第百五十三話 端役と敵役
第百五十三話 端役と敵役
「こ、のぉお!」
突き出された槍を鍔で弾き、左手でエインヘルヤルの顔面を思いっきり殴り飛ばす。
大きく仰け反るも、相手はそのまま武器を放棄してこちらの左腕に組み付く───という未来を予知した。
瞬時にレイラの補佐を受け、最適最速の動きで左腕を折り曲げて相手の後頭部に肘鉄を落とす。ぐらつく背中を蹴り飛ばし、首を斬り飛ばした。
「っ!?」
直後に背後から斬り殺される自分を予知し、振り向きざまに剣を振るう。
轟音と共に戦斧を受け止めた。ギシリと両腕が軋むも、『自然魔法』で足元の水を爆散。エインヘルヤルが怯んだ隙をついてダガーを引き抜きその首にねじ込む。
腕を掴まれる未来が視えたので刺したら捻らずにすぐさま手放し、右手で持つツヴァイヘンダーの柄頭を鼻っ面に叩き込んだ。
「はぁ、くぅ!」
息をつく間もない。未来視が止まず常に見せられる自分の死に猛烈な吐き気を覚えながら、魔力をまき散らして跳躍。
「雪音!」
「『乱れ白雪!』」
自分がいた位置に三方から槍を突き出すエインヘルヤル達。穂先同士をぶつけ甲高い音をたてる彼らの足元が凍り付き、動きを止めた瞬間炎の魔弾が殺到した。
空中に跳んだ自分に、敵魔法使いの放った不可視の斬撃が迫る。レジストしきれないと脳が理解するより先に、首を落とされた自分の姿を幻視して剣を構えた。
刀身にかまいたちが衝突し吹き飛ばされる。十数メートル先に水しぶきを上げて着水。白い水のカーテンを貫いて、左右から槍と剣が突き出された。
それに対し姿勢を低くする事で回避し、同時に体を全力で捻じる。
「───雄々!!」
バネの様に捻った分を活用し、全力で剣を振るう。剣圧で水しぶきを蹴散らし、一体を両断した。
だが槍持ちの方は跳躍して回避し、上から自分目掛けて刺突を放ってくる。
避け、きれない!
「ぐぅ!」
咄嗟に左籠手を盾の代わりに掲げ、頭部への直撃コースを逸らす。穂先は腕を貫き肩にかけたマントの上を滑った。
痛みと衝撃でふらつく自分に、槍持ちのエインヘルヤルは振り子の様に体を動かし天地を逆転させる。一瞬で槍に貫かれたまま宙に放られた後、勢いそのまま水面に叩きつけられた。
「ごっ……!?」
『主様!』
あまりにも高速で衝突したせいで水がコンクリの様に硬い。一瞬意識が飛びかける。
止めとばかりに振り落とされる踵を、首を傾ける事で回避。『自然魔法』で相手の足元から水の槍を突きだして腹を串刺しにした。
「が、ぁぁ……!」
消滅していく槍に、遅いとばかりに力を籠めて左手を振るった。穂先が弾けて粒子となった事で剝き出しになった傷口から勢いよく血が流れるが、すぐに止血される。二秒後には万全な状態にまで回復した。
少しふらつきながら立ち上がる自分に他のエインヘルヤルが迫る。だが、それを遮って炎の壁が展開された。リーンフォースだ。
『お下がりください』
「すまない……!」
跳躍して雪音達が立っている水面に浮かんだ根の近くに下がり、剣を握り直す。
言い訳になるが、やはり人型はやりづらい。精神面以前に動きがわからん。予知とレイラに下駄を履かせてもらってこの様だ。
だが休んでもいられない。リーンフォースを囲もうと群がるエインヘルヤルに牽制射撃を行っている雪音達に迫る、隠形系の能力を使っている者達へと斬りかかった。
『………ッ!?』
見抜かれたのが予想外だったのか、先頭の一体は一撃で仕留められた。だが残り二体は一足で自分から距離をとり、ナイフと鎖を投げつけてくる。
コンマ数秒だけ差をつけて放たれた攻撃に、ナイフは剣で弾き飛ばし鎖は掴んで対処。
直後、鎖から呪詛が流し込まれた。なるほど、触れただけで相手を麻痺させる武器か。
だが、これなら!
