【番外編】優しい時間★
・元はテスト編集してた時に作ったものなのですが本編に時間掛かってしまってるのでちょっと合間繋ぎに投下(>_<)ノ
・短編続きですみません…。本編もう少々お待ちください。
カイルは歩く。スタスタ歩く。
その後ろをティアラが歩く。
ととととととととっ…
「カイルおにいさま、待って。はい、手」
「え?ああ、ごめん。早かった?」
「うん」
小さなおててを握ってあげると嬉しそうに微笑んだ。
とことことことこ…………
「カイルおにいさま」
「ん?」
「はやい……」
「え、そうかな?」
(ゆっくり歩いていたつもりだったんだけどな)
「これくらい?」
さっきよりもゆっくり歩く。
「ふふふ、まだー」
「ええ?そんなに早く歩いてないんだけどなぁ」
「カイルおにいさまはね、一歩がとても大きいの」
「あー、そっか。じゃあこれくらい?」
カイルにしてはとても鈍いくらいのスピードだった。けれど、ティアラにはまだ駄目だと言われてしまう。
「これくらい?」
のんびり、ノロノロ。
「ふふふ、それは遅すぎ」
「じゃあこれくらい」
スタスタスター
「もうもう、もう〜!はやい、はやすぎる〜!」
「ククッ、ごめん、ちょっと意地悪したくなっちゃった」
慌てた様子のティアラを余所にカイルはおかしそうに笑ってくる。プンプン怒っていると、グッと持ち上げられた。
「じゃあ、抱っこだ」
目線が少し高くなり、これはこれで快適だった。
けれど
カイル自身もまだ幼く、長く抱っこするはできなかった。
「はぁ…。もっと体力つけなきゃな。いつかもっと大きくなったら抱っこ…、いや肩車してあげるよ」
年上らしく、ちょっと強がったことを言ってみる。
「ふふふ、肩車はちょっと怖いかなぁ…。それよりも、ティアはお姫様抱っこがいい」
「ああ、そっちか。うん、じゃあ、約束」
「うん。ぜったい、ぜったい約束、ね?」
◆◆◆
最愛の人を抱き抱えながら、幼い日の約束をふと思い出す。
「カイル様、なんだか嬉しそうですね」
「ん?…うん。ちょっとね」
不思議そうにティアラがこちらを見ていたが、微笑むだけで、それ以上語ることはしなかった。
「ふふ…、ティアラは軽いなぁ」
これは自分だけが知っていればいい。…そう思った。だが……
むぎゅっ
「んんっ……?」
両頬を押さえて無理矢理彼女の方に顔を向けさせられる。
「私も…。私にも教えてください」
少し拗ねた顔をしながらそう言われてしまった。
「ふふふ、困ったな。少し情けない話だし……」
「でも嬉しそうな顔でしたよ?ティアも知りたいです」
さぁさぁ話してくださいと催促される。
ああ、もう。そんな顔をされたら、隠せないじゃないか。
「…実はね。昔うちの屋敷で遊んでた時のことなんだけど……」
あの時と同じようにゆっくりと歩きだす。
のんびり のんびり 幸せを嚙みしめる様に。




