ける場所についたらちゃんと止血を。できれば医者に診てもらってください」
「な、なんなんだ!?なんなんだ今の!?化け物が、化け物が人を!!」
「落ち着いてください」
兜を解除し、男性の無事な方の腕の肩を掴んで強引にこちらを向かせる。
じっと彼の瞳を見つめながら、できるだけ落ち着いた声で語り掛けた。
「僕の目を見て、ゆっくり十数えてください」
「な、なにを」
「いいから」
掴んだ手に軽く力を込めたら、男性は慌てて数字を数えだした。
「い、一。二、三」
「もっとゆっくり」
「四……五……六……」
さっきまで焦点があってなかった目が、ようやく理性の光を放ち始めた。
「九……十」
「よし。冷静に、焦らずに、けど急いで逃げてください。とにかく警察の人の指示に従っていれば大丈夫です。消防の人でも構いませんから」
「わ、わかった。君は……」
「スケルトンを蹴散らしながら移動します。ご安心を。僕、割と強い方なので」
まあ、本当の『強者』には足元にも及ばないが。
その言葉は脳裏に浮かんだシスター擬きの姿もろとも飲み込んで、自分でもわかるぐらい不格好な笑みを浮かべる。
締まらねぇなぁ、僕ってやつは。
「き、君も気を付けて」
「ご心配ありがとうございます。それでは」
兜を再展開し、周囲を見回す。相変わらず街の人達は右往左往している様子だが、少しずつサイレンの音と拡声器で大きくなった声が聞こえてきた。警察も動いているらしい。
雪音はと探してみれば、なにやら女子中学生ぐらいの子を抱いた女子高生らしき少女にしきりにお礼を言われているようだ。
……決しておっさんよりあっちの方がよかったと思っていない。緊急時だし。
「雪音。移動を」
「はい!旦那様!」
歩き出しながら、倒れている人の姿を視界の端で捉えた。
魔力の流れに鈍い自分でも分かる。この場に倒れている人達は全員死んでいると。なんせ、首や胸から流れた血で赤い水たまりを作っているのだ。あの量と負傷箇所。そして様子からこと切れている。
……嫌な部分だけ、慣れちゃったなぁ。
* * *
それから三十分。ひたすら街中を動き回る。
幸いだったのは、モンスターが弱い事だ。ワイバーンやらファイアードレイクが溢れた時と違い、その辺の覚醒者がそれぞれ対応できている。
あの時と違い並の覚醒者からしたら雑魚としか言いようのない相手だ。万に一つも死ぬ可能性はない。むしろ、パニックで押し寄せる人の波や暴走車の方が怖い。
ついでに、魔力濃度の高まりも思ったほどじゃない事だろう。
ミノタウロスの一件とは違い、炎龍の時もだがすぐに非覚醒者が動けなくなるほどじゃない。モンスターの可視化こそできているが、直ちに人がその場に倒れる事はなさそうだ。
いや、これはむしろミノタウロスがおかしいのか。あのクソ牛が迷宮操作特化型なのが悪い。
不幸だったのは、場所と時間帯。そしてモンスターの数だ。
日曜日の街中。それも午後四時前後の駅周辺。地元では考えられないぐらいの人混みで動きづらいったらありゃしない。それでも警察や消防の誘導で多少はマシになったが。
だがスケルトンの数がとにかく多い。天蓋の拡大ペースはそこまでじゃないが、代わりとばかりどんどん湧いてくる。
あっちこっちに放置された車の屋根を跳び、赤ん坊を抱えた女性を刺そうとしていたスケルトンの頭を掴んで引きはがし、潰す。
「逃げてください!ここからなら駅とは反対方向で警察が避難する人を誘導しているはずです」
「おぎゃああああ!おぎゃああああ!!」
「ひ、ひいいい!?」
赤ん坊ともども悲鳴を上げて走っていく母親の姿に、ほっと胸を撫で下ろす。あの様子なら自力で逃げられそうだ。
「旦那様!」
「っ」
雪音の声にそちらを振り返れば、自分がまだ踏み潰していない車の扉を開いたところだった。