「らぁ!」
力任せに鎖を引っ張ってから、思いっきり振り回してナイフ使いの方にぶん回す。
二体纏めて叩き潰し、次の敵へと視線を向けた。
───最初の衝突と比べ、明らかに相手の数も質も低下している……はずだ。
既に敵方は残り二千を切り、感じられる魔力量も自分と同等かそれ以下の者しかいない。
だと言うのに、動きが違い過ぎる。
刺し違えてでもこちらを殺すという、明確な意思。その上で別の個体と巧みに連携する様子を見せる今の方が、遥かに脅威に思えた。
視線を半瞬だけ他の戦場に向ける。
あちらはあちらで、かなりの苦戦を強いられていた。
自衛隊の弾幕で空の敵を寄せ付けず、砲撃で密集陣形を組ませない様にはしている。だが、時折飛んでくる魔法が有川臨時総理の防御を突破して戦車隊に着弾していた。
徐々に、しかし明らかに、人間側が押し込まれている。
湖面で白兵戦をしている部隊は更に悲惨だ。集団戦こそこちらの得手だと言うのに、ほとんど乱戦に持ち込まれている。
素人の自分でもまずい状況だとわかっているのだ、水無瀬三佐を始め自衛隊や抜刀隊も打開に動いているはずだ。それでも、相手の動きに翻弄され続けている。
考えてみれば、これだけの覚醒者を揃えた大規模戦闘など聞いた事がない。間違いなく、その辺りの練度で自分達は負けているのだ。
各所で個々の武勇で敵を圧倒し、押されている味方の援護までする人はいる。だが、それもすぐに囲まれて好きに動く事ができない様子だった。
友人達が心配だが、こちらも助けに向かう余裕はない。一刻も早くロキの首を獲る必要がある。
だがどうする。エインヘルヤルの猛攻は衰える気配がない。
「くっ!」
『………!』
靄でできた顔に笑みを浮かべながら斬りかかってくるエインヘルヤルと鍔迫り合う。
相手が押し込もうとしてきた瞬間、膝蹴りからの左拳で距離をとり袈裟懸けに斬り裂いた。だがそれではまだ死ねないと、短剣を引き抜きその個体が組み付いてくる。
「いい加減……っ」
首にねじ込まれそうになった短剣を掴んで止め頭突きを相手に叩き込む。こいつら、死人の癖にしぶとすぎるぞ!
誰か、ロキの所に……!この異界の核は奴と伊藤さんだ。それさえどうにかできれば、エインヘルヤルも……!
このままでは全滅もあり得る。エインヘルヤルどもの相打ち上等とばかりに攻めてくる姿に、敵味方共に死に絶えるなんて未来さえ視えてきそうだ。
乾坤一擲。ここらで誰かがそれをしなければ、本当にそんな結末を迎えかねない。だが、それができる者がいない。
赤城さんと彼女のパーティーも、どこかで同じ事を考えているのだろう。自衛隊や抜刀隊もまた、その機を狙っているはず。
しかし攻めきれない。己をロキの首目掛けて放たれた矢とするには、あまりにも周囲の邪魔が多すぎる。走り出す足すらも止められる。
英雄となりえる者は、この場に───。
その時、馬の嘶きが聞こえた気がした。
「なっ」
まさかと思い見上げれば、想像通りの光景が広がっていた。
天を駆ける白馬。虚空を蹄で踏みしめ、凄まじいは速さで飛んでいく。
郡凛。彼女が右手に持つ剣を黄金に輝かせ、世界樹の中腹目掛けて一直線に突貫をしかけていた。
当然ながら道を阻まんとするエインヘルヤル達。一騎駆けをする少女に狂笑をあげながら槍で、斧で、魔法でその命を狙う。
それらを剣閃が切り払い、馬蹄が打ち砕きながら彼女は駆けた。
