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実験の裏側では…/カイル


・カイル側のお話です。この次の話がどうにも上手くまとめられず時間かかってしまってるもので。ちょっと書こうか迷ってたお話を入れてみました。

・今回は小話並みに短いです…。すみません(>_<)。。。

 


「カイル様、今度の満月の日に実験をしようと思うんですがこの日、空いてますか?」



 ティアラからそう言われたのはつい先日のことだった。予定は入っていたが夕方には戻れるだろう。



「大丈夫、問題ないよ。夕方までには間に合うようにするよ」



 ーそう、何も問題ない。


 この時はさほど危機感を抱いていなかった。





【実験当日】



「カイル様、今日の実験ですがここで行いますので」

「…あぁ。………って、は?ここで…?本当に言っているのか?」


 予定していた近隣国への訪問を終えて帰国早々、従者であるジラルドにそう言われ思わず二度聞き返す。


「はい、カイル様の部屋で」

「正気か…?」

「はい、大真面目です。夕方から五時間くらい掛かるそうで…。なんでも湖の巫女の儀式と同様身を清めてとのことですので夕食と入浴は早めになさらないと……」


 すらすらと喋っているが「大真面目です」辺りまでしか耳に入ってこない。


「満月が必要ですので」

「……いや、そうじゃなくて、不味いだろう」


 何事もないように話す従者が憎い。確か実験では基本的に二人きりで行なうと聞いていた。


 俺の部屋に、二人きり……。


 一瞬目眩を起こしそうになる。あぁ、そういえば守り石をティアラに渡してしまったから、魔力のコントロールがしづらくなっていたんだっけ。各国との度重なる交渉や政策補助の手引きなど緊迫した話し合いが続きやっとの帰宅だった。案外自分はタフな方だと思っていたがこの時ばかりは肩がどっと重たくなる様な気がした。


「テラスよりもこちらのバルコニーの方が寒さを気にせず満月を追えますので。あ、言い出したのはティアラ様ですから」

「………ティアラか。でも、……止めるだろ普通」



 額に手を当て頭を抱える。ティアラの部屋には出窓こそあるが転落防止の為、他の窓は少し高い位置に作られていた。その分、こちらは結婚後も二人でゆったりとした時間を過ごせるよう広く開放的な間取りとなっていたのだ。


「あ、マリアは止めてましたよ」


(マリア……!)


「でもティアラ様のお顔を見たら大丈夫な気がしたので俺とメイナはティアラ様にお任せすることにしました」

「原因は、お前達か!」


 思わずギッと睨みつける。


「まぁまぁ、落ち着いてくださいって。カイル様もきっとティアラ様のあの表情を見たらなんとかなりますよ。それに前にも言ってたじゃないですか。隣同士の部屋でも大丈夫だって」

「うっ…!それは言ったが……それとこれとじゃ話がまた違う」



 …あぁ、なんであの時、「問題ない」なんてティアラに言ってしまったろう……。





 ぱああああああーーーーー!



「うっ」


(眩しい……)


 数日ぶりに再会したティアラはふんわりとした笑顔で出迎えてくれた。その表情は天使のような無垢な微笑みで決して汚してはならないもののようにみえた。



『カイル様なら大丈夫です!』


『絶対、私が怖がることはされないから』



 ジラルド達にそう言っていたというが…。なるほど、そういうことか…。


 こんなにも絶対的な信頼を向けた彼女の心を壊すわけにはいかない。寧ろその盲目的な想いは限界まで高めておいた方がいいだろう。(野心)


 少し前に起きた大会や帝国の事件でティアラの心は疲弊し、脆くなっていた。不安や恐怖の反動から俺への執着が強くなっている。今は存分に彼女が求める方法で安心させてやるのが一番なんだろう。


 だが…


 そうはいうものの、やっぱりこの部屋でというのはなかなかに難易度が高い気がする。距離感がバグってしまったのか、ティアラはピッタリとくっつくように隣に座っている。布越しから伝わる仄かな温もりが今の自分にはとても、とても辛い。



(全く警戒心なしだな……)



 自分も微笑み返し平常心を保ったふりをしていたが、内心では自分の邪の心と常に葛藤していた。





 パッと部屋の明かりが消され辺りは真っ暗になる。


「……消すとは思わなかった」


 まさか、まさかのここにきてのアクシデント。先ほど以上に試されている気がする。しかし状況がわかっていない彼女はキョトンとあどけない顔をこちらに向ける。それとなく確認してみたが……。



 あぁ、ダメだ。やっぱり触れてはいけない。



 周囲は真っ暗になったというのにこの小さな少女だけはキラキラと輝いているように見える。本当になんて子なんだ。こちらの気も知らないで…。


「参ったな……」


 今日はとても長い夜になりそうだ…とカイルは暗がりの中、そっと溜息をつくのであった。



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