座席にぐったりと体を預ける二十そこらの男性。頭部から血を流しているが、呼吸はしている事が胸の動きでわかった。
「雪音。周囲の警戒を。とにかく敵を近づけるな。僕がこの人を運ぶ」
「はい!」
「聞こえますか?意識があるなら返事をしてください」
軽く肩を叩くが反応はなし。やむを得ない。抱えて行く。
……『林檎』は、本当の本当に最終手段だ。
アイテム袋から包帯を取り出して男性の頭に縛り付けながら、自分に言い聞かせる。レイラが『必要になるかも』と何度も教えてくれた応急手当ての動作が、本当に役に立った様で割と綺麗に傷口を覆えた。
ツヴァイヘンダーを消して男性を背負い、駆け足で移動する。目指す先は当然、先ほどの母子が向かった避難民の集団。
少し近付けば警察の拡声器の声が聞こえてきた。
『押さないで!荷物は最低限だけ持ってください!』
パトカーに近づき、軽くノックすればすぐにお巡りさんが出て来てくれた。
「どうしまし……その人は」
「怪我人です。頭から血を流していました。後はお願いします」
「あ、ああ」
お巡りさんに背負っていた男性を預け、軽く避難民の様子を見まわす。
逃げ遅れだけでも、五十人以上いたらしい。これはまだまだ人がいるな。
既に最初の地点からはかなり離れた位置にいるが、それでも天蓋は見えている。たぶん、もう少し進んだら外に出るだろうけど。
初期の拡大範囲は結構あったようだが、そこら中で覚醒者が戦闘をしているからか僅かながらも縮小が始まっている。ただ、骨一体ごとの魔力量が少なすぎて未だ治まっていないが。
―――タァァンン……!
「ん……?」
何かの破裂音がした気がする。爆竹?いいや、近所の畑で聞いた物とは違う気がする。
ふと視線を戻せば、消防の人と先ほどの男性について話している警官の腰にあるものが目に留まった。
……まさか、銃声?
どこの馬鹿だ。モンスターに普通の弾丸は効かないどころか、音で引き寄せるだけだろうに。
なんでそんな事をしているのかは知らないが、助けに行くべきだろう。パニックってこっちに撃たれたらいやだが、今更普通の鉄砲ぐらいこの身には効かない……はず。
「すみません、僕らは行きます。雪音」
「はい、旦那様!」
「あ、き、君ぃ!」
警官に軽く一礼して走り出す。
我ながら馬鹿な事をしている自覚はある。人命救助など、自分には向いていない。なんせ『白銀の林檎』なんていう特大の爆弾を抱えているのだ。
視界の端に転がる、放置せざるを得ない遺体。ある者は車と電柱の間に取り残され、ある者は首の周りを既に乾いてしまった血で汚したまま転がっている。
いやな光景だ。どれだけ見ない様にしても、兜のスリット越しでありながら自分の眼は捉えてしまう。
――林檎を使うのは最後の手段。優先順位は常に自分を一番に置け。さもなくば、全てを失う。
何度目か、自分にそう言い聞かせた。己に何かあればレイラも雪音も、リーンフォースも終わりなのだ。
兜の下で、歯を食いしばる。この罪悪感は不要なもの。だって、悪いのは――。
ガシャリと、車の陰からスケルトンが跳び出してきた。槍をこちらの向けてくるそれの頭を、すれ違いざまに殴って砕く。
――悪いのは、このスケルトンどもと『ゲート』を隠していた屑どもだ。
脳裏に浮かぶのは相原君から聞いた噂話。裏サイトで流行っているという、覚醒修行の為の、ダンジョンゲートの隠蔽。都会の駅近くで、ミノタウロスの一件以降『偶然見つからなかった』なんて事、あるものか。
本当に嫌になる。こういう光景を散々テレビで流しているだろうに、どうしてそこまで馬鹿になれる。
続々と現れるスケルトンを粉砕しながら、前へ。雪音が後ろについて来れているのを時々確認しながら、また聞こえてきた銃声の方角に向かう。