だが腕二本、馬一頭では捌ききれるはずもない。その華奢な体に幾つもの傷を負っていく。投擲された槍が背を貫きながら、郡さんは吠える。
「胡桃ぃいいいいいい!」
鬼気迫る、とは正にあれの事か。
十代の少女が出したとは思えない気迫に、戦場の注目が集まる。そこから、両軍ともに武器をそちらに向けた。
片や勇猛な少女に戦の洗礼を与えんと高ぶった勇者達。片や民間人の少女を護らんと焦る大人達。
それらが放った矢と弾丸が彼女の周囲で無数に弾ける。強弓から放たれた矢を対物ライフルが撃墜し、放たれた魔法三つをたった一本の黒曜石を輝かせた矢が纏めて撃ち落とす。
それらの爆炎や破片がその身を襲おうと構わず、少女は駆ける。幼馴染の友人を助けるために、全力で。一切振り返る事無く。
それはまるで英雄譚の一ページの様な光景で───だからこそ、自分には恐ろしい物に視えた。
戦場で活躍した英雄の末路など決まっている。その全てが、非業の死だ。
無論例外もいるだろう。それこそ、同じ事をしたのが赤城さんや有川総理ならば好きにしろとしか思わない。だが、郡さんでは『足りない』のだ。自分の勘はそう告げている。
だって、彼女はきっと……本来、戦う人ではないのだから。
「邪魔だ!」
槍を突き込んできたエインヘルヤルの攻撃を避け、リカッソを逆手に持ちカウンターで首を刎ねる。
だが、続けて二体のエインヘルヤルから斬撃を受けた。咄嗟に籠手と鍔で受けるも、挟み込む様に押さえられる。
「くっ!」
魔法で纏めて足場を崩し、片方を斬り捨てもう片方に返す刀で剣を振るう。だが、それは盾で防がれた。
相手が腰だめに放ってきた突きを左手で握って止めながら、視線を巡らせる。
どうする。自分とてこの状態からあの人の所まで行くのは無理だ。であれば見捨てるか?どうせ大して話した事もない他人。無理を通す理由などない。
ただ……『恩人』が、あの人を護りたがっているのだ。
あの自称聖騎士殿には命を救われた。己と仲間たちの命の価値を、自ら落とす様な真似はしたくない。命の恩には命で返す。死ぬのは嫌なら、代わりにあの人の為に命を助けなければなんとする。
ついでに、自分も彼女の歌のファンなんだ。死なせたいとは思えない。
「おおお!」
押し込もうとしてくるエインヘルヤルの剣から手を放し、脇腹を抉らせる。その代わりとばかり相手の頬を殴り飛ばし、腹に膝蹴りを叩き込んだ。
ぐらついた相手の頭に盾を避ける様にして剣を振るう。頭蓋を叩き割り、また別のエインヘルヤルに斬りかかった。
だが、やはりこの状況では……!
こちらから踏み込んで得物をぶつけ合い火花を散らせながら、吠える。
「雪音!上空の人物の援護はできるか!?」
「無理です!こちらだけで精一杯です!」
視界の端で、彼女もまた氷の薙刀でエインヘルヤルの攻撃を捌いている所だった。
慌てて今戦っている相手の剣を左手で押さえ、ツヴァイヘンダーを放棄し右手で襟を掴みぶん投げる。
雪音と交戦中のエインヘルヤルにぶつかり、とりあえずの危機は脱せたらしい。しかし、新手がまた彼女に襲いかかってくる。それをリーンフォースが体で受け止める傍ら、セカンドがボロボロになりながら支援射撃を続けていた。
『主様!』
「ぐぁっ!?」
視えた未来に反応し回避しようとするも、後方から投擲された槍が肩を貫いた。やばい、もう、体力が……!
仕方ない。残念だが、自分達の命を優先───。
その時、何かが砕ける音がした。
自分達よりも十メートルほど上。その空間に、突如として巨大なヒビが入る。
そのあり得ない光景は、しかし次の瞬間には文字通りの意味で吹き飛んだ。
「なぁ!?」
再度の轟音で空間が打ち砕かれ、凄まじい衝撃波が襲ってきた。
エインヘルヤルも自分達もバラバラに蹴散らされ、湖面を転がる。魔法で反射する水の感触があまりにも気持ち悪い。
それでもどうにかツヴァイヘンダーを再構成しながら立ち上がり、雪音達が先ほどまでいた根の上に視線を向けた。
そこから、少しだけ覚えのある魔力を感じ取る。この場において、最も頼りになり会いたかった人。思わず兜の下で笑みを浮かべ、歓喜のまま駆け寄ろうとした。
あの人がいれば、勝てる!
「花園さ───」
声が途切れた。
白銀の鎧は血とひび割れに包まれ、チャリオットは見当たらない。炎龍すらも一撃で粉砕する鉄槌は今にも砕けてしまいそうな有り様だ。
左肩から先を失い、右の首筋から左脇にかけて槍の様に鋭く長い牙で貫かれた聖騎士。その姿に、呼吸すらも数瞬忘れる。
「嘘、だろ……」
自分の知りうる最強が、血まみれでそこにいた。
剣を握る手から、力が抜けようとする。もう駄目だ、おしまいだ。花園さんですら生き残れない戦場で、自分が戦い抜けるわけがない。
逃げよう。勝ち目がないのなら、撤退し再起を図るなり助けを呼ぶなりするのが正しい行動だ。
誰に責められる云われもない。この身は英雄でも賢人でもないのだから。
そう……自分は、愚者だ。
「ちくしょうが……!」
愚か者だから、こうして前に走ってしまうのだろうな。
『主様!ここは撤退しましょう!雪音達だけなら回収できます!郡凛が囮になっているうちに!』
「ごめん、無理!」
花園さんに視線を向けたエインヘルヤルの背を斬り捨て、魔力で得た加速で振り返った個体を蹴り飛ばす。
何を、あんな所で寝ているのだあの変質者な英雄殿は!寝るのなら留置所で寝ろ!
「何やってんですか、あんたは!!」
考えたら腹が立ってきた。なんで僕があの変態を起こしに行かなければならんのか。
突き出された槍で腹を貫かれるも無視し、前進。柄を赤く塗りながら、エインヘルヤルの顔面を殴り飛ばす。
背中に矢が幾本も突き刺さったが、再生能力に任せてこれも無視。前方で剣を振りかぶる敵は再構成したダガーを投擲して仕留めた。
後三歩。それだけあれば辿り着ける。だが、間にはまだ何体ものエインヘルヤルがいた。
それらが自分と、花園さんに武器を振りかぶる。
間に、合わない!
「あんたの守りたいモノが、死にかけてんぞ似非シスター!!」
だから、とっと目ぇ覚ませド変態!!
「ッ───」
暴風が起きる。
それはほんの一瞬の事で、しかしそれだけで視界の全てが変わった。
並み居る英傑たちは霧の体を散らせ、死にかけの騎士は兜の下で瞳を輝かせる。
「シルバぁああああああああ!!」
彼女の咆哮が響いた。それこそ、戦場全てに届くほどに。
「乗りなさい!!」
花園加恋。彼女が残った右手一本で大きく鉄槌を振りかぶる。
その意図を察すると共に、自分は全力で跳躍した。
* * *
サイド なし
少女は駆ける。このままでは勝機はないと本能的に察し、ただ我武者羅に愛馬を走らせた。
その行動は、確かに戦局を動かすものとなる。偶然ではあるが、エインヘルヤルの眼が疾走する彼女に集中した。
他の者達が少女の生死を奪い合う為に各々攻撃をする中、英傑たちの背を襲うオークや触手があったのだ。
故に、彼女の行動は無駄ではなかった。その突貫をした時点で、人類側に天秤が大きく傾いたのだから。
だが彼女に、郡凛にもはやそんな事など関係ない。
ただ、その瞳には守りたい人だけが映る。
「胡桃ぃいいい!」