「く、くるなぁ!くるなぁあああ!」
角を曲がった先。そこでは白衣姿の太った男性が自衛官と思しき男性を背に、拳銃をスケルトンに向けている所だった。
だが、弾切れなのか故障なのか、銃はスライドしたまま弾を吐き出していない。骨の怪物たちは、剣や槍を手に男性に近づいてきていた。
「あ、ああ……!死にたくない!死にたくない!こ、こんな、ばけも」
「ふん!」
十体ぐらいで密集していたので、タックルでまとめて撥ね飛ばす。二、三体生き残った様だが、それらは飛来した氷の槍が撃ち砕いた。
「のぉ、え?」
「大丈夫ですか?お怪我は?」
雪音にハンドサインで周囲の警戒を頼みながら、へたりこんでしまった白衣の男性に視線を合わせる。
ずれた眼鏡越しに、彼の焦点がどうにか定まっていくのがわかった。
「あ、ああ。君は覚醒者、なのか?」
「はい。すぐにここから避難しましょう。そちらの人は?どういう状態ですか?」
視線を倒れている自衛官に向ければ、ようやく白衣の男性も頭が動くようになったらしい。拳銃を放り出し、自衛官に振り返る。
「そ、そうだ!山崎君!起きろ山崎君!」
肩を叩かれても自衛官は目を覚ます様子がない。だが、呼吸はあるようだ。
「……意識がない。先ほどスケルトンの槍の柄が頭部に直撃していた。できるなら動かしたくないが、そうも言ってられん。すぐに病院で脳を診なければ」
「わかりました。僕が運びます。貴方は自分で動けますか?」
「ああ。問題ない。彼のおかげで五体満足だ」
白衣を着ているしたぶん医者なのだろう彼が言うのだから、運ぶしかあるまい。元より、この状況ではそれしかないが。
大柄な自衛官を背負い、白衣の男性に手を貸して立ち上がらせる。
「ここから角をいくつか曲がった先に警官が誘導する避難民の集団がいるはずです。そちらに合流します」
「わかった。すまないが、道中の護衛と案内を頼む」
「いえいえ。困った時はお互い様ですから」
これがワイバーンやらスパルトイだらけの空間ならいざ知れず、スケルトン相手ならマジで自分がどうにかなる事はない。精神的なダメージは置いておいて、人助けをするぐらいの余裕はある。
「注文をつけるようで気が引けるが、できるだけ彼を静かに運んでやってくれ。経験上、側頭部に打撃を受けて気絶するのは本当に危険だ」
「わかりました」
経験上……やっぱりお医者さんか。
「それにしても、銃でモンスターと戦うなんて無茶ですよ」
雪音に護衛してもらいながら、自分も視線を周囲に見回す。とりあえず、来た道を引き返せばそれほど敵に遭遇しないはずだ。
「次からは、とにかく逃げる事を考えてください。大きな音も控えた方がいいです」
「は、はは……そうだね」
目上の人に上から目線で説教臭い事は言いたくないが、事実だ。
これで自分は三回も氾濫に巻き込まれた。しかし、一回だけならって人はそう珍しいものでもない。それだけ、今の世の中ダンジョンの氾濫は増え続けている。嫌な世の中もあったもんだ。
だからこの人も二回目があるかもしれない。せっかく助けたのに、死なれたら嫌だぞ。
「私は……人類の英知をもってすれば解決できない問題なんてないと思っていた」
「はぁ」
なんか語りだしたな。
「勿論、気象災害をはじめ未だ対応しきれないものはある。だが、モンスターは……君達覚醒者に。人間に対処できる存在ならば。知恵と知識でもってどうにかできると思っていた」
「……それは、そうでしょうけども」
「いいや。違ったんだ。これは思い上がりだったのだ、私の」
白衣の男性が、とぼとぼと歩く。できれば、もう少しペースを上げてほしい。いや、背負っている人の状態がわからないし、とりあえず医者に従うのが一番か?
「化け物は、災害と一緒だ。どうにもならん。人類の英知など、無力な人間が己を慰めるために使う、ただの妄言だったのだよ」
ふっくらした頬に、歪な嗤いを浮かべる男性。
きっと、その嘲笑は己に対して向けた物なのだろう。あるいは、彼の言う人類の英知とやらに対してか。
「弾丸を加工しようが、高い金をかけて防具を作ろうが。所詮ただ人には何もできないんだ。君達『英雄』に、全てを任せるしかない」
「いや、それはどうかと」
そもそも僕は英雄ではない。いやそういう願望がないと言えば嘘になるけど、少なくとも今は違う。
それと、さらっと丸投げされても困る。日本は覚醒者が多いと言っても限度があるんだぞ。
「僕は、そこまで人類の英知とやらに絶望していませんけど」
「……私が使っていた、そこの彼が持っていた拳銃にはダンジョン産の金属でできた銃弾が込められていた。それでも、スケルトンにすら勝てない。無駄なんだよ、なにもかも」
こちらの言葉が聞こえているのかいないのか。とりあえず自分について歩いてくれてはいる男性に、少しだけ振り返る。
「化け物に、人間は勝てないんだ」
困った。こんな状況でネガティブになるのは理解できるが、それでも沈み過ぎて自暴自棄になられても寝覚めが悪い。
僕、カウンセラーでもなんでもないんだがな……。
「確かに化け物には、人は勝てないかもしれません」
「そうだ。所詮我らは」
「けど、化け物は『ケモノ』に変えられます」
「なに……?」
胡乱気に男性がこちらを見る。やっと顔を上げたか。
「そんな言葉遊びになんの意味があるんだ。一文字抜いただけで」
「歴史が証明しているでしょう。大昔は、クマもワニも象も全部化け物って言われていましたよ。でも、今はただ危険なだけの獣です」
ダンジョンやモンスターが出てきて少し怪しくはなったけど、それでも伝説に語られる化け物が実はただの大きな動物だったなんて話は、よく聞くものだ。
毒をまき散らす竜はただのコモドオオトカゲだった。村を滅ぼす怒れる神は冬眠前のでかいクマだった。そんな話。
きっと、大昔は実際に『バケモノ』だったのだろう。棍棒も投石も通じず、ただ破壊と殺戮がされるのを見る事しかできない。
けれど。
「人はかつて化け物と呼ばれていた存在を、作り出した武器と知恵。知識でもって『ただの獣』に変えてきました。それが、今またできないなんて誰が断言できるんですか」
段々と腹が立ってきた。
あんたは医者だろうが。戦いの専門家ではない。その専門家は、あんたを守ろうとしてこうして僕の背中で気絶しているのだ。その戦いを無意味だと言うつもりか。
僕だって一般人だが、それでも資格をもった冒険者。助けてやったのだ。その礼として、これぐらいは言わせてもらう。
「それに。覚醒者だって『人間』です。貴方の常識の外の存在だとか、そういう風に視ないでください。人間が化け物を倒している。なら、化け物は獣にできるはずだ。その証明に他なりません」
覚醒者は超人かもしれない。だが人類だ。神でもなんでもない。おぎゃあと産まれてそのうちよぼよぼになって死ぬ。そういう存在だ。いや、まあ僕老衰死はしないかもしれんけども。
道を遮って来たスケルトンどもが雪音に蹴散らされるのを見ながら、白衣の男性に語り掛ける。
「勝手に諦めないで下さい。人間は、愚かで弱い生き物ですけど、僕たちが勝手に見限っていいほど脆弱でもないでしょう」
……随分と、臭いセリフを並べてしまったものだ。雪音がこちらを生暖かい目で見ている。つらい。
「そうか……そう、だなぁ……」
ちらりと振り返れば、白衣の男性は黒い天蓋を見上げながらぶつぶつと呟いていた。いや、ずっと俯いていられても困るけど見上げてばっかも困る。前を見て歩け。
案の定つまずいた白衣の……いやもうオッサンの手を掴んで普通に歩かせるのだった。
* * *
事態が収束したのはこれから三十分後。それから自衛隊やら警察やらの人達に事情の説明やらなんやら。あとバスに置いてきてしまった荷物の回収やらで家に帰れたのは午後七時を過ぎていた。
今回もかなり心配させてしまった母さんたちと、本気でお祓いについて話し合ったのは言うまでもない。
読んで頂きありがとうございます。
感想、評価、ブックマーク。いつも励みにさせて頂いております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。
この少し後に『閑話 バケモノをケモノに』を投稿させて頂きます。そちらも見て頂ければ幸いです。