遂に、並み居る英雄達の攻撃を少女は踏破した。多くの助けを得て、郡凛は幼馴染の元へと走る。
二人の少女の視線がぶつかった。
「凛、ちゃん……?」
「今、助ける!!」
衰弱し視線も虚ろな胡桃に、凛が吠える。
真っすぐと、ただひたすらに彼女は駆けて───。
「むかつくなぁ、そういうの……」
悪意が、立ちふさがる。
隻眼の神が装いだけを整えて、背にカラスの羽を生やし手に槍を持って凛の前へと現れたのだ。
右目に濃密な殺気を溢れさせ、ルーン文字の刻まれた槍が突き出される。その一撃の流麗さは、人間では到底成し得ないものであった。
凛がそれに刃を合わせられたのは奇跡だろう。両者の衝突で世界が揺れ動き、魔力が閃光となって周囲をつつんだ。
「ロキ!?」
「何を終わった気になっている……まだだ、まだなんだ」
ブツブツとロキは呟きながら、槍に力を籠めた。
凛が持つ剣にヒビが入っていく。慌てて魔力を更に流し込むも、既に彼女とて限界。刀身の崩壊を止める術はない。
「林檎さえあれば、『黄金の林檎』さえあれば俺はまだ生きられる。時間さえあれば、オーディンを見つけられる……アレはきっと間違いだ。そうじゃなきゃ駄目なんだ。だから、だから」
少女の刃は、儚く砕け散った。
「だから、どけよ。人間」
「そんな……!?」
弾かれ、バランスを崩した所に振るわれた槍が白馬の首を刎ねる。
宙に放りだされた凛に、胡桃が目を見開いた。
「凛ちゃ───」
槍が、少女の心臓に向けられる。
もはや彼女にそれを防ぐ手立ても、回避する手段もない。己へと迫る死に、凛は強く目をつぶった。
胡桃は絶望する。この世で最も大切な人の死が確定したから。
ロキは思案する。この場から逃れ、大切なモノ達を探すために。
だから、この場の誰も迫る刃に気づけない。
「どくのはお前だろう、ロキ」
甲高くも腹の奥底に響く音と、衝撃波がその場にいる者達の身を打った。
凛が目を開いた先には、深緑のマントが翻っている。
「なっ、何も」
「『ゴールデンギター』!」
右手の剣で槍を押し込み、左手でカラスの羽を握りつぶしながら少年は体を傾けた。
その背を少女に向け、叫ぶ。
「行ってこい!」
「───はい!」
凛の足が深緑の背を踏みつけ、跳ぶ。
「胡桃!」
「凛ちゃん!」
かくして少女は友のもとに辿り着き、
「こ、のっ」
「初めまして、か?」
少年と神は地に落ちる。
数百メートルの高さから落下しながら両者は武器を振るった。
槍が少年の体に、文字通り瞬く間に四つの致命傷をいれる。首を裂き、胸を抉り、腸を引きずり出して石突きで心臓を殴りつけたのだ。
だが、即死ではない。
白銀の籠手に包まれた手がカラスの羽を引きちぎり、力任せに叩き込まれた刃がロキの肩を僅かに傷つける。
世界樹の根元。聖騎士がいるでもなく、今を生きる者達と過去に生きた英雄達の戦場からも見えない位置に、二人は落下した。
ロキは余裕のある立ち姿を見せ、少年の方は僅かにふらつきながらも剣を構える。
「何者だ、貴様は……!」
「……名乗りは、ご勘弁を。色々と爆弾を抱えている身ですので」
ロキが額に血管を浮かせ、槍の穂先をバケツの様な兜を被った少年の心臓に向ける。
「そうか……ならば名前も無い『端役』よ。神の邪魔をした罪、わかっているな?」
「僕が端役なら貴方はもう出番の終わった敵役でしょう?とっとと失せろよ、大根役者」
新たなる神代初の大戦。余すことなく歴史に残る戦場で、しかし誰の眼にも触れぬ場所。
その場所で『大川京太朗』は八双に似た構えをとり、ロキは偽りのグングニルを手に重心を落とす。
もはや言葉もないと両雄が駆け、『ただの殺し合い』を開始した。
読んで頂きありがとうございます。
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